まだ見ぬ大都市
「ふあ〜あ、眠いな……」
ガシャガシャと何かを弄るような音を聞きながら、星流は身を起こした。
周りのカプセルを見ると、そこには寝ていたはずの二人がいなくなっていた。
「あれ? 二人はどこか行ったのか? なんか変な音するし……」
そしてその音の源の方を見ると、知らない男が座り込んで、かごの中を漁っていた。
(え? ちょ、あれ誰だ!? 知らない人いるんだが……ど、どうすればいいんだ)
それを見て戸惑う星流。
(と、とりあえず大丈夫ではありそうだけど、一旦部屋から静かに出て、みんなと合流しよう)
カプセルから降りて、そろりそろりと扉の方へ向かっていく星流。
「あ、起きた?」
そうすると、カシャンと扉が開き、その奥からレリアが姿を現した。
「あ、はい。おはようございます……っていやそれより、あの人誰なんですか!?」
挨拶したのち、男を指さして聞く星流。
「ああ、あいつは……正直よく分かってない。けど悪いやつじゃない……らしい」
「分かってないんすか? まあともかく、良かったです。いきなり知らない人がいたもんで……」
安心した様子の星流。
レリアは男の方へ向かっていった。
「おっ、起きたのかお前」
「あ、はい……」
その男はよく見ると背はそこまで高くなく、星流と同じか少し高い程度だった。
レリアなら最初見たときに『大きい機械には乗るのに背は小さいんだね』などと言っていたことだろう。
「すまんな勝手に入って。そこの白髪とちょっと揉めてな……ちょっとそいつ短気すぎね?」
最後は少し声を潜めて男はそう言った。
「え? えっと……そうですかね?」
星流は戸惑い気味にそう返した。
「……何か言った?」
レリアはその言葉に鋭く反応した。
「あん? なんか悪いか?」
明らかに険悪な雰囲気の二人。
「ちょちょっと待ってくださいよ! 一旦落ち着きましょ? ね?」
星流は二人の間に入ってそう言った。
「しょうがないな……」
「命拾いしたな……」
両者とも一度引いたようだ。
「あ、あはは……」
(めっちゃ仲悪いじゃん……)
「で、どう? そろそろ終わった?」
レリアは男にそう問いかけた。
「終わったぜ。つっても写真撮るだけだったけどな。他のことはちっと複雑すぎてよく分からん……」
「『終わった』ってなんのことすか?」
「ああ、お前には言ってなかったな。俺はとあることでここに調査に来ててな。それが終わったってことだ」
「なるほど……って調査? どこかに所属してたりするってことすか?」
「そう! 俺が興生管理委員会の一人、藤原健人だ!」
男――藤原健人は急に両腕を自分の腰に当て、そう叫んだ。
「お、おお……なるほど」
星流は健人のテンションについていけないといった様子だ。
「っていうか藤原健人さんって言うんですか?」
「そうだが……なんか変か?」
「いや、そうじゃないんですけど……」
言葉に詰まる星流。
「な、なんなんだ?」
「あそうだ、興生って言いましたけど、そこってどんなとこなんです?」
星流はその後、急に話題を転換した。
「ああ、それはだな、人口数万人の有数の大規模都市でな。そこらへんの集落とは比べ物にならない安全性と、文化的な生活の保証された素晴らしい場所だ!」
「な、なるほど……というか都市って、こんな世界にそんなものが……?」
(都市があるなら昔みたいな生活もできるってことなのか?)
「なんだお前、知らんで生き延びてきたのか。意外と凄いのか?」
「いやまあ、色々ありまして……」
「まあいい。ともかく、そこの白髪と向こうの球体には話したが、お前らもうちに来ないかってことを話しててな」
「え? いいんですか?」
「もちろんだ。最近はちっと食料が厳しい部分もあるらしいが、まあなんとかやっていけてるしな」
「じゃあ全然行ってもいいかもっすね……」
「お、じゃあ全員来れるじゃねぇか」
「私は考えるとしか言ってないけど?」
「まあまあ、どうせなら来てくれたっていいだろ?」
「はぁ……まあリレイも星流も行くなら行っても……いいかな」
一瞬下を向き、考えるような動作をしてからレリアはそう言った。
「よっしゃ! 決まりだな!」
健人は指をパチンと鳴らし、そう言った。
「え? ちょっと準備が……」
「早すぎじゃない?」
「あん? そんな準備するもんもないだろ? お前ら」
「いや、そんなこと……」
星流は自分の周りをキョロキョロと見渡した。
「あったかもしれん……」
星流はその後そう呟いた。
「……まあ私も大丈夫かな」
「じゃ、あの球体も連れてさっさと行っちまうぞ」
「リレイね」
「ああ、リレイな。おーいリレイ! お前も準備できたら出発するぞー!」
健人は扉に向かってそう叫んだ。
『すいません! 少々お待ちを!』
その声が聞こえた後、少しするとリレイが戻ってきた。
『それで、出発とは?』
「興生に行くんだよ。準備はいいか?」
『おや、早いですね。まあ我々は大した荷物を持っていませんから、私はもう行けますよ』
「めっちゃ一瞬で納得するじゃん……流石というべきか……」
星流はそう呟いた。
「移動は……俺が乗ってきたスパイレラがあるから、それで行くか。あれなら飛べるからな」
「スパイレラ?」
「俺の乗ってきた人型ゲリラ兵器の名前だ」
「おお! なんか凄そうっすね!」
「凄いぞ、自慢の機体だからな。スパイレラは外だ、ついてこい」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。
実はこのあとがきに変化があります。
今まで定型文の最後に「。」をつけ忘れていたのが、今回からつくようになりました。やったぁ!