怪しい痕跡
カシャンと扉が開き、二人と一つの影が見える。
『この部屋は確か兵器の実験場所でしたか』
そこは横に長い部屋で、様々な機械が置かれていた。また、奥には大きな何も置かれていない空間があった。扉でこちらの部屋から出入りできるようだ。
奥の空間は真っ黒で、こちらの部屋の機械はほとんどの電源が消えているが、一部は起動しているようだった。
「最初はすぐに出ていったから分からなかったけど、随分物騒な場所もあるんだな……」
『まあ兵器保管所ですから』
「えっそれも初耳なんだが」
『しかし、この部屋は特に煤が酷いですね』
他の部屋は白色だ、しかし一部の部屋が煤で汚れていたり、何か大きなことが起きた痕跡があった。
「相変わらず謎だね。単なる火でできたわけじゃないみたいだし」
「やっぱり、廊下の暗さと合わせて本当に不気味だな……」
『私は機械を調べますね』
リレイは起動している機械の方に行った。
「じゃあ私は何もないと思うけど、向こうの大部屋調べてくるね」
レリアは奥の大部屋の方へ。
「じゃあ俺は……何もできないからリレイのそばにでもいるか……」
少し肩を落とす星流。
『まあまあ、できることもありますよ。例えば私のコードをこの機械にさすとか』
「逆に言うとそれくらいしかできないのだ……」
リレイの体のディスプレイの裏、背中の部分から、何やらコードを伸ばす星流。それを機械にさした。
「そういえば元人型の生物兵器……まあ一応人間みたいなもんだったんだろ? よく順応するよな」
コードを眺めながら聞く星流
「俺だったらちょっと気持ち悪くて躊躇すると思うぞ」
『手足がないこと以外は意外と便利ですし、結構いけますよ』
「いや手足がないのは普通に問題だろ」
『おっ、情報が取れました。えーっと……これ、言ってもいいですか?』
ディスプレイになんとも言えない表情を表示させるリレイ。
「逆に気になるな、それ。何があったんだ?」
『『明日のお昼はカレーうどん。うどんを買ってくるべし』だそうです……』
「ただのメモじゃねーかっ!」
『まあ何十年も前のメモですから、収穫と言え……ないですね』
「だろうなぁ……」
ため息をつくリレイと星流。
『ともかく、他のところでも似たような感じでしたし、そろそろ切り上げますか……』
どうやら成果は芳しくないようだ。
「そうだな……レリアさんの方に行くか」
『そういえば星流さんって私にはさん付けしないですよね』
「なんかリレイはさん付けする気が……」
『なんと! 私はいついかなる時も敬語だと言うのに!』
「そんな性格だからさん付けしないんだぞ?――」
◇
『レリアさーん』
部屋の端の方で何やら壁を見つめてるレリア。
「二人とも、これ」
傷つき、不自然に穴が開いた施設の壁を見せるレリア。
『確かに……おかしいですね』
「何がおかしいんだ? 煤だらけだし多少の傷なんて珍しくないだろ?」
『いえ、そうでもありません。こんな大穴は他になかったでしょう?』
「この施設の壁はかなり堅い……これができるってことは、容疑者候補は少し絞られる」
『確かにこれは普通では難しいですね。ただ私は候補はそこまで思いつきませんね……』
「へー、二人ともよくこの施設のこと知ってるな」
「昔ここにいたからね」
『あれ? なんでそう思ったんでしょう』
リレイはディスプレイに『?』を浮かべた。
「え? ……もしかして消えた記憶の部分か?」
『うーん、恐らくそうでしょう』
リレイはそう言って頷いた。
『まあともかく、一旦切り上げようと思います。他に探していたらキリがないですからね』
「……そうだね」
『でもこれは良い収穫ですね!』
◇
廊下を歩きながら、三人は話していた。
「成果は『相手は何かの実験で来た謎の集団とおぼしき存在』ってくらいか……これは収穫と言えるのか?」
『微妙ですね。ともかく、眠くなってきましたね。今日のところは寝ようと思いますが、どうですか?』
「俺もちょっと眠いな……さっきも真っ暗だったしもう夜か」
「私もそれでいい」
「……ってリレイはその体で眠くなるのか?」
『一応なるようです。自分のことながら不思議ですね』
「寝る場所は……あのカプセルのところで寝る?」
『おお、いいですね』
「……あの蓋急に閉じたりしないよな?」
『流石に大丈夫でしょう……多分』
「おい」
少し短めになります。
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。