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54.運も実力



「っていきなりじゃねぇか!」


 そう叫ぶのはアスクで、それは張り出されたトーナメント表を見ての驚きだった。

 当日に発表されるこのトーナメントだが、アスクの驚きはその1回戦の自分の対戦相手についてだ。

 もう驚きだけで分かろうと言うものだが、そう、初戦からケイスが相手である。


「良かったじゃないですか。これなら当たらないことはありません!」

「それはそうかもしれないが、心の準備がだな……」

「準備するべきは心ではなく体ですよ」

「それはそうかもしれないがよぉ!」


 想像より早い激突となって戸惑う気持ちは分かるが、強敵とぶつかった後に疲労して対決……みたいなことになると何処かスッキリしないので、私としては大変良かったと思っている。

 最もそれも含めて戦いなので、トーナメントで離れていたとしても、それはそれで仕方のないことなのだが。


「っていきなりじゃん! マジぃ!?」

「あっ、ケイス!」

「同じようなリアクションされるとなんか恥ずかしいな……」


 トーナメント表を見に来たケイスもやはりと言うか戸惑っていた。

 ちょこちょこ似ているところがあるんだよな、この2人は。


「おっ、アスク! どんな修行してたか知らないが、普通に偉いじゃねぇか!」

「いや、普通に褒めるなよ!」

「ええ、アスクは偉いです」

「褒めを足すな!」

「けど俺も1か月前とは違うから、負ける気はしねぇかな」


 それは若者にありがちな無意味で背景の無い自信とは違い、努力と根拠を持った強い自信を持つ発言だった。

 やはりケイスは強い……が、成長率なら圧倒的にアスクの方が上のはず。

 何せ基礎から鍛え上げたのだから。


「はっ、精々人前でゲロ吐いて恥かかないようにしろよ」

「そっちこそえーと、なんだ、ば、バーカ!」

「罵倒の語彙が小学生なのかよ!」

「汚い言葉使ってたらマジで師匠にぶっ飛ばされるし……」

「くそっ、師匠の有無は礼儀にまで影響すんのか。なんか負けた気分なんだが!?」

「はいはい、決闘で勝ちましょうね」


 何故か心理的に敗北してしまったアスクの背を押しつつ、私たちはその場を離れる。

 一年生の部は一番時間が早いので、余裕をもって円形競技場まで行かなくてはならないからだ。


「それではケイス、良い戦いを見せてくださいね」

「任せとけって! ……いや、つーか、俺の師匠は爺さんなのに、アスクの師匠は可愛い同級生って、マジずる過ぎな?」

「爺さんの方が俺は羨ましいわ」

「私も爺さんの方がいいと思いますよ」

「えー!?」


 謎に爺さん多数派の空間だった。





 さて、こうして始まった魔闘会。

 校長による光魔法を駆使したいつもの開会宣言に惚れ惚れしつつ、1年生同士の第1試合が始まり、私はアリスと一緒に観客席でそれを眺めていた。


「やはりというか、レベルは低いわね」

「いえいえ、みんな頑張っている方ですよ」


 まだ1年生なので当然なのだが、まだ拙い動きが目立つ両者の戦いはいろんな意味でハラハラさせられた。

 しかし、それでも実際、頑張っている方だと私は思う。

 そもそも魔闘大会の出場には教師から合格が必要なので、誰でも参加できるわけではなく、彼らは1年生の中でも優秀な部類の生徒に当たるのだ。

 実際、1か月という短期スパンの中でよく練習している。


「というか、ケットルも出場してるのよね。どこで出てくるのかしら」

「ケットルは確か2回戦からです」

「えっ、優秀枠?」

「いえ、運で」

「なんかそういうところあるわよね、ケットルって」


 人数が必ずしも偶数になるわけでもないので、運の良い者は2回戦からになるのだが、ケットルは見事にその枠を勝ち取っていた。

 我らが寮長様は運が良くていらっしゃる。


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