52.ちょっとどころじゃない可能性も
ケイスは大体私と同じ流派なので、やることも大似通っているはずである。
そんなわけで、超手加減した私に一撃くらい入れなくては話にならない。
基本的にどんな魔法でもこうして弾くことができるので、大事なのは魔法そのものより魔法を当てる技術の方が重要になるわけだ。
「くそ、絶対当ててやる!」
「どんどん来い。むしろ一切休まないで魔法を出し続けろ」
「謎の騎士さん厳しいわね……」
こうして私は、謎の騎士さんという謎の立場を得て謎の特訓を謎に続けることになってしまった。
アスクも頑張って魔法を放ち続けるがその軌道はまだ闇雲であり、これでは当たってあげることは出来ない。
無情に、ひたすらに弾き返し続ける。
「まだまだぁ!」
攻撃訓練と回避訓練が同時に出来る上に、アスクとしてもランニングよりは気合が入るし楽しいようで、その目はキラキラしていた。
若いっていいなぁ。
『ゼノビアも一応若いからね?』
微妙にフォローになってないフォローが飛んでくる。
一応は不要だからな!
★
こうして修行第二段階もサクサクと進んでいき、気付けば一週間。
アスクの魔法の弾道も前までのとりあえず三連弾というものではなくなり、それぞれがきちんとこちらに向かって、しかもタイミングをずらす様に飛んできている。
やはりセンスがいい。アスクは避けにくい動きというのを理解し始めていた。
アスクの成長は万全!
よって問題があるとすればそれは──私の方である。
そう、この修行最大の問題。それは私の時間も割かれるので光魔法練習の時間が取れないことである!!!!
『問題ってそっちの問題なの!?』
呆れたようなレイヴだが、実際、私の学生生活においては重要なのである。
なにせ成長したアスクと違い、私の光魔法は未だに一週間前から変わらず灰色のままなのだ。
灰色に白が少し足された……なんてこともなく黒寄りの灰から全く変わっていない!
このままではモテる前に学園を留年……悪くすれば退学……。
しかし偽私も気になるし、アスクには強くなって欲しい。
……悩み苦しむ私だったが、ここで1つのひらめきを得る。
魔法の練習しながらアスクの相手もすればいいのだ!
「それで、なんで今日の騎士先生の周囲には闇が浮かんでいるんですか……?」
翌日、さっそく実践する私の周囲に飛び交う闇を見てアスクは怪訝な顔をしていた。
うん、まあ、気持ちは分かるのだけど、後生だから見逃してくれ!
「気にしないでいい。ただの飾りだ」
「何故飾りを?」
「綺麗だろう」
「は、はぁ……」
困惑するアスクをよそに私は周囲に闇を放ちながら決闘の相手も同時に進行するのだった。
やはり集中力を欠くとすぐに黒に染まってしまうが、紙浮かしランニングと一緒で、決闘と光魔法の同時進行は意外といい負荷になるかもしれないな。
「騎士先生! その闇に何やらダメージ判定があるんですが!」
「これも修行だ」
「謎に理不尽……!」
アスクの方へと時々飛んでいく闇にしっかりダメージがあるせいでまさかの難易度上昇がなされていた。
いや、これは回避の練習が単調にならずに済んで意外と良いのでは……?
よし、これなら互いの為になっているな!
『アスクが不憫だ……』
ええい! 不憫で大変なのが修行というものだ!
アスクは弾かれた魔法を躱しつつ周囲に散らばる闇も避ける羽目になってしまったが、これも全てはモテ……いやアスクの為!
さあ! 私を倒してみせよ!!!!!!!
『もう魔王じゃん』
我ながらちょっと魔王かもしれなかった。
 




