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38.セピアちゃんマジ天使で剣士!


 顔面に『怒りを喰らう魔法』を喰らい一度は倒れるゴディラ先生だが、見た目通りの頑丈さで、さほどダメージを見せずに即座に立ち上がる。

 土を手で払い、何事もなかったように再び歩き始める姿はまるで不死身である。

 つ、強い……元騎士か?


「雌雄を決したいという男心は先生も分かるが、お前たち、練習の場に置いてはきちんと練習しろ。決着は魔闘大会に取っておくんだな」

「はい……」

「マジすんません……」


 指導の仕方も実に堂に入ったもので、しっかりと二人を叱りつつ、同時に向上心を忘れさせない素晴らしいもので、この学院の教師のレベルの高さが感じられた。

 では、そんな教師陣でも匙を投げたくなる私の魔法の腕前とは一体……。

 ま、まだ、初日でそんな風に思うのは私がネガティブなだけだ! そう思いたい!


 そして怒られて戻って来るアスクとケイスの少し落ち込んだ姿は実に学生らしくて、少し可愛く見えるほどだった。

 ただ、これには二人の決闘を面白がって止めなかった私にも責任があるわけで、元気づけたい気持ちはある。


 ただ私に誰かを元気づけるほどの話術はないわけで。

 こ、こういう落ち込んだ若者を見た時は大体……こうだ!

 私は二人に向かってこう言い放った。


「飯を食いに行きましょう!」

「「……はい?」」





 揃って首をかしげるアスクとケイスを、授業が終わるや否や引っ張って連れて来たのは大食堂。

 天井に釣り下がるシャンデリアは何故か不気味に揺れているが、そんなことは気にせずに受付まで注文を取りに行く。

 三名とも注文は大盛りに肉が乗った豪快な肉肉しいセットだった。


「セピア、かなり食うんだな」

「いや、女子にんなこと言うなよ!」

「あっ、いや、あの、肉食系女子なので……!」

「肉食系女子ってそういう意味なのか?」


 つい癖でとんでもない注文をしてしまったが、い、言われてみれば淑女らしからぬメニューだ。

 やはり淑女と言えばサラダなのだろうか……でも、肉を食べないと力が入らなくないか?


『淑女は肉食べないと力出ないとか言わない』


 ば、馬鹿な!? 淑女はケーキで力を出すと言うのか?

 確かにパワーにはなりそうだが、それはそれで太りそうで怖いぞ!


 こうして席に付いた私たちだが、2人は犬猿の仲のようで、なかなか会話が始まらない。

 やはり私が話しかけないとか……部下と話すときも私が切り出さないとなかなか場が進まなかったから、慣れてはいるが。


「いやぁ、良い決闘でしたよ。ケイスは素晴らしい戦闘技術でしたし、アスクは最後の最後に隠し玉を用意するセンスを見せて、どちらにも評価点がありましたね」

「セピアちゃんすっごい評論するじゃん!?」

「セピアは執事が元南方の兵士らしくて、そっち方面に詳しいんだよ」

「へー! ギャップがあってウィーねー!」


 ウィーねーの意味合いを図りかねるが、とりあえず褒められているようなので私は胸を張って置いた。

 ありがとうアーノルド……! 存在しないけど!


「それにしても、ケイスは良い師がついているのですね。深い指導が見えてきましたよ」

「あれだけの戦闘でそこまで分かんの!? 詳しすぎね!?」


 私の見識に驚くケイスだが、普通分からないのか!?と私も彼の驚きに驚いていた。

 では世間の人はどうやって流派を見分けているのだ


『流派なんて見分けないんだよ!』


 いや、マナーなどには流派もある気もするが、まあ、それは置いておこう。

 私もそっち方面はまるで分からないし。


「えっと、め、目だけは肥えているんです!」

「南方育ちだとそんなこともあんのかなぁ……まあ、俺の師匠は確かにすげー人だよ。騎士を引退して旅してるところを俺が頭下げて習いに行ったくらいだし」

「騎士に教わってるのかお前! くっそ、道理で魔法使いとは違う身のこなしをするわけだ」


 決闘中、あのケイスの動きにはさすがに戸惑っていたらしいアスクが悔しげな顔で呟く。

 戦場以外であの動きをする人とは中々会わないだろうからな……初見では厳しかったか。


 それにしても、引退した騎士に習ったと言うのなら、やはりケイスの師匠は私の師と同一人物らしい。

 引退後の行方は知らなかったのだが、元気にやっているようで安心した。


「元気そうで……い、いや、元気なお爺さんなんですね」

「いや、実は師匠はちょっと前に決闘で負けて今は療養してさぁ。全然元気じゃねぇんだわ」

「本当ですか!?」


 あの人が決闘で負けた!?

 引退したとはいえ、まだまだ現役並みの……いや、現役を超えるほどの力を持っていたはずだが……。

 一体、誰に負けたと言うのだろう。


 かつての師の怪我にはさしもの私も驚きを隠せず、椅子から立ち上がってしまう。

 み、見舞いに行こうにもしばらくは学校を離れられないのが心苦しい……。


「見ず知らずの師匠のことでそんなに心配してくれるなんて、やっぱりセピアちゃんは天使だなぁ」

「あ、いや、あの、はい! 心配でして、お見舞いに行きたいくらいです!」


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