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蜘蛛と酔猫  作者: 渡来亜輝彦
5:五日目
13/27

五日目:休息-乙女、夢の夕映えの手記


 シャシャもあのお方もいなくなって、もう五日も経つ。

 そう、この日記もだって五日目だもの。数え間違うはずはない。


 一緒に瑠璃蜘蛛ちゃんもいなくなってしまったと聞いているけれど、本当に大丈夫かしら。どこにいるのかしら。


 特に、――殿様は、どちらに行かれてしまったのだろう。


 護衛である殿様と世話係のシャシャがいなくなり、困った私を助けてくれたのは、蓮蝶ねえさん。瑠璃ちゃんは、自分で何でもできるから、侍女を連れていなかったようだけれど、蓮蝶ねえさんが、侍女を二人つれていたので、私に一人つけてくれた。私、シャシャがいないと、本当に何もできないのね。今回のことで、思い知った。


 殿様のことを心配しているのがばれているのか、蓮蝶ねえさんからはよくお叱りを受ける。

「あんな男、気にするものではないわ、夕映え。お前にはもっといい男がお似合いよ」

 蓮蝶ねえさんは、そんな風におっしゃる。それは、蓮蝶ねえさんが、多分、かつて殿様に召しだされたのに、相手にもしなかった強い女性だからでしょう。殿様はそのことについて、随分お怒りだったけれど……。蓮蝶ねえさんは、気位の高いお方だし、本当に綺麗な方だから、いつもああして堂々としていられるのでしょう。

 それにくらべて、私はなんて弱いのかしら。今回のことでは、私、色々反省してばかり。


 そして、私の護衛に代わりについてくれたのは、瑠璃ちゃんの護衛をつとめていたお方。とても優しい方で、私を慰めてくれる。ご自分も瑠璃ちゃんと一緒に旅ができなくて、残念に思っているでしょうに。

 けれど、どうも、瑠璃ちゃんは彼を護衛に選んだわけでなくて、彼のほうが頼みに頼んでどうにか入れてくれたのだとか。そうね、瑠璃ちゃんは、しっかりしていて、一時の恋情に流されたりしない子だもの。感情表現が苦手だということもあるけれども。

 自分は人に恋をしたことはないと、彼女は語っていたけれど、それは、多分、こういう身の上だから、相手を過剰に好きにならないようにしているのだと思うわ。それは、瑠璃ちゃんにも、不幸なことのような気がするのだけれど。

 ただ、私の護衛をつとめてくれているお方は、本当にとてもよい方なのだけれど、彼女を相手にするのは荷が重いのではないかしら。瑠璃ちゃんは、本当にしっかりした子だけれど、本当は、……こっそりと窓辺で蜘蛛を飼っていたりするような、ちょっと変わった女の子だから。


 殿様のお付きの方は、幾度か殿様を捜している様子ではあるけれど、基本的には私たち巡礼者と同じ行程で移動している様子。それは、殿様が、我々に追いつくのではないかとお考えであるから。

 あの方は、忙しく伝令を飛ばして、あちらこちらを部下に捜させているみたいだけれど、あのお顔からすると、はっきりとした情報は何もつかめていないのだろう。

 その方たちの暗い表情を見ると、私は、ますます心配が募るばかり。

 本当に、殿様はどちらにいらっしゃるのかしら。そして、本当に、ご無事でいらっしゃるのかしら。



 それだけは、星の女神様に占いでおうかがいを立てても、返事がない。


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