【銀髪令嬢の冥土】
銀髪令嬢の冥土
******
彼女は人間ではないだろう。
人間の認知によって生み出される世界で生きる者達は、
自我のために、常に争うのが運命。
強いものが存在を続け、弱いものが消滅していく。
その在り方によって、彼女は一つの、大きな間違いを犯したのだろうか。
******
心臓と過去を失い、ただ銀の刀を振るい崩界を彷徨う女、ジーク。
ノヴァと心臓の契約をし、存在の維持することが出来た彼女は、
変わらずに異形を狩り、その血を浴び、肉を食っていく。
骨は投げ捨て、もう一度燃やした。
彼女の瞳は、梟か蛇、あるいは肉食獣のように見開いたまま、
地べたで灰色に融解していく残骸を見つめていた。
その炎が、彼女の瞳孔の艶をおびさせる。
******
青と白のドレスを纏い、濃い赤茶の異世界を歩む令嬢、ジーク。
『お前、何かを失ってるんだな?』
彼女の内面を見破ることが出来た者も、すぐに、燃やされる。
白銀の刃を突き刺し、一回、二度、三発。
青い青い爆炎が、異形の内側を破砕。
ジークには、ノヴァの心臓があるように、
地の底から這い出る化け物にも骨や臓器、血管と同等のものが備わっている。
ジークの青白い炎と一閃、爆発は必殺の領域。
実際の痛みがどうなのか、生身の人間は知ることはないまま消えていく。
人間に宿り、育ち、操る者達がようやく知覚できる衝撃。
『あぎゃああああああああああああああああああッ……があッ!?』
存在が塵になるまで、残り続ければ、痛みは走り続けるのだ。
爆発、爆発、爆発。
突き刺さる刀身から放たれる破裂音、異形の肉体の内側から拡散。
『ははは、もしかしたら、あんたが……《ふ-------》』
「……」
彼女は何も言わない。
激しい炎のみが、全てを示してくれる。
『ジーク嬢』
「なんです」
白銀の刀、ノヴァは聞いた。
『私は【銃】派なんですが』
「それはノヴァの美学ですか?」
確かに、ノヴァにとって、剣で振り回されるのを体感するのが長く続いている。
「お嬢様のドレス、滅茶苦茶です。体液やらほこりやら、ゴミやらで」
それでも、主に気を遣うことで誘導した。
「萎えることを……」
ジークの、剣を握る手の力が緩めば、ノヴァは人間態へと変身出来る。
「ノヴァ、貴方も刃で啜った血でドレスが汚れているんじゃないんですか?」
清潔なメイドのゴシックドレスを着たノヴァ。
先ほどまでの戦いを思わせるような跡は、一見どこにもない。
「あははは」
ノヴァが、べーっと出した舌に、どす黒い粘膜の色。
様々な異形を葬り、混ざり合い染まった色か、それとも、ノヴァそのものの、色か。
ジークは数秒無言になり、そして言った。
「次の獲物を探しましょう」
次もまた剣か炎か、それとも…………。
どちらにせよ、崩界に長い平和はなく。
彼女たちは、人間から生まれる異形にとっては、【死神】のようなものだった。
アクションゲームっぽいことをしたいですね。