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37.先生…いい人だったよ


 弟、それは甘美なる響き。

 弟、それは魅惑の存在。

 世の一人っ子な女子は皆欲しがるものである。

 弟だとすれば多少やんちゃなくらいが好感度高いものな。


『僕と言う弟はどうしたんだよー!』


 ぷんぷん怒るように私の胸元で揺れるレイヴ。

 いやレイヴのことを私は生涯の友だと思っているが、弟はちょっと……。

 というか、正確に言えば年上だろう?


『封印されている期間を年齢に数えないでよー』


 剣に年齢を問うのは色々難しいところがありそうだった。

 人間基準で見た時、犬の年齢とその老い具合は異なるみたいな話と同様に、種族が違うとその辺がややこしい。


 ちなみに私は自分の正確な年齢を知らないので、もういっそ同世代は全て年下だと思うことにしている。

 何故なら彼らには若さが溢れているから!

 私にはないその初々しさと瑞々しさを見ていると、どうにも自分が老けているような気がしてならないのだ……。


 目の前に広がる若い男子同士の決闘なんて、その若さの最たるものである。

 今も2人、魔法を出し合い、或いは消しあい、しのぎを削っている。

 青春の汗が輝くように散らばり、実に美しい光景だった。

 やはりいいな……青春は! 私もあんなことしたい!


『ゼノビアがやったら散らばるのは輝かない血と肉片でしょ』


 うっ、否定できない。

 やはり私には淑女路線の青春しかないようだな……。

 

 それにしても、うーむ、やはりケイスのあの軽やかな身のこなし、そしてギリギリを攻める体さばきは魔法使いと言うより戦士な雰囲気を感じる。

 所謂私と同じ魔法剣士で、半身で相手を睨み、杖先を少し揺らすその姿は流派を同じくしていることを示していた。


 尊敬すべき師であり、同時に私を戦場へといざなった忌々しきあの人は、私という弟子を最後に引退したので、戦場でも兄弟子はいるが弟はいない状況が続いていたのだが、そこに来てこのケイスの姿! これには感動すら覚えてしまう。

 でも、素性は明かせないので「弟くん、パン買ってこいよ!」とは言えないんだよな……。


『弟にさせる事ってそれなの!?』


 これが正しい姉弟の関係だと習ったが……。

 

『明らかにデマだよ!』


 などとアホな会話をレイヴと繰り広げている間も戦いは進行し、状況は──やはりアスク不利だった。


「はぁ……はぁ……ちょこまかと」

「ちょこまかじゃなく、蝶のように軽やかって言ってくんねぇ?」


 そう、魔法を放ち続けるアスクとその魔法を斬り続けるケイスとでは大きな違いがある。

 それは魔力消費量だ。ケイスは杖に魔力を纏わせているだけなので、少ない消費で済んでいるが、アスクはその都度魔力を込めて放っているので、多くの魔力を消費してしまう。

 当然、先に力尽きるのはアスクなわけで、少し不利な戦いを強いられていた。


 それでもここまでアスクが戦えていること自体は、私にとって予想外だった。

 もっとあっさり倒れていると思ったが、アスクはなかなか魔力量が多いらしい……さすがは英雄の息子。


「お前なんか蛾がお似合いだ。装飾過多野郎!」

「おしゃれ頑張っちゃってる勘違い野郎って言ったかてめぇ! マジ許せねぇ!」

「そこまでは言ってねぇよ!?」


 何が彼の怒りに触れたのか分からないが、アスクの挑発にケイスは乗っかってしまい、それまでの冷静な立ち回りが嘘のように、直線的にアスクの元へ駆けていく。

 おお、これはチャンスだ! ここでまだ使用していない魔法でカウンターを決めれば、一撃で勝ちになる!

 アスクもこのタイミングで勝負勘が働いたらしく、杖を振るい、まだ見ぬ魔法を放つ。


「『怒りを喰らう魔法』!」


 それは怒りに反応してホーミングする追跡魔法だった。

 相手が激昂している時にしか使えない魔法だが、今の状況はまさにベスト!

 初見で、しかも冷静じゃない状況でかわすことは出来まい! やったか!?


 思わず私の拳にも力が入ってしまうが、しかし、想定外なことが1つあった。

 それはこの授業を担当しているムキムキな男教師、ゴディラ先生が怒りながらこちらにやって来てしまったことである!


「こらー! お前ら何を勝手なことをやってぐはああああああああああああ!」

「せ、先生ー!?」

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