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舐められる男と銀髪令嬢  作者: 宮本シグレ
9/13

【銀髪令嬢の冥土】


銀髪令嬢の冥土


******


彼女は人間ではないだろう。

人間の認知によって生み出される世界で生きる者達は、

自我のために、常に争うのが運命。

強いものが存在を続け、弱いものが消滅していく。

その在り方によって、彼女は一つの、大きな間違いを犯したのだろうか。


******


心臓と過去を失い、ただ銀の刀を振るい崩界を彷徨う女、ジーク。

ノヴァと心臓の契約をし、存在の維持することが出来た彼女は、

変わらずに異形を狩り、その血を浴び、肉を食っていく。

骨は投げ捨て、もう一度燃やした。

彼女の瞳は、梟か蛇、あるいは肉食獣のように見開いたまま、

地べたで灰色に融解していく残骸を見つめていた。

その炎が、彼女の瞳孔の艶をおびさせる。


******


青と白のドレスを纏い、濃い赤茶の異世界を歩む令嬢、ジーク。

『お前、何かを失ってるんだな?』

彼女の内面を見破ることが出来た者も、すぐに、燃やされる。

白銀の刃を突き刺し、一回、二度、三発。

青い青い爆炎が、異形の内側を破砕。

ジークには、ノヴァの心臓があるように、

地の底から這い出る化け物にも骨や臓器、血管と同等のものが備わっている。

ジークの青白い炎と一閃、爆発は必殺の領域。

実際の痛みがどうなのか、生身の人間は知ることはないまま消えていく。

人間に宿り、育ち、操る者達がようやく知覚できる衝撃。

『あぎゃああああああああああああああああああッ……があッ!?』

存在が塵になるまで、残り続ければ、痛みは走り続けるのだ。

爆発、爆発、爆発。

突き刺さる刀身から放たれる破裂音、異形の肉体の内側から拡散。

『ははは、もしかしたら、あんたが……《ふ-------》』

「……」

彼女は何も言わない。

激しい炎のみが、全てを示してくれる。


『ジーク嬢』

「なんです」

白銀の刀、ノヴァは聞いた。

『私は【銃】派なんですが』

「それはノヴァの美学ですか?」

確かに、ノヴァにとって、剣で振り回されるのを体感するのが長く続いている。

「お嬢様のドレス、滅茶苦茶です。体液やらほこりやら、ゴミやらで」

それでも、主に気を遣うことで誘導した。

「萎えることを……」

ジークの、剣を握る手の力が緩めば、ノヴァは人間態へと変身出来る。

「ノヴァ、貴方も刃で啜った血でドレスが汚れているんじゃないんですか?」

清潔なメイドのゴシックドレスを着たノヴァ。

先ほどまでの戦いを思わせるような跡は、一見どこにもない。

「あははは」

ノヴァが、べーっと出した舌に、どす黒い粘膜の色。

様々な異形を葬り、混ざり合い染まった色か、それとも、ノヴァそのものの、色か。

ジークは数秒無言になり、そして言った。

「次の獲物を探しましょう」

次もまた剣か炎か、それとも…………。

どちらにせよ、崩界に長い平和はなく。

彼女たちは、人間から生まれる異形にとっては、【死神】のようなものだった。



アクションゲームっぽいことをしたいですね。

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