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35.女癖悪男

「そんじゃその辺でやろうぜ」


 そう言ってケイスは私の肩に手をやるとグイっと引っ張る。

 なかなか距離感の近いタイプの様だが、そもそも距離など気にしていられる世界を生きていないのでそのことは特に気にならない。

 むしろその肩に乗せられた彼の手に私は興味を持っていた。

 この感触、もしかするとこの男の子は──。


「いや、露骨なナンパだろ! 抵抗しろ!」


 そう言って突然横から現れて、私とケイスの間に入ったのはなんとアスクだった。

 青い髪を翻し、颯爽とケイスを睨む姿は非常に凛々しく見惚れてしまうほどだけど、私は状況が分からずに混乱して、頭がついてこない。

 な、何故このタイミングで。


「おいおい誤解するなよアスク、俺はただセピアちゃんと仲良くなった後に寝室でも仲良くしたいだけだって!」

「何一つ誤解がないじゃねぇか!」

「えっと、2人は知り合いですか?」


 見ていると明らかに2人は見知った仲の様子で、何処か慣れ親しんだ空気が感じられる。

 まあ、話によると私のような奴が特殊なだけで、大抵は入学する前から知り合い同士なのが多いのだと言うが。


「別に知り合いではないが、何回か会ったことはある。そいつはケイス・チャミトリスと言って、軽薄さと女癖の悪さで有名なやつだ」

「へー、軽薄なんですか?」

「まさかまさか! むしろ全女子に対して重い思いで接してんだから、重厚な男よ? 俺は」

「と言っておりますが」

「もうその言動が軽すぎるだろ!」


 私にはいまいち分からないのだけど、どうやらケイスは悪評のある存在らしい。

 しかし、それを真に受けるほど私も社会常識がないわけではない。

 噂と言うのはいかようにも捻じ曲がるものなので、最終的には自分の目と耳で判断するのが大切だと思っている。


「つーか、なんでアスクが出てくんの。その子のこと好きだったりすんの?」


 からかうようにそう言うケイスだが、そんなわけがないので、特に動揺もしない。

 いや、ここは恋愛小説的には動揺して「えっ、そうだったんですか!?」くらい言うべきだっただろうか?


「何でも恋愛に絡める奴が俺は嫌いだ。単にそいつとは知り合いだから、義理を立てただけだ」

「あっ! そういえばそうじゃん! 昨日、アスク担がれてたよな!」

「ぐっ……! やっぱりあれはお前がやってたのか」

「うわ、流れ弾が」


 話の流れで私の昨日の二人担ぎ事件が話題に上がってしまった。

 あの忌々しいゴリラ的事件が!

 ど、どうにか有耶無耶で誤魔化そうと思っていたのに……!


「人命第一、品質第二ですので……まあ、あれが一番効率良かったんです」

「そもそもよくセピアちゃんは人を2人担げるよな」

「えっと、か、軽くする魔法が使えるんです!」

「ひゅー! セピアちゃんなかなか高度な魔法使えんだね!」


 お褒め頂き光栄の至りなのですが、申し訳ありません。使えません。

 逆に物体をめちゃくちゃ重たくする魔法は使えるが、あれは魔力を込めれば簡単だし、物を持ち上げることも出来るが、あれは軽くしてるんじゃなくて魔力で持ち上げているだけだしな……。

 勿論、そんな思考はおくびにも表に出さずに、私はニコニコとイエスでもノーでもない顔で頷く。


「そんなセピアちゃんに魔法教わりたいなぁ」

「はい、では訓練に……」

「待て待て待て! だからそいつは怪しんだって。簡単に乗せられるな」

「しかし、2人組は作らないといけませんからね。えっと、そういえばアスク、貴方の方は?」


 考えてみれば2人組を作る時間のはずなのだけど、アスクはこうして一人で私たちの間に入っている。

 お相手はどうしたというのだ。

 

「お前がひょいひょいそこの馬鹿に引っかかってるから心配であぶれたんだよ!!!!!」

「そ、それはすいませんでした!」


 大変申し訳ないことに、この作らなければ命に係わる二人組という催しを、アスクは私のせいで始動が出遅れる羽目になったらしい。

 親友の息子の一大事を放ってはおけないので、私が練習相手になりたいくらいなのだが、しかし、先約がいるとそれも言い出しにくい。

 少し困ったことになったな……。


「アスクが気にするなんて、やっぱりセピアちゃんは面白可愛いな……じゃあ、アスク、先に俺とお前でやり合うってのはどうよ?」


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