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31.獣は本質を見抜く


「ふわぁ~、おはようセピア……って、何やってんの?」


 入学式の翌日にはすぐに授業が始まるのが当魔法学園クオリティ。

 大切な初日の授業に遅れていては淑女足りえないので、アリスと楽しく夜の時間にお喋りしながらもすぐに眠りについた私だが、日ごろの習慣でまだ日も昇らない時間帯に起きてしまった。

 戦場の朝は早いのである。


 しかし、この学園の朝はそれに比べれば遅く、まだアリスはスヤスヤと眠っている。私は早々に暇になってしまった。

 授業の予習でもすればいいのだろうが、それは入学前に大分済ませてしまった。

こうなったら仕方ない、私は健康的に──スクワットすることにした。


『淑女はどこに行ったんだよ!』


 淑女はスクワットしないと言いたげなレイヴだが、それは大きな間違いである。

 淑女だってスクワットは、する。


『しないよぉ!』


 でも、スクワットしないでどうやって足のボリューム感を維持すると言うのだ。

 淑女だっていずれ年をとるのだし、腕はともかく、足腰は鍛えておかないと老後が不安だろう。


『学生の内に老後のことを考えるのは気が早すぎる!』


 とかレイヴと話しながらスクワットをしていたら、アリスがムニャムニャと起きてきてしまったのが現在の構図である。

 そうか! スクワットはギシギシ床がきしんでしまうから寝ている人の横では不適格だったのか!

 もっと静かな空気椅子などをするべきだった……。


『違う、そうじゃない』


 とにかく誤魔化さなくては!


「こ、これはえっと、ウサギさんの真似をしてましたぴょん! 動物使役の授業の予習ぴょん!」


 中途半端な中腰のまま、頭の上にウサギの耳のように手を持っていき、ぴょこぴょこと指を動かす私。

 ……非常に滑稽な姿である。

 かつては狩っていたウサギの真似をすることになるとは……。


「ウサギさんはそんな風に上下しないのよ。ちゃんと飛びなさいよ」

「す、すいません!」


 ウサギの真似に厳しい!

 いかにも可愛いもの好きなアリスとしては、ウサギに拘りがあるのかもしれなかった。

 ウサギを狩って食べていましたなんて言ったら、殺されるかもしれない……。


「そんなんじゃ動物使役は出来ないわよ。今日の1限なのに」

「動物の真似大事なんですか!?」

「動物と仲良くなろうとしたら、その動作を知るのはかなり重要よ。感情の機微だって、些細な動作で見分けないといけないんだから」

「た、確かに……私の考えが甘かったようです。精励恪勤の精神が足りませんでした……!」

「そこまで重く捉えられても困るけどね?」


 分かってはいたが、私はまだまだ未熟。

 そのことを今アリスに教えられた……だが、成長するために学園に通うことにしたのだから、それは当然のこと!

 むしろ授業が始まる前にそのことに気づけて良かったくらいだ。


「気合が入りました! 全力で動物をモフモフしに行きましょう!」

「真面目な態度に見せかけて、割と欲望丸出しだわ」


 こうして友によって勉学の在り方を教わった私は、より一層の心持で初めての授業に挑むのだった。

 待っていろ、動物たち……!!!!!





「フッギャーブワンブワンンモオオオケッコー!!!!!!」


 ……大変に困ったことになった。

 カオスを具現化したような、そして混乱を形にしたようなこの声の正体が何か分かるだろうか。

 ちなみに私は分かりたくないのだが……。


 正解は──私を恐れて暴れまくる動物たちの声である。

 様々な声が混ざり合って、大変騒がしいことになっていた。


「ど、どうしたと言うのですか私のお友達たち! 何を恐れているのです!」


 動物使役の担当教師、丸眼鏡が特徴的な老婆セオドシアは私が入室したと同時に逃げ惑い暴れ始めた動物たちをなだめるのに必死だった。

 生徒たちは部屋の隅に避難し、私は呆然とその光景を眺めるしか出来ない。

 どうして……どうしてこんなことに……。


『動物はゼノビアの整えた見た目とか関係ないから、素の戦闘力を恐れているんだろうね……』


 そ、そんなぁ……。


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