第三話 塔と魔法と進行ルート
私は前回、依頼を受けていた見ず知らずのパーティに加入した。
そして今回からその依頼をこなしていく。
ギルドへ向かい、パーティの装備を見る。
私を含めて四人編成で、現在広まっている3種類をそれぞれ装備している。
ただし、私は戦鎚を装備している。これは現在この世界で唯一の「打撃」武器だ。
私達は問題の塔へ向かった。その道中で自己紹介があったのでその様子も知らせる。
「そういえば、君の名前はなんて言うんだい?僕はリーダーのサリアル。
このショートソードを持ってるほうがレイアミで、グレートはダライオス。よろしくね」
「私は人不といいます。よろしく頼みます」
「変わった名前だな、人不は何を使っているんだい?よければ教えて欲しいな」
一瞬話していいものか迷った。
「私は鎚を使っている」
「『ツイ』ってのはどんなものだ?」
「まぁ、こんなものですね。」
俺は武器を取り出してみせた。
「おお、刃がない武器ってのは初めて見た。それって攻撃通るのかよ」
「通る。切ることはできないが、叩き潰すことはできる」
「何やらやべーやつがきた見てーだな」
「ここにきて新武器か…もうここに来て1年経つが…これまでで一回も新武器追加無かったもんな」
マジかよ。あの三種類だけでよく満足してたな。
「少なすぎるとは思いませんでしたか?」
「「「思った」」」
息の揃った答えだった。
「じゃあ、増えたら嬉しいのか?」
「「「もちろん!」」」
やはり即答だ。
「その願い、俺なら叶えてやれるかもしれませんよ。というかそれをやるために呼ばれたんですけどね」
「呼ばれた?一体誰に?」
「なんか武器の物流を司る神だか言うお調子者が呼んだんです」
「そんなことする神だったかあの神って?」
「神話全部読んだけどそんな人間に助け求めるような神では無かったはず…」
「ま、実際そいつに呼ばれたんです。武器を増やすために」
「とにかく、塔に行って早く終わらせて帰ろう」
そしてまた移動中にこんな話があった。
「物流の神ってどんな人だった?」
「喋りが妙に間伸びした若そうな声してる神でしたよ」
「いやそういうんじゃなくて、見た目だよ見た目」
「黒い煙のような見た目でした。人間には姿を見せることができないのかもしれないが、もしそうだとしたら無理に見ないほうがいいでしょうね」
「どうして?」
「どうしてって、何が起こるかわからないでしょう?怒り狂って襲ってくるかもしれないし、ショック受けてサポート受けられなくなるかもしれないですし。そういうのは神話では定番のストーリーですよ」
「あぁ…神ありきなんだな…その仕事…」
さらに移動を続けると、塔があった。
その塔は草原に一つぽつんと置いてある形だ。
扉はないように見える。
「扉が見えないですけど…どの様に入るのでしょうか」
「魔術師の塔なんだ、あそこは。たまに上から飛んでいく時がある。
上から行くのが正攻法だな」
「しかし、あんなところ届くわけないだろう」
「風呪文だ。セレイライ!」
俺には正確に聞き取れなかったが、概ねこんな発音だった。
他の三人の足元から上昇気流が発生し、塔の上まで飛んだ。
無事着陸したところで俺を呼んでいた。
「おーい人不もこっちこいよ〜」
「私も上に行きますか。セレイライ!」
不思議とすぐに覚えることができた。
他の三人と同じように飛び、無事着陸。
「上昇気流に乗るってのは清々しいもんですね」
「魔法を知らなかった様だが、まさか下から行こうとしてたのか!?」
「え?あ、あぁ、そうですけど、何か問題があるんですか?」
「壁は壊せないんだ。塔には魔法防御がかけられていて、これまでにたくさんの魔術師が塔の壁の破壊を試したけどダメだったんだ。
相当強い魔法防御だ。伝説級の魔術師でも破壊できない」
「ふーん。そういうものなんですか」
「そういうものだ」
完全にこの世界の初心者であることを察せられた目をされた。
「塔は上から下に行ってェ、最下層にボスがいるよォ」
「うわびっくりした。会話中に来ないでくださいよ」
「もしかしてこれか?物流の神って」
「見えるんですか?」
「いやまあ、普通に見えるが…黒いもやもやしたもので包まれていてよく見えんな」
「他の人には見えないもんだとばっかり思っていました」
「まァ、塔の構造教えに来ただけだからァ、また後でねェ」
「いきなり来ていきなり帰っていった…」
「アレのことは俺もよく分からん。探索早く進めようぜ」
屋上から降る階段が普通に設置されていたので全員で降りた。
「待て」
「どうしましたか」
「気配が多い」
「一匹づつ釣って倒すか?」
「いいやそんなちまちましたことはしなくても、こうすればいいと思うんですが」
私は敵の群れに突っ込んだ。
相手は人型のモンスター十体ほどか。人型なら戦鎚が有利に働きそうだ。
「私のハンマーの試させてください」
剣で回転切りをするように振り回すと、十体のうち三体に当たった。
一体目は鳩尾に当たったようだ。二、三体目のモンスターは衝撃が吸収されたらしく、まだピンピンしている。一体目を担ぎ、すぐに屋上に戻った。
モンスターは追ってこない。フロア間はモンスターの移動ができないようだ。
「おい、もう一体仕留めたのか?早すぎるのでは?」
「なんですかこの状態異常は。『ハートブレイク』…」
「心臓破壊しちゃった感じ?」
「いや、これ確か一定時間気絶の効果だったな。」
球技をしているときにボールが鳩尾に当たると一時的に心臓が微細動を繰り返すという。そのときに気を失ったりするらしいが、これも同じことなのだろうか。
「結構強いんじゃないか、その武器。今度俺たちにも試させてくれよ」
「ああ、いいですよ。そのうち工房にも頼んで生産してもらおうと思っていました。この戦場はテストも兼ねています」
「テストのためにわざわざクエストに来たのか」
「そうですよ」
「やっぱりやばいやつだよ君は…」
「まだまだ中にいますね。あと九体でしたか」
「多いな、全員で突撃した方が早いか」
「その方がいいと思うわい」
「じゃあ、突撃か」
幸い階段は広かった。四人で横に並び、
「三、二、一、突撃ー!」
その合図で乱戦が始まる。




