第11話 対面
私転校しません宣言でクラス中の反発?を買った萌夏は今日父親と県内の某ホテルに足を運んでいた。
今日の朝にも萌夏は悠人に一緒に来てほしいとLINEを送ったが、外せない用事があると昨日のように断られた。残念だったが、仕方ない。萌夏は気持ちを入れ替え、父親に尋ねる。
「お父様。今日お会いする方はどのような方なのですか?」
「お前には伝えてなかったか。今日会うのは冷水グループの御曹司。冷水鳳凰君だ。歳はお前と同じだ」
「冷水鳳凰さんですね。しかしお父様。彼は……」
「皆まで言わずとも聞いた。だがこちらから声をかけた手前、断るのは礼を失する。しかしお前のことも理解している」
「でしたら私が探していた人は別にいたということを伝えてもいいですよね?」
「ああ構わん。だがあちらは自分自身がお前の探してる人だと主張するだろう。くれぐれも穏便にな」
「それはもちろん。承知しております」
萌夏は表面上は笑みを出しているものの、内面呆れていた。
私がなんと言おうと、彼に会うことには変わらない。しかし自分は話し上手というわけでもない。人よりは話せるかもしれないがそれだけだ。だから上手いこと言って早く話を切り上げることが出来るのか不安だった――――
――――1時間後。萌夏たちが待つ応接室のドアが開く。
「おまたせしました佐々木原さん」
「お待ちしておりました冷水さん」
応接室に入ってきたのは2人。1人は冷水グループ現会長、そして冷水鳳凰。
「……萌夏。私たちは少し話をしてくるから、お前はそちらの鳳凰君と2人で話をしなさい」
「わ、分かりましたお父様」
そして2人は応接室を出て行く。
部屋に残される形となった萌夏は恐る恐る冷水鳳凰に顔を向ける。
「え、えっと、冷水さん」
「鳳凰でいいよ萌夏」
「……でしたら鳳凰さんとお呼びさせていただきます」
「それじゃあ萌夏少し話そうか」
「ええ。そう……ね」
ずいぶん馴れ馴れしく笑ってる男ね。それにいきなり呼び捨てとは……。そう萌夏が考えていると、鳳凰は言った。
「しかし懐かしいね萌夏。あれから5年くらい経ってるかな。君はあの頃からずいぶん変わったよ。僕の声をちゃんと守ってくれてたんだね。嬉しいよ」
「えっ……と……失礼ですが私たち、初対面ですよね?」
「あれ? 忘れられてるのかな僕。僕達は小学生の時同じクラスだったじゃないか」
と。萌夏は5年前に会っているという鳳凰の話を信じることが出来なかった。
そして、萌夏は鳳凰のペースに呑み込まれる前に言うことにした。
「あの冷水さん!」
「ん? 何かな?」
「私が探していた人はあなたではありません! 先日、すでに出会いました! それに私はあなたとは初対面です! 嘘をつくのは止めて下さい!!」
そう言い切った後、しばしの沈黙が流れる。そして鳳凰が口を開く。
「何言ってるんですか? 忘れるなんてずいぶんひどいなぁ」
と。
どうやら鳳凰にはきな臭さを感じますね。




