『戦場の共鳴』
「……誰だてめぇ」
「騎士団所属、リアン・フェイン。後方指揮専門の落ちこぼれですよ」
「落ちこぼれ? テメェ頭おかしいのか?」
「お互い様でしょう?」
魔物の第二波が迫る中、リアンは冷静に地形を確認し、言う。
「この谷を利用すれば、魔物を誘導し一列にできます。君は直線に並んだ敵を焼き、俺が残ったのを片付けてください」
「……チッ。命令口調、気に食わねぇが――」
「勝てる方法を選んで結構です。あなたはバカだが、強いでしょう。俺は非力だが、正確です。どっちも一人じゃ足りませんよ」
少しの沈黙の後、ヴァイスは笑った。
「……面白ぇ。いいだろ、テメェの読みが外れたら、真っ先に灰にしてやる」
リアンの指示通り、谷に誘導された魔物たちが列をなした瞬間。
「今です、撃てッ!!」
ヴァイスが放った雷火が地面を焼き、地層が崩壊する。
魔物たちは次々に谷の隙間で灰の中に飲まれていく。
静寂。風。砂埃。
リアンは息を整えながら言った。
「部屋の埃を隅に寄せてからちりとりで拾うのと同じだ」
「……チッ。おもしれぇ。テメェ、嫌いだけど気に入った」
ヴァイスが近寄って肩を叩く。
それは、彼にとって最大限の“仲間認定”だった。
「名前は?」
「リアン・フェイン。君は?」
「ヴァイス。魔法使いで、嫌われ者だ」
「お似合いですね。俺も同じです」
灰の谷に立つ二人。
初対面にしてすでに、互いの異常性を理解し、共鳴していた。