8.リーズとの初パーティ
「そっち行ったぞリーズ!」
「任せて!『ペネトレイト』」
リーズの放ったアーツ『ペネトレイト』が、モンスターを貫く。
リーズは弓を使いながら、剣も扱う遠近両タイプのハイブリッドだった。
正確には、剣は自分が体で覚えているようで、一緒に戦っているうちにアーツとして覚えてしまった。
前作でずっと剣士をしていたというだけあって、体に動きが染みついているらしい。
俺にとって正気の沙汰じゃないので驚かされっぱなしだ。
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ギューテンタイガーを倒しました。
5,000の経験値を得ました。
ミリアのLvが1上がりました。
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お、またレベルが上がった。
ちなみにパーティでも経験値獲得量もそれぞれ違うので、それぞれ固有のシステムログとなる。
多分リーズはこいつを倒しても経験値50しか得られていないだろう。
取得経験値増加はかなり後半にならないと覚えられない派生アビリティだからだ。
「お疲れ様ミリアちゃん。弓って楽しー!」
「今のとこ百発百中だね」
弓はステータスの器用が低いと、当たらない。
別に腕前とかは関係なく、自動補正で当たってくれるんだが。
ただ、腕前が良いと自動補正を無視して急所を狙えたりするから、やっぱり差は出るんだけど。
例えば、ただ敵を狙って撃つだけなら、体のどこでも当たればダメージになるし。(ステータスで回避されなければ)
これもまぁ、ステータスに差があったら、見た目当たってても回避判定になったりするから厄介なんだけどね。
速度が高い敵は、これだから厄介なんだ。
確か、亜人の中でもエルフという種族は器用がS成長だったはずだから、速い敵にも当たるのはでかい。
先程の『ペネトレイト』は弓のアーツで、敵の防御力を無視してダメージを与えられる技だ。
ただ、一度使うとクールダウンが60秒と長く、使い勝手は悪い。
『スラッシュ』などはクールダウン5秒だからね。
他のアーツを使ってたら、MPが続く限りすぐに再使用できるのだ。
「えへへ、でもミリアちゃんすっごいね。出てくる敵全部一撃だし。天使って力の成長低かったと思うんだけどなぁ」
と言い首を傾げているリーズに苦笑しながら、気付けば頭の上に乗ってるクロを撫でる。
「あーもぅ!ミリアちゃん可愛い!」
「おぅっ!?」
現役女子高生に抱きしめられるなんて、俺の生涯に一片の悔いなしっ……!
ってアホなこと思ってる場合じゃなかった!
「は、離れて……!」
「あ!ご、ごめんね!?」
俺は、この見た目を利用したくはない。
心苦しいけど、過度なスキンシップはごめんこうむる。
「う、ううん。俺、人と触れ合うの苦手なんだ。ごめん」
そういう事にしておく。
だけど、なんでかリーズは瞳を潤ませている。
なんでだ?
「ミリアちゃんっ……!その見た目だもん、色々あったんだよね……!おねーさんが絶対、守ってあげるから!」
違ーう!!
そんな意味深な設定があるわけじゃないよ!
ただ俺が恥ずかしいという一点から、無い知恵絞って考えた事なんだよ!
それに、このゲームはリアルで会った場合、顔がほとんど同じだからすぐばれる。
サーバーの違いもあるし、最初から誘い合わせでもしないと、同じサーバーになる確率は……って、そういえばリーズは一人で始めたのかな?
女子高生なら、なんとなく皆と群れてパーティでやりそうなんだけど……(偏見)
まぁ、色々あるよな、気にしないでおこう。
これはゲームなんだ。
一人もくもくとプレイしたって良いじゃないか。
むしろ俺はそんな子を断然応援するね!
ボッチだって良いじゃないか!
そう思って、リーズを見つめる。
「な、なんかミリアちゃんに温かい眼差しを急に向けられた気がするんだけど?」
鋭い。
「そういえば、この付近にダンジョンが数個あったよね?」
なので、話を切り替える事にする。
「ミリアちゃん良く知ってるね。うん、そうだよ。初心者用のダンジョンの一つ、草原の平野、荒野の大地、あと死の砂漠の3つだね」
最後が一気に難易度高そう。
というか、名前が頭痛が痛いみたいな事になってないか。
明確な違いなんて知らんけど。
そこに、システムログとは別に、全体通知が流れる。
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おめでとうございます!
ガゼル・コックル・えせぷりーすと・シルバー・ギル・曼荼羅のパーティが
ダンジョン:草原の平野を最初にクリアしました!
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おおー、もうダンジョンクリア者が出たのか。
攻略組は早いねぇ。
「ガゼル組かー、あいつら前作と同じメンバーね。そのまま一緒に来たわけかー」
とリーズが呟いている。
俺は前作のクロスオンラインはユーザーから報告のあったバグ検証にばかり日々費やしていたから、中身は全く知らない。
ただ、アーツはほとんど体が覚えた気がする。
このゲーム、自動で使ってくれるアーツとしては10個までだけど、その行動を自分でなぞった場合でも、アーツとして発動になる。
だから、使い込めば使い込むほど、設定以上の強さを出せるようになっていたりする。
めんどくさい場合、全部セットアーツを使えばいいんだけどね。
そこら辺は、ライトプレイヤーとの分け方だ。
「リーズは前作もやり込んでたんだよね?俺に構わず、攻略してきても良いよ?」
俺は攻略をする気は全然ない。
なので、俺に付き合っていたら、攻略に燃えているであろうリーズの邪魔になってしまう。
「ふふ、ありがとミリアちゃん。子供なのに、人の心を考えられる良い子だね」
そう言って、俺の頭をクロと一緒に撫でる。
うぅ、気恥ずかしい。
年下の女子高生に頭を撫でられるとか……。
「でもだいじょーぶ。攻略も、ゲームを楽しむ一つの要素ってだけだよ。こうやって、友達になれた人と一緒に狩りをするのだって、楽しいよ?」
そう笑顔で言ってくれるリーズに、俺は不覚にもときめいてしまった。
おいおい、今年24の俺が推定16~18歳の子に……!
俺は頭に置かれた手を払うと、そっぽを向きながら答える。
「リーズがそれで良いなら、俺も良いけど」
そんな俺を見て、またリーズが抱きしめてきた。
「もぅっ!なんでそんなに可愛いのー!?」
「だから、抱きしめるなー!!」
「にゃー♪」
俺はまた叫ぶ事になったが、クロは機嫌が良さそうだった。
こうして俺達は、午前中はメインストーリーを一緒に進めつつ、ミッションをこなしていった。