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40.決闘の解説・実況するゼノビア選手

「あの、えっと、ケイス、その仇のゼノビアがどんな容姿だったか聞きたいのだけど……」


 食事も終わり、去り際に何とか情報を集めようとする私だけど、しかし、ケイスの女子への優しさは本物のようで、彼はウインクしながらこう言った。


「あんまり知り過ぎると、セピアちゃんにも危険が及ぶかもしれないし、秘密ってことで」


 確かに興味本位で首を突っ込むにしては危険なネタかもしれないが、それは私のことなんだがー!

 その後、色々話してみても残念ながらケイスの心変わりには至らず、ケイスは何か用事があるとかで帰ってしまう。


「絶対またお茶してくれよな! そんじゃまたね~!」





 そして残されたアスクは苦々しい顔で野菜を口にしている。

 どうやら付け合わせに嫌いな野菜が入っていたらしい……それでもきちんと食べようとするところは立派だが。


「……なあ、セピア。どっちの勝ちだったと思う?」

「えっ? そうですね……肉セットAよりBの方がマッシュポテトなどついていてより良かったかもしれません」

「俺とあいつのメニューの違いについていってるんじゃねぇよ! 決闘の話だ!」


 しかし、今の黄色野菜に苦しむアスクの姿を見ているとマッシュポテトの方が良かったと思うが……。

 などと言うのは勿論冗談で、彼が先ほどの戦いをずっと気にしているのは分かっていた。

 食事の最中でも、少し気にしているそぶりを見せていたからな。


「今のはちょっとした茶目っ気です。ええっと、あくまで私個人の見識にはなるのですが」

「遠慮くなく言ってくれ」

「では遠慮なく。あの決闘、ケイスの勝ちだったと思います」


 私の言葉を聞いたアスクは、一度、深く頭を沈み込み考えこむようなそぶりを見せると、歯を食いしばるように顔を上げ、私の方を見つめる。

 普段の涼しげな姿も美しいが、苦しむ彼の姿もまた美しかった。

 

「どうしてそう思う? 一応、最後に逆転の一手は打てたと思うんだが」

「はい、あれは素晴らしかったですね! アスクには決闘のセンスがあります!」

「おべっかはいいから、理由を聞かせてくれ」


 自身の負けと聞いて焦っているのか、アスクは話の先を急かす。

 おべっかではなく、本当にそう思っているのだがな。


「最後の『怒りを喰らう魔法』は激怒しているケイスに対して最高の相性の良さで、私も一瞬、アスクの勝利を確信したほどでした。しかし──」


 本当に最後の最後まで隠し玉を残していた姿には感動し、拍手さえしたくなったのだが、残念ながらそこから先のケイスの対応が凄すぎた。


「しかし、考えても見てください。どうして『怒りを喰らう魔法』はゴディラ先生に直撃したのだと思います?」

「それは、ゴディラがあの場で一番怒っていたからじゃないのか」


 確かにゴディラ先生は見た目上は怒っていた。

 しかし、それはあくまでポーズに過ぎない。


「違います。ゴディラ先生はそんなに怒ってはいませんでした。当然ですね、先生は指導するためにあの場にやって来たのですから、私情はありませんし、怒っていると言っても少しくらいなのです。それはその後の先生の落ち着いた指導の仕方で分かりますよね?」

「そういえばそうだな……じゃあどうして」


 ゴディラ先生は優秀な教師であり、怒りをまき散らすような人ではない。

 そんな先生に、怒りに反応してホーミングする魔法、『怒りを喰らう魔法』が向かっていった理由、それにはシンプルで、けれど非常に難易度の高い理由があった。


「答えは簡単です。『怒りを喰らう魔法』を見た瞬間、一瞬でケイスは頭を冷やし、冷静になったからです。怒れるものがいなくなったので、その場で微かでも怒っていたゴディラ先生の元に魔法は向かっていったのです」


 要するにケイスは決闘の最中で怒りを露わにするような未熟ものではなかったということだ。

 私の師匠はメンタルコントロールに重きを置いているところがあるので、その辺の指導も良く行き届いていたのだろう。


「つまり、先生が割り込んでこなかったら……」

「魔法は行き場を失い、適当な場所に飛んで行ったでしょう。そして、返す刀でケイスが貴方の懐に入り、それで決着します」


 よって、あの決闘が真っ当に続いていた場合、勝っていたのはケイスという事になる。

 だが、これはアスクが弱かったからだとは私は思わない。

 ケイスが学生と言う身分に対して強すぎるのだ。


『いや、それをゼノビアがいう?』


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