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工房 - アトリエ -

「わぁ、綺麗です」


 色彩豊かな試験管。

 ひとつひとつに違う色があって宝石のようだった。手にとって眺めていたい、そう感じた。


 更に凄いのは、ハーブがあっちこっちにあった。緑色や赤色、青色のハーブの鉢がたくさん。良い香りもした。


 ここがロス様の工房(アトリエ)


 わたしもお店を持っていたときにあったけど、ここまで使いやすそうな環境ではなかった。錬金術師用の道具が綺麗に並べられているし、最高峰の工房という感じ。



「ここを使ってくれていいよ」

「い、いいのですか?」

「ああ、構わない……と、言いたいところだけど、まずはキミのポーション製造の力を見せてもらおうかな」



 わ、わたしの実力を見たいというわけなのね。……と、言っても結果は分かっているけど、とにかくポーションを作ってみるしかないかな。


 渋々ながら設備を借りてポーションを作っていく。


 まずは、ハーブ。

 基本的な緑ハーブを使う。


 これを“すり鉢”ですり潰していく。


 あとはここへポーション全書の通りにレシピを加えていく。



「これを、こうして……」

「ふむふむ、フラビア。見る限り、手際もいいし問題はなさそうだね」

「本当ですか!」

「ああ、今のところはね」



 今回こそ上手くいくかも。

 もしかして……美味しいポーションが作れるかも! ひとつひとつ丁寧に調合し、いよいよポーションを完成させる。


 緑の液体を試験管に流し込み、完成。



「はい、出来ました! ロス様、いかがでしょうか」

「おぉ……これは驚いた。見事な色だ。ニオイは……む!?」


「どうかなさいました?」


「いや、ニオイも完璧だ。この飲みやすそうな香り……素晴らしい」

「本当に? わぁ、そんな風に褒められたの初めてですっ。わたし、今までお店をやってきてクレームしかなかったので」


 おかげでお店にお客さんなんて、数えるほどしかいなかったけど。でも、ロス様のおかげで、わたしは変われそう。自信が持てそう。


 あとは味だけど……。


「あの、飲みますか……?」

「そうだな、ニオイまでは完璧だったし、いよいよ試飲してみよう」


 ロス様は、試験管を手に取り口元へ。わたしの作ったポーションがついにロス様の喉を通るのね。……お願い、美味しいポーションになっていて。


 目を瞑り、願う。


 今のわたしには、それしかできない。



「……い、いかがですか?」


「…………」



 一口含み、味わうロス様。

 固い表情で、美味しいの不味いのか……どっちなのか分からない。でも、明らかに微妙な雰囲気。やっぱりダメだったんだ。


 落胆していると、ロス様は笑った。



「えっ……」

「フラビア、君は素晴らしい」


「え」


「君のポーションは、美味しいよ!! こんなに美味しくて体力がみなぎるほど回復力を持つポーションは初めてだ!!」



「え、え……ええッ!?」



 両手を握られ、ブンブン振ってくるロス様。わたしは、信じられなかった。美味しい!? 回復力!? 本当に!?



「フラビア、飲んでごらん」

「は、はい……」



 自身の作ったポーションを慎重に飲む。


 すると……。



 びっくりするほど苦味もなく、涙が出る程美味しくて、普段の疲れとかストレスが吹き飛ぶようだった。



 うわ、なにこれ!!


 すっごく美味しい!!



 自分で作っておいて、本当に涙が出た。



「良かったね、フラビア」

「…………わたし、どうして!?」



 信じられなかった。

 人生で初めて凄いポーションを作れたことに感動さえしていた。わたしに、こんな能力があったんだ。

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