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51.謎の騎士


「セピア、助っ人を連れてくるって言って出ていったけれど、遅いわね」

「そもそも入学して間もないあいつにそんな人脈があるのか?」

「彼女がいるっていったらいるのよ。それに可愛いし」

「可愛さ関係ないだろ……」


 なんてアスクとアリスの会話を私はグラウンドの陰から見守っていた。

 もうそれなりにお待たせしているし、はやく出ていかなければならないのだが、ううっ、勇気が出ない。


『時間がないって言っていたのはゼノビアでしょ! はやくはやく!』


 うちの剣は私に無茶なことを提案しておいてこの言いざまだから、面の皮が厚すぎる。

 くそ、夜にお仕置きしてやるからな。


「す、助っ人さん入られまーす」

「ほら、来るみたいよ」

「なんでちょっと大御所が来る空気になってんだよ」


 そうしてグラウンドにガシャンガシャンと音をたてて現れたのは──白銀の鎧を着た騎士である。

 その手には歴史と美しさを兼ね備えた立派な剣が握られていて、実に風格たっぷりだった。

 その佇まいからもその騎士が歴戦の猛者であることは伝わったのか、思わずアスクは口をぽかんと開けていた。


「やあ、私は助っ人を頼まれた者だが、相手は君で良かったかな」


 騎士は意外にも若い声をしていて、ともすれば子供のようですらある。

 あまりにも堂々とした騎士の姿にアスクは敬語になって言葉を返す。

 

「いや、あの、えっと、ど、どなたですか?」

「私は謎の騎士! それ以上は何も言えないな……」

「は、はぁ……」


 さて、この謎の騎士の正体だが──まあ、お察しの通り私である。

 そう、なんとレイヴから出た案は『全身鎧で隠してゼノビアが相手になればいい』というものだったのだ。

 ……うちの剣は淑女になんって提案をしてくれるんだ!


 当然超嫌だったのだが、しかし、時間がない上に丁度いい強さの相手が思い浮かばなかったのも事実。

 仕方ないので受け入れてこの場に立つことにした。

 ちなみに声はレイヴが私の言葉を聞き取って代わりに発言してくれている。

 声が幼いのはそのためだ。


「アスク……頑張りなさい」

「ちょっと待てよ! 今から俺、謎の騎士と戦うのか!?」

「あら、逃げるの?」

「お前もうそれ三回目だぞ! せ、セピアはどうしたんです?」

「彼女はちょうちょを追いかけて何処かに消えた」

「あいつ古典的なお嬢様すぎるだろ!」


 無論、ちょうちょなど追いかける私ではないし、追いかけたとしても一瞬で捕らえられるので話にならないのだが、嘘の中でくらいちょうちょを追いかけたいのである。

 

「勿論、素のままでやったのでは戦力に差があり過ぎる。よってハンデとして私は魔法無しで戦おう。加えて、こちらから攻撃することもない」

「舐められているわねぇ。こんなこと言われて引き下がるのかしら?」

「下がらねぇよ! なんだかよく分からないが、やってやらぁ!」


 色々言っていたが結局アリスの挑発に乗ってしまうアスクだった。

 さて、決闘は開始されることになったが、ここからが大変である。

 丁度いい感じに手加減しなくてはならないのだが、私はあり得ないほど手加減が苦手なので、細心の注意をはらわなければならないのだ。


 よって、魔力は放出せずに、素の筋力だけで戦うのが丁度良いと思われた。

 まあ魔法を禁じても自然と体には魔力が循環しているので、少なからず影響があるのだが……。


「それじゃあ、決闘開始ね」

「『ひれ伏せる魔法』は安物の鎧くらいは貫通出来るので安心して撃ってくれていいぞ」

「ご丁寧にどうも! 三連!」


 先ほどと同じように『ひれ伏せる魔法』が三弾一緒にこちらに向かってくるが──私はそれを剣で、レイヴで全てポンポンポンと打ち返す。

 当然、『ひれ伏せる魔法』はアスクの元へ帰っていくわけで。


「うおおおおおおお!? あ、あぶねぇ……」


 何とか躱すアスクだがその姿は隙だらけであり、あまり褒められたものではなかった。

 完全に油断していたな……良くない事だ。


「そ、そんなこと出来るんですか!?」

「ケイスにも出来ることだ。よって、私に一発くらい当てないと勝ち目はないぞ」


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