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20.いったい誰ビアなのか、見当もつかない


 くっ、やっぱりアリスの前だとセピアなんてかすんで見える!

 考えてみれば、長年あの可愛いアリスと一緒に行動してきたアスクの可愛さへの基準は、かなり高いレベルにあるのかもしれない。


 そうじゃなくてもアスクは絶世の美少年。

 長く険しい可愛いロードを歩き始めたばかりのヨチヨチな私と、生来美しく可愛くかっこいい彼・彼女らとでは天と地の差があるわけで、素人がいきなりミノタウロスに挑むような無謀さだったか……。

 

「すいません中途半端な可愛さの癖に自信を持ってしまって」

「そんなことで謝られても困るぞ……」

「体調の方はどうですか? 足の方、もう痛くないですかね?」

「ああ、もう完全に治ったよ。さすが魔法学園だよな。普通、ここまで早く良くならない」


 アスクは自分の足をさすりながら、傷一つない艶やかな肌を眺め感心している。

 私としては、むしろその男子とは思えないほど美しいそのおみ足に感心してしまうのだが……。

 これでは私の生傷だらけの足の立つ瀬がない。


 しかし、簡単な傷とはいえ、確かにここまで綺麗に治せるのは賞賛すべきことだ。

 それほど、南方で求められるレベルが高かったとも言えるが。


「ホイップ先生は元々南方戦線にいたようですよ。戦場ではあれくらいの怪我はかすり傷みたいなものですから、彼女からすればこれくらいはちょちょいのちょいと言ったところでしょう」

「なるほどな……ってなんで戦線を知ってる風な口振りなんだよ! 箱入りお嬢様の言動じゃないんだが!」

「あっ! いや、その、ええっと……し、執事のアーノルドが南方の負傷兵でして、色々教えて貰ったんです!」

「……ああ、なんだ、そういうことか。南方は超激戦だったって話だから、お前、その執事のこと大切にしないと駄目だぞ」

「はい、勿論」


 い、家の設定を作り込んでいたおかげで、何とか誤魔化すことができた!

 良かったぁ! アーノルドを作り出しておいて!


『まさか役に立つなんて……』


 まあ、アーノルドに負傷兵なんて設定は考えてなかったんだがな。

 今まで脳内で想像されていた優しい老紳士風なアーノルドが、一気に顔に傷を負った風格のある逞しい執事に染め上げられていく。

 ああ……元のアーノルドよ、さらば。


 それにしても、思春期で反発しがちなアスクだが、戦士に対しては一定の尊敬が見受けられる。

 それは大変喜ばしいことなのだが、父に反抗しているというアリスの情報とは食い違って感じられた。

 騎士の父に反抗するなら、その騎士という身分も、騎士が活躍する戦場も否定しそうなものだが、そうではないらしい。


 つまり、父そのものに対して微妙な感情を持っているのであって、むしろ騎士には憧れがあり、だからこそ騎士らしくない父とそりが合わない……そんなところだろうか。

 私としては、アスターは実に騎士らしい騎士だと思っているのだが、確かに戦場でも「彼は騎士に不相応な性格をしている」という声は聴いた。

 なので、息子であるアスクがそう思っていてもおかしくはないだろう。


 ならば、いっそその憧れを利用して彼とお近づきになれないだろうか?

 恐らくこの学園で戦場に最も詳しいのは私である。

 そして共通の趣味は友好の第一歩だ。

 つまり、私こそがアスクと最も仲良くなれる存在のはず!


「アスクくんは戦場に興味がおありですか? 私もアーノルドに色々と聞かされて育ったので、結構話せるほうですよ」

「へえー、そりゃあ女子にしては珍しいな……」


 アーノルド(妄想)を釣り針にしてみると、ものの見事にアスクを引っかけることに成功した!

 男子はああいうのが好きなのだな……。


「アリスから聞きましたが、アスクくんはアスター様の子息なんですよね、やはり御父上のような騎士になりたいのです?」

「いや、親父は駄目だ。全然騎士らしくねぇし、強そうにも見えねぇ」

「そうですかねぇ……」


 やはりアスターには厳しい態度をとるアスク。

 この誤解を解けるとと良いのだが……。


「俺はあいつじゃなくて……その更に上を目指してるんだ」

「更に上ですか」

「そう、戦場に鮮血の華を無数に咲かせるという鬼。一振りで千の魔物を消し飛ばすという剣聖。ただ肩が触れ合うだけで骨を折り肉を削ぐという人間兵器……俺の憧れはあの人だ」

「誰ですかその化物は!?」


 いくら英雄だらけの戦場と言えども、そこまでの化物はさすがに私も聞いたことがない。

 まさか私の知らない強者がまだあそこにはいたと言うのか……!

 くっ、いったい何者だ!


『いやー、何ビアなんだろうなぁ』


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