ラジオドラマ台本 『文学少女と放課後は』
下野「よお、巽。
今日も来てるんだ?」
巽 「シッ!
下野クン、図書館で大きな声を出さないでよっ」
下野「ああ、ごめんごめん。
で、何?
巽、何を読んでるんだよ?」
巽 「あ、ちょっと……」
下野「何々?
『ボクの肝臓を喰わせたい』……?」
……。
下野「な、なんかスゲー嫌なタイトルだな」
巽 「うるさいっ。
スゴく泣けるって評判なんだから」
下野「確かに。
喰われるにしろ喰わされるにしろ泣きそう」
巽 「うるさいなぁー。
で、下野クンは何しに来たのよ」
下野「いや、今日も巽が居るかなぁ……って」
巽 「なっ!?」
下野「それと、『ランチェスター戦略』モノをな」
……。
巽 「『ランチェスター』?」
下野「あ、女の子は、あんま知らないと思う」
巽 「って、ちょっと!
横に座るの?」
下野「いいじゃん。
なんて説明したらいいかな?
戦った時の予測というか法則というか」
……。
巽 「下野クン、戦うの?」
下野「何とだよ!?
それを基にした経営戦略本だよ」
巽 「へぇー……
難しい本、読むんだぁ」
下野「難しくはないよ、単純な法則。
それを基にどんな考え方があるか。
そーゆー感じの本かな」
……。
巽 「夢?」
下野「え?」
巽 「何か目標があるんだ?」
下野「別に。
ただ、なんとなくさ。
どんな道に進むかなんて無いよ。
でも、役には立つかなぁーって」
……。
巽 「偉いなぁ」
下野「へ?」
巽 「下野クンは偉いねぇー」
下野「何だよ」
巽 「アタシなんて、何の目標も無いよ」
下野「何が。
オレも、目標なんか無いって」
巽 「でも、将来のこと考えてるんでしょ?」
下野「ぼんやりとだよ」
巽 「それでも偉いよー。
アタシなんてぇー。
ああっ、もぉー」
……。
下野「なあ、巽」
巽 「アタシなんてー。
って、え、何?」
下野「この間も、巽とここで会ったじゃん?
図書館には毎日来てんの?」
巽 「え?
まあ、だいたい放課後は寄って帰る」
下野「ふーん。
充分、偉いと思うけどな」
巽 「アタシが?」
下野「うん。
スゲー、夢中になって読んでるだろ?」
巽 「あははははは、お恥ずかしい」
下野「いや、マジにうらやましい。
夢中になれるものがあるってさ」
巽 「そんなそんな」
下野「いや、マジで。
俺なんて、そーゆーのが無くてさ。
そのモヤモヤを、ごまかしてるだけだよ。
本を読んでる時の巽ってさ、──」
巽 「何?」
下野「なんか、──スゲェ良いぞ」
巽 「え……。
あ、ありがとう」
……。
下野「巽」
巽 「──何?」
下野「明日も……居る?」
……。
巽 「──うん」
1000文字って、難しいですよねぇ。
書き込むには足りないし、その中に自分の頭の中のイメージを収めようとしたら、何か説明的な文章が多くなって……。
「なら、いっそ会話のみにしてみよう!」って発想。
でも、会話のみって、物語っていうより時間の切り取りしかできないんですよね。
それなのに実際のラジオドラマだと逆に尺を取りそう。
挑戦は楽しめたけど、今回の企画には一番向いてないスタイルなのかも……。
セリフばかり並んでると単調になりそうで、合間に沈黙(……。)が入る構成をと考えて、「その沈黙も演出になるような展開を」と、欲張ってみたつもりです。
キュンっとするものを目指したけど、もっとメリハリのある終わり方の方が良かったのかなぁー。