『はじまり』
Switch 2 落選しました
俺はニンテンドーを愛していたのに
ニンテンドーは俺を愛してくれませんでした。
そのとき、木々の奥から異音。
魔物の群れが襲来。
「どうもタイミングが良すぎますね」
「魔物の群れがか?」
「意図的にこの子を襲わせて、依頼書通りのシナリオを誰かが描いてる様にしか思えません」
「どんなシナリオだろうが向かってくる以上は殺るぞ」
「今の所それしかありませんね」
リアンが構えを取り、ヴァイスが杖を引き抜く。
「ちょうどいい、弓で援護しろ」
そう言って、ヴァイスが彼女の背を軽く叩いた。
フィリスは震えながらも、ゆっくりと弓を構えた。
「……私、怖い。でも……今、ここで逃げたら、もう二度と立ち上がれない……!」
「“必中の矢よ、導け”!!」
彼女の矢が放たれる。
霧を裂き、風を裂き、敵の指揮官らしき魔族の頭蓋に正確に命中し、即死。
「な……に?」
魔物たちが混乱し、リアンがすかさず戦術を組む。
「あなたお名前は?」
「フィリス…」
「フィリス、今から敵の左側を撹乱してください。あなたの矢は、戦場を動かせる!」
「……うん!」
ヴァイスが前線に突っ込み、雷を纏った斬撃で群れを切り裂く。
「このくらいじゃ物足りねぇなァッ!!」
三者三様の動きが、まるで噛み合う歯車のように敵を包囲していく。
「リアン!依頼は破棄だ!」
「?」
「こいつ、パーティーに入れるぞ!」
「そう言うことですか、了解しました!」
やがて魔物たちは殲滅され、静寂が戻った。
リアンはフィリスに駆け寄る。
「あなたさえ良ければ俺たちと一緒に来ませんか?碌なパーティーではありませんが…」
戦いが終わり、フィリスは息を切らしながら、初めて笑った。
「ありがとう……私、もう少し、信じてみる」
リアンは頷き、言った。
「あなたは、弓の天才です。うちのパーティーは全員前に出てしまうので後衛の弓使いなんて願ったり叶ったりですよ。」
ヴァイスはあくび混じりに言う。
「まぁ、悪くねぇ。臆病だけど当てる。俺らにはない芸だ」
フィリスは小さく「うん」と頷いた。
こうして、“最弱の勇者志望”は、異端の仲間たちとともに一歩を踏み出す。
彼女の矢が導く未来に、まだ誰も気づいていない。