表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/66

49.可愛くて恐ろしくて強い


「鬼や竜より優しい相手だと思いますが」

「そういう話じゃないだろ!」

「ですがアスク、貴方はアリスと互角の戦いをしていたではないですが。つまり実力伯仲の相手なので、修行の相手には最も向いているはずです」

「うっ……理論だけはきちんとしてやがる」


 そう、私も意地悪で言っているのではない。

 負荷を与えるためにはアスクより少し強い相手がベストなのだが、今の私にそんな伝手はないので、決闘の練習相手をどうするかは結構な難問だった。

迷った結果、だったら同じくらいの相手が良いだろうと思い、私はアリスに土下座で頼んでみたのだけど……。


「ちなみにアリスは快く受け入れてくれました」

「マジかよあいつ!?」

「むしろ超乗り気で、この間はアクシデントがあって負けたけれど本来の実力なら私が勝つはずだと豪語していましたよ」

「なんであいつはいつもそう強気なんだよ!」


 何者からも逃げない、臆さない、屈しないがアリスの心情なのではないかと思うほど、彼女のメンタルは強力だった。

 あの可愛らしい容姿からは想像が出来ないほどに逞しい心をしていらっしゃる。

 

「加えてこうも言っていました。怖かったら逃げてもいいわよと」

「女子の発言とは思えねぇ……けど、逃げてはいられないか」


 さすがに婚約者が相手と聞いて混乱していたアスクだったが、アリスの言葉を聞いて負けてられないと思ったのか、すぐに戦意を取り戻した。

 これを狙ってアリスが私にこの言葉を託したというのなら、それは大正解で、なんというか長年の付き合いを感じさせる。


「その通りです。アスク、強さを求めるのなら鬼も竜も元婚約者も全て倒してください」

「お前は悪魔か!」

「いいえ、私は天使のような淑女でございますとも」


 実際とんでもなく鬼畜なことは言っているが、修行以外の思惑としてはこれでもう2人の仲が再度接近すればいいなぁとかも思っていたりする。

私の我が儘になってしまうが、やはり友達同士は仲良くやって欲しいのだ。

 だが、それを口にするとさすがのアスクも逃げてしまいかねないので、そんな真意は悟られないように、私は鬼も共感するような鬼教官に徹するとしよう。


「それではアリス―、こちらに来てくださーい」


 話もまとまったので、近くで待機しているはずのアリスに声をかけると──ズシンズシンと大地を揺らし、大空に響くような足音が聞こえてくきた。

 うん、準備万端のようだな。


「おい、なんだこの足音は」

「アリスのものでしょう」

「ドラゴンか何かの足音にしか聞こえねぇぞ!」

「気合が入っているようですね」


 そうしてアリスは……巨大な人形の手の上にちょこんと乗っかって、私たちの前に現れた。

 足音の正体はこの人形さんであり、愛らしさと恐ろしさを兼ね備えたその姿には思わず私も見惚れてしまう。

 強さと可愛さを兼ね備えるのもいいなぁ……ただ私の場合は強さが強すぎるので、両立は残念ながら不可能かな。


「さあ、アスク、来てやったわよ」


 腕を組んだままに強気な表情でアスクを睨むアリス。

 堂々とし過ぎていて、もはや覇王の風格すらあった。


「いきなり人形付きで現れるとはな……」

「アリスー! こんなことをお願いしてしまい申し訳ありません!」

「いいのよセピア。友人の頼みなら断る理由はないし、むしろ貴女と仲良くしているこいつに怒りをぶつけるいい機会だわ」

「どういう方向で怒りを燃やしてるんだよ!」


 よく分からないがアリスは超やる気満々らしく、人形の腕をブンブンと回転させていた。

 まあ、訓練は本気であれば本気であるほど効果があるので、戦意が強い分にはありがたい限りなのだが。


「では決闘を開始しましょう。あっ、本来は決闘開始前まで人形魔法を発動するのは禁止なのですが、今回は前出しアリとします。その方がアスクの負荷になりますので」

「マジかよ……」


 不利な条件に絶望するアスクだが、しかしこれなら疑似的に少し強い相手を再現できるので非常に効率が良いのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ