一人……と一つの仲間
とある薄暗い廃墟。その一室で、三人の姿が見える。
レリアは何らかの小さな機械から、電子レンジと水の入ったペットボトルを出している。
随分便利な機械があるようだ。
先程取ってきたカップ麺をレンジにかけながら、会話をしている。
「なるほどね。それじゃあ、あなたは起きたらいきなり元の世界とは違う世界っぽい謎の施設にいて、しかも記憶喪失でしたさんってことね」
青髪の男を指さしながらレリアは言う。
「それでそっちのは元人形の戦闘兵器で、起きたら体が球体になってて、元の体が壊れてるからそれに戻ろうとしてる。さらにデータが破損してて一部記憶がないからなぜそうなったか覚えてない」
今度は浮遊する球体の方を指さしながらレリアは続けた。
その球体は元気にもディスプレイに『YES!』と表示している。
その後、ディスプレイには黒い二つの楕円を目のように表示させていた。瞬きをしていたりするようだ。
「つまり経歴おもしろ記憶喪失コンビってことね」
少し笑いながら冗談っぽく言った。
「いやまあそうなんだけど、なんだか不名誉なコンビだなぁ……」
困ったように頭を掻きながら返す青髪の男。
「あ、俺の名前は清原 星流っていいます。それでこっちのは――」
名前を言っていなかったらしく、自己紹介をする青髪の男――星流。
『リレイと申します。お見知りおきを』
レリアが一瞬、その言葉に反応したように肩をピクリと動かした。
このディスプレイ付きの球体はリレイと言うようだ。
球体の上部の二つの三角形からは少しノイズがかった声が響いている。
「……と、いうことだそうです」
「私はレリア。とりあえずよろしく」
そうやって握手を求めるレリア。
「あ、よろしくです」
それに応じる星流。
「そういえばあのなんかよく分からない犬みたいなのってなんなんですか?」
「犬……ああ、機械獣のことね。まあ暴走した生物兵器ってとこ。強いのから弱いのまで色々いるよ」
「機械獣……生物兵器……結構物騒なんですね」
「まあ、そうだね」
小さく息を吐くレリア。
「それで、あなたたちは目的とかあるの? ……私は正直ないんだけどね」
「俺も今はないっすかねぇ……元の世界の友人関係とか、全部覚えてないので戻る気も起きませんし。とにかく生きることくらいっすかね」
そういいながら軽く笑う。
『いやいや! 目的あるじゃないですか!』
星流の前にぐいとディスプレイを見せつけるように出る。
星流はそれに驚いたように少しのけぞる。
「急に来るなびっくりするわ。というか目的って……あ、リレイの体の復活か」
先程レリアの言っていた『元の体が壊れてるからそれに戻ろうとしている』というものだろう。
『そうですよ。それで手伝ってもらってるじゃないですか』
「じゃあとりあえずそれが目的ってことね」
二人に対して聞くレリア。
「まあそんな感じっすかね」
『それでよし!』
「……それじゃあ、それ私も手伝ってあげようか?」
◇
先程と同様の部屋、一人レリアが座っていた。
リレイの体を戻す、その手伝いをする、ということでその体がある施設に向かう準備をしているようだ。
「リレイ……まさかお兄ちゃん? でも球体の体だし……」
荷物をまとめ、ライフルを担いで立ち上がる。
「確かめよう」
「ここがよくないかも」「ここは面白いかも」などのご感想等があれば頂けると幸いです