第10話 対面前日
今日は短めです。
「分かりましたお父様! これで失礼します!」
そう言って萌夏はこちらに駆け寄ってきた。その頬には涙が流れていた。
「ど、どうした萌夏!? 何か怒号が聞こえてきたが……」
「じ、実は……」
そう言って萌夏は事を話した。
その内容はこうだ。その男は冷水グループのお坊ちゃんで、ささはらグループとも取引がある。そのため今回の会談には萌夏の心の蟠りを払拭すること以外にも、政略的な一面もあるって事だ。
「萌夏はささはらグループの駒でしかないって事かよ!」
「そこまでひどい扱いはされないと思うわ。でも明日会いに行かなければ失礼に値する。そう強く念押しされたわ」
「そんな……ひどい」
「大丈夫よ心。もう私の捜し人は身近にいた。ただ断るだけよ」
「それはそうかもしれないけど」
「悠人」
「何だ?」
「明日私と一緒に来てくれないかしら」
「それは? なぜだ?」
「私の探し人はこの人です。なのであなたではありません! って伝えるの」
「それは相手さんの不感を買わないか?」
「それは……そうかもしれないけど」
そこで昼休憩終了5分前の予鈴が鳴った。
「あっ、予鈴」
そこで花楓が立ち上がった。
「私、日直だから先に戻るね!」
「ああ、俺たちもすぐに行く」
そして花楓は階段に駆けていった。
「……でどうする?」
「いや、俺は行かない。いや、行けない。明日は大事な用事があるからな」
「そ、そうなんだ。でも悠人がいてくれた方が……」
「萌夏は……強くなったんだろ。俺がいなくなった後。だから今、友達思いで優しくなったんだろ! だったら俺がいなくても行けるだろ」
「……そうね。そうだったわね。私は強くなった。それを証明してやらないとね」
「そうだその意気だ!」
そうして光輝たちとも二言三言話してから、屋上を後にする。
その時心が悠人に何か言おうと口を開きかけていたが、それは誰にも見られることはなかった。
そうして5限。国語を所定の半分の時間で終え、LHRとなった。そこで萌夏は前に立ち、宣言した。
「私は転校しません!」
と。それにはクラスメイトだけでなく、佐藤先生も目を見張る宣言だった。
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