第5話 心の心情とは
「――――それではホームルームを終えます。笛吹君、佐々木原さんにプリントを届けて下さい」
「わかりました」
「それではまた明日」
「「「さようなら」」」
帰りのホームルームが終わり、悠人は光輝と心に話しかけた。
「じゃあ萌夏の家に行くか!」
「おう!」
「うん」
「それじゃあ心。萌夏の家まで案内してくれ」
「うん。でも驚かないでね」
「驚く? 萌夏の家ってそんな変なとこにあんのか?」
「まあ、今まで萌夏の家に行ったこともないし、萌夏の自分の家のこと話さないしな」
「まあ早く行けばいいんじゃね」
「それもそうだな、じゃあ2人とも行こう!」
「「待ちなさい」」
乗り気な2人と乗り気じゃない1人の3人で教室を出ようとしたところ、後ろから2つの声が響いた。
1つは担任の佐藤先生。2つ目は萌夏の左の席(4位の席)に座るSクラスの委員長(ただし月に一度クラス替えが行われるため、委員は担任により指名される)池森花楓だ。
「えっと? どうしましたか?」
「先に佐藤先生からどうぞ」
「ありがとう池森さん。でも私が用があるのは鈴木君だけなんだけどね」
「え? 俺?」
「ええあなたです鈴木君。今から職員室に来て下さい」
「え?どうしてですか?」
「あなたに国語をたたき込むためですよ。あと一点低かったら国語は追試、さらにAクラスへ後退するところだったのですから。毎月クラス替えとは言っても私のクラスは変動させたくないのですから」
「……マジか。どうしよう悠人」
「光輝。萌夏の家には心と2人で行ってくるから、お前は補習頑張れよ!」
「おい悠人! お前裏切ったな~!」
「……がんばれ(ボソッ)」
「聞こえてんぞ神城」
「……では行きましょうか鈴木君」
「……はい」
光輝は佐藤先生に連れられ職員室への片道切符の旅に向かったのだった。
「……またせたな池森。どうした」
佐藤先生の展開が濃すぎて忘れそうだったが、池森の話を聞かなければ。
「……花楓でいいわよ。それでさっき悪気はなかったのだけれど、あなたたちの話を聞いていたら、佐々木原さんのお宅に伺うと言っていたものだから、私も同伴してもいいかなと」
「(え?)」
「俺は別に構わないぞ」
「(え?)」
「心もいいよな?」
(え? 嫌だ。じゃなくて)「えっと、どうして?」
「私も佐々木原さんには仲良くしてもらってるからね。私も佐々木原さんに会いたいし。ご家族の方にもご挨拶くらい……」
「だめっ!!」
「え?」(ビクッ)
突如心が声を上げた。
「お、おい心!? 急にどうしたんだよ」
「あ……、ご、ごめんなさい。池森さんが行くのがダメなんじゃなくて、あまり大勢で行くのは悪いかなと思って」
「それはそうかもしれないけど」
「いえ、確かにそうね。いつも一緒にいるあなたたちと違って特に約束とかしないで伺うのは悪いわね。それじゃあ佐々木原さんには会えたら私がよろしく言ってたよって伝えてくれる?」
「あ、ああ分か……」
「うん、伝える。それと大声出してごめんなさい」
「大丈夫よ。それじゃあよろしくね。それじゃあまた明日」
「お、おう」
そう言って池森……花楓はそそくさと鞄を持って教室を出て行ってしまった。
「心、さっきはどうしたんだよ。池森さん困ってただろ」
「……」
「まさかとは思うが、俺と二人きりで行きたかったとか」
悠人がそう言うと、心は顔を赤く染め、早く行こうと先に教室を出て行ってしまった。
「あ、心、待てよ」
(……バカ)
そして悠人は心を追いかけて教室を後にした。
今日もありがとうございました。




