第7話 初の対人戦、属性付与。
私はハルバードを手にし、問題のゴールデンクレセント畑へ赴いた。
やはりそこにいる。グレートソードを持った初心者狩りが。
私への依頼というわけではないが、あのギルドに常時貼られている依頼が実質あれの撃退依頼になってしまっている。それを解消しなくては、私の気分が悪くなる。そんな感じだった。
戦った後はまだ街には帰っていないが、武器を武器を生成することならできる。この武器でいけるだろうか。いや、この3.5メートルあるハルバードならいけるはずだ。
彼と目が合った。彼はこっちへ近づいてきた。武器を構えていないが、どうしたのだろうか。いや、構えた。私からちょっと離れた所で構えた。そこは私のハルバードが届かない距離だろう。空振りさせ、その隙を突いて斬る気だろうか。
いやそうでもなさそうだ。何かを剣に塗りたくっている。毒の類か?
彼の剣はその塗りたくられた何かによって黄色く光り輝いている。なんだあれは。元の世界の知識では何もわからないものが出てきた。この世界でも、少なくともこの町の店には置いていない。
とにかく、刺すか斬るかしないと始まらない。私は小さな動きで彼を突いた。交わされた。
彼がその長い得物を弾くと、私の体に電流が走った。あの武器には何か細工がしてあるのか?いや、ほんの数秒前に塗りたくっていた黄色く輝くあれがこの電流の原因か?
彼はそれ以上こちらに近づいてこない。私から行くしかないようだ。彼を狙って横向きに斬る動作に入る。彼は身構えているが、体の全体をカバーしているわけではない。
私はそのまま直線的に振り、彼が防御をするために剣を構えたその時、私のハルバードは下向きに動いた。力を抜く、たった、たったそれだけで防御を潜り抜けることが出来た。
彼の左足首が取れたが、その断面からは流血していなかった。そのまま彼は倒れた。
私は彼に近づいてみる。切断面は不自然なほど真っ黒に染まっていた。それはまるで光を全て吸収しているように、あるいはテクスチャーの設定がうまく行っていないように見えた。
彼に話しかける。
「あなたはなぜ、こんな所で『初心者狩り』などしていたのですか。まったく社会の利益にもなりゃしない。」
「人に頼まれたんだ。この世界にもあるんだ、犯罪組織的な奴がな。そしてその一員に頼まれたんだ、どこの組織かは知らんが。」
「あれ、いま『この世界にも』って…」
「ああ、気づいたか、俺も異世界転移者だ。」
私意外にも異世界転移者がいたとは。こういう状況なら主人公に似た状況に置かれた人が出るのは定番だ。でもまさか私の他にもいるとは。
そういえば、神との関係はこの人にはあるのだろうか。
「何か頼まれましたか?何かを増やして欲しいとか。」
「ああ、頼まれたさ。『アイテムを増やして欲しい』ってな。まったく、アーリーアクセスのゲームじゃねーんだからよ。」
この人もゲーマーか。
「質問続きで悪いですが、何かその仕事に当てられた理由に心当たりはありますか?」
「いろんな会社のいろんなゲームをやっていたってことぐらいかね。主にRPGをやっていた。お前は何か頼まれたのか?」
「『武器を増やせ』と頼まれました。思い当たる理由といえば、よく武器のことを調べていたことですかね。そのぐらいです。」
「両方、知識がありそうかどうかで選ばれたってわけか。ちなみに、さっき使った電気が走るやつは『黄金松脂』だ。塗った武器に電気属性がつく。魔法がなくても属性攻撃ができるといいだろうと思って使ったんだが、どうだろうか。」
「いいんじゃないですか。ただ、威力は調整しないと魔法を使えるようになる意味が薄れますよ。」
「まるでプランナーだな。バランスの調整も考えている。」
「私が持っているものはハルバード、日本では斧槍とも呼ばれています。剣しかないんじゃあこの世界には合わないと思いまして。」
「確かに、剣自体も三種類しかないのはちと寂しいが、どんぐらい増やす予定だ?」
「あとは…これを含めなければ5つほど。それ以降は武器は増やさない予定です。」
「最終的に十種類か。全部使うような奴は当分出てこなさそうな数だな。」
そんなことはないだろう。武器が十四種類あるゲームでさえ全部使う奴がいるのに。
「おっと、目的を忘れていました。そこのゴールデンクレセントを取っていかないと。」
「待て、まだ行かないでくれ。」
「なんですか。」
「あの俺に初心者狩りをさせた奴らの組織を壊してやりたいんだ、協力してくれないか。」
ちょっと迷うな、これを引き受ければしばらく武器屋に新しい武器を届けることは難しくなる。それに命の保証はない。
「引き受けましょうか。こんなことがまた起きたらうまく楽しむこともできませんし。」
「よっしゃ来た。俺の名前は工藤 久蘭だ。よろしくな。」
そう言った後に彼はとれてしまった足をどうにかして足にくっつけ、また得体の知れない何かを塗っている。それは乳白色をしたクリーム状のものだった。
「それはなんですか。」
「いや、ただの軟膏だよ軟膏。」
私は自らの顔を押さえた。




