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45/66

45.過ぎた光は闇と変わらないとかなんとか

「お前のモテ事情は置いておいて、とりあえず聞いておきたいことなんだが……」

「はい、なんですか?」

「さっきから生み出しているそれは何なんだ……?」


 怪訝そうな顔で尋ねるアスクの視線の先にあるのは、未だに周囲を漂っている謎の暗黒物質である。

 何と聞かれても困ってしまうな……私も何なのか分かっていないのだから。


「闇ですかね」

「なんで光魔法の練習で闇を生み出しているんだよ!」

「何故でしょうか……見当もつきません」


 そもそもあらゆる優しい魔法が上手に使えないと言うのはあるのだが、光魔法に関しては度を越して使えていない気がする。

 何故だろうか……戦場で魔物に闇の呪いでも受けたかな。


「俺の考えでは恐らく魔力を込め過ぎているんだと思うな」

「あー、それはありそうですね」


 手加減が出来ないと言うのは、要するに魔力の調整が苦手ということに他ならない。

 私は生来魔力の多い体質な上に、戦場に於いて集団殲滅を基本任務にしていたので、もう常にフルスロットルで生きて来たのだ。

 アスクには魔力の上手な使い方を教えているところだが、その教えている当人がこれでは説得力が皆無だな……。

 い、一応、コントロールは出来るんだぞ? ただ、私の場合は本当に魔力が多いので少し蛇口を捻るだけで出過ぎてしまうのだ。


「ちょっとだけ……ちょっとだけ出すように……」


 全身全霊で魔力の調整をする私だが、その手から生み出されるのは相変わらずの闇である。

 これは要するに魔力というか光と言うかが密集し過ぎて闇になっているのだろうか。

 もしくは、過度な重力が掛かり光を吸収しているのかもしれない。


「魔力が特別多いみたいだな。じゃあ、いっそ思いっきりやった方がいいんじゃないか?」

「思いっきりですか?」

「巨大な光とか、数多くの光を生み出すようにしてみれば、一個一個に込められた魔力が分散して丁度良くなるかもしれない」

「おお! アスク天才です! やってみましょう!」


 決闘でも最後まで隠し玉を残していたりと、なかなか頭の良いというか、発想力のあるアスクである。

 なるほど、魔力が多ければ多いなりに工夫も出来るということか。

 光魔法はとにかく丁寧にと教わっていたので、逆に出てこない発想だった。


 よし、やるぞ!

 私は両手を広げて、これまでと違い広い範囲で光魔法を発動する。

 頼む! これで巨大な闇が生み出されて学園を飲み込んでしまったなんてバッドエンドだけはやめてくれ!


『あり得そうなのが怖いよね』


 その時は私も全身全霊で闇を破壊しなければならなくなるだろう。

 己の魔法と心中するのは嫌だ! 光を! 光をくれー!


 そんな私の必死の願いが通じたのか、やがて私の頭上に煌びやかな光が満ちていく。

 それはまるで星々のように夕暮れに煌めく光の数々で、この私が生み出したとは思えないほどに美しい光景だった。


「で、出来ましたー! って、あれ、なんか光が強すぎる気が」

「直視するな! 目がつぶれるぞ!」

「ええええええ!?」


 咄嗟にアスクと共に伏せると、頭上からとんでもない光の奔流が降り注ぐ。

 こ、これは戦場で体感したことがある……相手の目をつぶす恐ろしき魔法『大閃光魔法』だ!

 ……いや、結局攻撃魔法じゃないか!


「なるほどな……光魔法にも戦闘的な使い方があったってことか。セピア、勉強になったぜ」

「勉強しないでくださいこんな痴態を!」

「でも、あとは調整するだけだな。大きな前進だぞ」

「それは確かに……」


 今までは闇しか生み出せていなかったところで、光が生まれたのだから、確かに偉大な進歩ではあるのかもしれない。

 結果的に生み出された光は滅びの光だったわけだが。


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