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明日にはまた明日を生きる言い訳が見つかってしまうので

作者: 一色 良薬

 例えば、例えばですが。もしも明日。

 十年以上休載している長編小説の最新話が、更新されているかもしれないじゃないですか。

 その明日には。

 廃業宣言をしたアーティストが、長い時を経て再始動するかもしれないじゃないですか。

 その明日の明日には。

 熱望していた映画の続編を「クラウドファンディングで制作します」ってなるかもしれないじゃないですか。

 更に明日の明日の明日には。

 ずっと推していた俳優が主演を務める舞台の、最前ど真ん中の席が抽選で当たるかもしれないじゃないですか。

 明日の明日の明日の明日には。

 運営している小説サイトの作品を見た編集者から、才能のスカウトの連絡が来るかもしれないじゃないですか。

 五連続の明日には。

 名前の語呂の良さで適当に購入した馬券が当たって、一攫千金を得るかもしれないじゃないですか。

 憂鬱の六の明日には。

 歩いているだけで誰もが息を飲んで、声もかけられないってくらいの絶世の美女に「一目惚れしました。好きです」なんてドラマチックなラブストーリーが始まるかもしれないじゃないですか。

 一週間続いたもしもの明日には。

 そのもしもを「もしも」じゃなくて絶対実現してやるって、根拠ない自信が湧き上がって、馬鹿馬鹿しい目標を掲げて生きていくかもしれないじゃないですか。

 明日には明日の、そのまた明日にはこの世で生きる言い訳が見つかってしまうんです。

 0.01%の可能性が実現しても、また新しい「もしも」に向かって目標を掲げてしまうんです。

 だってこの世の重力から逆らった瞬間に、奇跡の瞬間を見逃してしまったらそれこそ後悔しかないですから。

 僕と「もしも」が繋ぐ生命線っていうんでしょうかねぇ。

 誰かがちっぽけだと笑ってもいいんですよ。全て僕がこの世で無様ながらも、生きていくための言い訳ですからね。逆に理解されてもねぇ? 困っちゃいますよ。

 さてまた明日を生きていく言い訳を考えなくちゃ。

 ほら。死にたがりの君は僕の影に戻っておいで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] それを「希望」と言うんだよ。 希望があるって素敵だと思います。 [一言] 素敵な作品をありがとうございました
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