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46.淑女大失格

「それにしても尋常じゃない魔力量だな」

「あー、ええっと、そ、そうなんです。魔力だけは多くて!」


 さすがに怪しまれてしまった魔力量だが、しかし、まあ魔力が多い貴族は少なくはないので、決定的なものではないだろう。

 そもそも魔法学園と言うのはある程度優秀な人が来る場所なのだし。


「だから箱入りされていたのかもな。分別付くまで危険だから」

「そうだったのですか!」

「いや、そうなんじゃないのか?」

「そうだと思います!」


 勝手に色々と想像してくれる便利な箱入り設定だった。

 人と言うのは箱入りという概念に色々と考えたくなるものなのかもしれない。

 かくいう私も自分の箱入り設定を色々とめちゃくちゃに考えたものだったからな……屋敷の間取りまで妄想しているぞ!


「とりあえず後は光の量を調整すればいいだけだ。光魔法なんて楽勝なんだよ」

「光魔法への自信がすごいですね」

「実際、簡単だ。ほらこうやってよ」


 アスクは指を少し回転させるように動かすと、その中心から光がひょいっと生み出され、しかもその光が赤から緑、緑から黄色にと虹色に姿を変えていく。

 自信満々な態度も頷けるほどの華麗な光の舞!

 い、色変更をこんな楽々と!? スムーズに切り替えるのは結構な難易度なはずなのに!


「すごすぎますよ! 才能があるのでは?」

「あるのかもしれないが、俺には不必要な才能だ」

「あー、気持ちは分かります」


 私が攻撃魔法の才能より光魔法の才能が欲しいように、アスクも光魔法の才能より攻撃魔法の才能を欲しているらしく、その表情は憮然としていた。

 逆だったら万々歳だろうに、人生、なかなかうまくいかないものだなぁ。




 

 その後も、私とアスクは魔法について楽しく語り合った。

 なんというか、私とアスクはウマが合うところがあって、話が途切れることがなく続いてしまうのだ。

 その理由は……あたりが少し暗くなってきたころに、アスクがこう言っていた。


「なんかお前、滅茶苦茶話しやすいんだよな。女子っぽさが薄いと言うか」

「何故ですか!? めちゃくちゃ女子女子した淑女ですよ私は!?」


 遠回しにお前男っぽいよなと言われてしまったー!?

 対セピア・ミーティアムへの最大の侮辱発言だぞそれは!

 よ、よりにもよって、よりにもよって儚げな淑女を目指すこの私に女子っぽさが薄いだとー!!!!!!!

 

『まあ、見た目だけだもん』


 ついには我が愛剣にまでしれっとそんな冷たいことを言われてしまう。

 レイヴまで私にそんな風に! 私を見せかけだけの似非淑女だと言うのか!?


『うん』


 ぬわー!!!!!!!!!!!!!!!!


「いや、悪い意味じゃないって。むしろそういう方が男子からの受けは良いんじゃないか? 知らないけど」


 フォローしてくれるアスクだが、モテに何一つとして興味のない彼の言葉は羽のように軽かった。


「そこは知っててくださいよ! もー! 見ててくださいね! この学園で圧倒的成長を遂げて卒業するころには誰もが甘やかすとんでもない美淑女になっていますからね!」

「美淑女って概念が分からねぇ」


 ちくしょう! 淑女力が足りないばかりにこんなことに!

 なかなかの屈辱的だが、しかしこの借りを暴力で返していてはそれこそ淑女大失格である。

 かくなる上は磨きに磨いた淑女力で……殴る!


『結局暴力じゃないか!』


 こ、この場合の殴るは概念的な意味だ!

 私の内面からも溢れ出す美貌でこの世の全てを虜にして殴ってやるからなー!


『もう無茶苦茶だ……』


 こうしてその日の修行は失意のままにお開きとなった。

 嗚呼、モテは遠くにありて……。


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