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第12話 決着

なんか話端折ってないのに端折ってるみたいになった……まあ時間なかったし仕方ないね。

「いっ、一体どういうことですか? 私はあなたなんか知りません! 忘れたわけじゃない初対面です! 私の全てを知っているかのようなことは言わないで下さい!」


 萌夏は苛立ちを覚えた。鳳凰(おおとり)の発言は明らかに偽りである。


「確かに私は人間関係は薄い。あまり人のことを覚えようとはしない。でも私の身近に、クラスに、あなたんかいなかった! 私は言いましたよね。すでに探し人は見つけたと言いましたよね。それなのにあなたは私に近づいてくる。だから、私に、馴れ馴れしく接しないで下さい!」


 そう言った。これで諦めてくれたら良かったが、どうやらそうもいかないようだ。


「はぁ? 戯れ言を。誰にものを言ってんのか分かってんのかお前! せっかくこっちが優しく接してやってんのに、お前なんか俺の言う通にしてればいいんだよ。お前のうちの会社が傾いてもいいのか?」

「なっ!?」


 どうやら猫を被っていたようだ。それも二重三重にも。


「パパに頼めばお前の会社なんか終わりだ。まったくお前が素直に私のモノになっていればよかったんだ」


 そして鳳凰は萌夏に飛び掛かる。そして萌夏をソファに押し倒し、上着を強引に脱がせ、腕を押さえる。


「な、何をするんですか! 離して下さい!」


 萌夏は恐怖を感じた。このままでは私は襲われ犯される。必死に抵抗したが、男の力は強すぎる。手を振りほどくことが出来ない。


「もう猫を被るのはやめだ。お前は俺のモノにする。そして俺の愛玩動物(ペット)にしてやる。お前は一生俺の愛玩動物(ペット)だよ! フフフ、ハハハハっ!」

「嫌だ! 助けて! 誰か助けて!」


 鳳凰はすかさず萌夏の口を塞いだ。

 

(苦しい……息が)


 どんどん鳳凰の手は服の内側に入り、鳳凰の息づかいは荒くなる。萌夏はもう無理だと半ば諦めようとしたとき、応接室の扉が開いた。


「……やはり近くにいて良かったよ」

「なっ!?」


 誰かの声がしたと思ったら、口を押さえる手が離れた。そして目だけを動かして応接室のドアの方を見るとそこには、鳳凰の父親の冷水さん、お父様がいた。冷水さんは顔を赤く染め、機嫌が悪そうだった。


「父さん! これは違うんです!」

「これの何が違うと言うんだ!! 佐々木原さんの娘さんを襲っているようにしか見えないが」

「うっ……」


 鳳凰は反論しようとしたが、すぐに押さえ込まれてしまった。まあ当たり前だろう! だから私は言ってやった。


「助けて下さい冷水さん! 私、この人に犯されるところでした!」

「な、何を言ってるんだ萌夏さん。僕達は……」

「お前は黙ってろ!」

「ひっ!」


 どうやら懲りた様子はない。それでいて父親は怖い。そんな負け犬のようなやつだった。

 そして鳳凰は父親にビンタされた。1度だけでなく何度も何度も。蜂にでも刺されたかのように両頬が膨れ上がり、地面に倒れ込む。


「……さてと、こいつは放っておいて下さい。佐々木原さん。萌夏さん。この度は大変ご迷惑、そして不快にさせてしまい大変申し訳ございません。最初お父様から声をかけられたとき、なぜか鳳凰(こいつ)が私だと聞かず。私もこいつの周りを全て記憶していたわけではないので、きっとそうなんだろうと思い、深く調べなかったのが原因です。しかもまさかこいつがこんなことをするとは……これも全て親である私の責任です。本当に申し訳ない」

「冷水さん。こうなってしまい萌夏は少し心に傷を負ってしまったでしょう。これを回復させるためには時間がかかる。悪いが暫くはささはらグループ(うちは)冷水グループ(おたく)との取引は中止させていただく。これは決定事項だ」

「……分かりました。それではすみませんが、我々はこれで」

「それでは」


 冷水さんは少し不服そうに頷き、そそくさと鳳凰を連れて帰っていった。


「すまなかったな」


 普段私に謝ったりしないお父様が私に頭を下げた。


「いえ、これも家のため、です」

「確かにそうだが、お前のことを心を考えずにこの話を進めた。だがまさか、彼がこんなことをするとは」

「確かに彼に私は犯されそうになった。私は彼を許すつもりはありません。そこはしっかり対応して下さいお父様」

「ああ。だが、さっきの様子を見るに彼らはまた萌夏の前に現れるかもしれない。だからこそそうならないように私も微力を尽くす。だからお前も気をつけてくれ」

「分かりましたお父様。私も気をつけたいと思います」

「うむ。そうだな。では帰るか」

「はい」


 そして久しぶりに父との距離が縮まったような気がした。

 そして今日の出来事は良くも悪くも萌夏の記憶に残る物となったのだった。

とりあえずありがとうございます。

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