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34.チョロい剣鬼

 でも、初日なので広く名前が伝わることはなかったらしく、それだけはラッキーだった。

 セピアの名が魔王と共に刻まれていたらもはや挽回不可能なので、全てを破壊しないといけないところだった……。


『思考が魔王じゃん』


 こ、これでも英雄なんだがなぁ。


「ヤバいわよね。きっと南方から来た魔王が人の体を取って学園に侵入しているのよ!」

「それは妄想が飛躍し過ぎや! うちとしてはそれぞれの授業で失敗したやつの噂が混ざり合って、存在しないヤベー奴を生み出してとるんやないかと思うんやけど」

「そ、そうに違いありません! ケットルさん聡明!」


 まさか全部同一人物ですとは……ましてや全て私ですとは言えないので、私は全力でケットルに同調する。

 そ、その説が広く広まってくれることを願いたい!

 そのためにもここからは失敗せずに、目立たないように頑張らなければ……。

 でも私……手加減とか苦手なんだが、決闘、大丈夫だろうか。



 ★



 こうして始まった決闘術の授業は、ゴディラという大変分厚い体格を持つ先生の雑談混じりな講義から始まり、魔法の説明を経て、やがて二人組に分かれるように言われたのだが……いきなりハードルが高くないか?

 二人組は人生の高いハードルだと聞く……若者初心者な私に乗り越えられるだろうか。

 

 もう恥も外聞もなく、即座にアリスに助けを求めたいのだが──。


「言っとくけど、うちの魔法は中々強いで!」

「は? 私の魔法の方が汎用性もあってその上強いんだけど? 庭をぶっ壊した実績持ちよ?」


 と、なんだかケットルとヒートアップしており、間に入れる気はしない。

 まずい! このままでは完全なるボッチとなり私の心はすり減り薔薇色の学生生活は灰色に染まり夢は夢で終わり明日は絶望へと変わる。

 やがて来る未来は……死だ!


『死にはしなくない!?』

 

 少なくとも青春は死ぬ!

 は、はやく誰かに声を掛ければ……。


「ちょっとそこの銀髪の彼女―!」


 慌てふためいていると突然背後からそんな声が聞こえてきて、私は肩を飛び跳ねさせて驚く。

 基本的に銀髪は珍しい部類なので、銀髪の彼女と言えばそれは私のことで間違いないだろうが、しかし、それでもなお別の人に話しかけているのではないかと卑屈に思ってしまい、私は恐る恐る振り返った。


「俺、さっきの授業で同じだったケイスって言うんだけどさ」

「あっはい、あの、なんでしょう」


 話しかけてきたのはややオレンジがかった髪色の背の高い男子生徒だった。

 ケイスという名前らしい彼は、耳にこれでもかとピアスを入れており、学生服も派手に改造したのか、開いたりバッジが付けられたりしていてやんちゃな様子が伺える。

 だが、魔法使いと考えればそれらに神秘的な意味合いがあっても不思議ではないので、一概にやんちゃの結果だと言い切ることは出来ない。

 むしろ、これくらい個性があった方が大成しそうな気さえするな。


「君、可愛いよね。名前何って言うの」

「えっ………………や、やややや、やっぱり可愛いですか!!!!!!」


 突然の可愛いに動転してしまう私!

 じ、実は結構不安視してたのだけど、やはり私は可愛いのか!


「うん、可愛い可愛い! めっちゃ可愛いっしょ!」

「私もそう思います! セピア・ミーティアムです! 儚げな淑女です!」

「えー! 名前も超可愛いじゃん!」

「マジですか!!!!!」


 急に現れてめちゃくちゃ私のことを褒めてくれるケイス!

 すっごくいい人じゃないか! 自信消失しかけていた名前まで可愛いって言ってくれるし!


「つーか、初日で二人組作るとかキツくない? 俺、この限目に全然友達参加してなくてさ」

「分かります! 普通につらいです……」

「それで一緒にやらね? あと、この後一緒にお茶とかどう?」

「いいんですか! 渡りに船です! やりましょう飲みましょう!」


 なんと困り果てていた二人組問題が一気に解決へ!

 しかもこの後お茶まで一緒に出来て友達が増えるチャンスまで湧いてきたという……なんだなんだ、私に都合が良すぎるぞ?

 こんなラッキーなことがあるモノだろうか、いやない! けどあった!

 これも私の淑女パワーのおかげだろうか。


『なんか怪しくない? 大丈夫?』


 はて、どこに怪しさが?

 褒めてくれる人に悪い人がいるはずがない……!

 


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