27.現実世界へ
イベントが終了した後も、俺はワールドクロスオンラインの世界を楽しんでいた。
アウストロン大陸では相変わらずリーズ達が誘ってくるし、そうでなくても、あのイベント後は色んな人から誘われるようになった。
他の大陸に移動しても同じで、色んな人が見かけたらパーティに誘ってくる。
別に拘りもないので、誘われる度にほいほいとついていき、一緒にプレイしていたら、交友がどんどん広がって行った。
皆がギルド作ってというのでちょっと困っていたりする。
そんな風に、自由に毎日を過ごしてた今日。
イベントから一か月が経とうとしていたのだが、姉貴から久しぶりに連絡が入った。
レイ"ミリア、この所忙しくて、連絡ができなくてごめんなさい"
ミリア"忙しいのは分かってるから、大丈夫だよ。あのイベントを公開してから、更に新規登録者増えたんだろ?"
そう、あのイベントを一部ではなく、全て動画で公開したのだ。
その影響で、プレイヤーキャラクターをイベントに組み込む非常識運営と、良い意味でネタにされた。
更に、イベントを派生させる柔軟さもあいまって(リーズの居ない後半の部は、更にきつかっただろう。俺は終始敵だったからね)
話題を呼んだのだ。
今では新規プレイヤー数も増えていて、それに付随して仕事も増えているようだ。
そんな中、自由を満喫しているのが申し訳なく思うけど、どうしようもない。
レイ"ええ、まぁその忙しさもあったけど、違う忙しさで手一杯だったというか"
姉貴は何の話をしているんだ?
珍しくはっきりしない言い方をする姉貴だな。
レイ"ええとね……ミリア、いえ孝弘。貴方の改造が完了したわ"
……。
あれ、俺の聞き間違いかな?
今、俺の体を改造とかなんとか聞こえた気がするぞーう。
いくら姉貴が非常識な人でも、そんなことするわけないじゃないかHAHAHAHA。
ミリア"ごめん姉貴、俺の耳がおかしかったのか、今改造って聞こえた気がして"
レイ"安心しなさい、その耳は正常だから"
安心できる要素がねぇぇぇぇっ!!
ミリア"ちょ、まっ!俺の体になにしたの!?"
レイ"えっと、ちょっとした手術?それに、孝弘は元から体格が小さい方だったから……"
ちょっと待てちょっと待て。
もしかして俺、現実世界で去勢されちゃったの!?
ミリア"ままままままさか、おお俺の、だだ大事な、む、息子を、とととっととと……"
言葉が正確に言えない。
かつてない恐怖が俺を包みこんだ。
レイ"大丈夫よ、ちゃんと弟って公表したでしょ?"
あ、ああ、そうか。
確かに姉貴は、俺の事を弟って公表してたな。
少し落ち着きを取り戻せた。
レイ"ただ、現実世界も今のミリアみたいにしてみただけよ"
って落ち着けるかあぁぁぁっ!!
なに、俺を男の娘にでもするつもりなの姉貴!?
ミリア"何考えてんの姉貴!?それが弟にする事か!?"
レイ"だって、ログアウトできないの、そのせいなんだもの"
え?どゆこと?
レイ"孝弘を改造する前にね、メットを脱がせてみたんだけど……それで分かったのよ。このメットが、孝弘を認識していなかった"
は、い?
それってつまり……。
ミリア"要は、孝弘がミリアというキャラクターを、基本設定無視して作ってログインしたせいで、機械が孝弘を認識していないって事よ"
な、なんだってぇぇぇ!?
そん、な……それじゃこれは、俺の自業自得という事かよぉぉぉぉぉっ!
打ちひしがれる俺に、姉貴は続ける。
レイ"機械のメーカーに問い合わせてみたんだけど、そんなの想定外ですって回答でね。まぁ当たり前だけれど。だから、体格が違いすぎて機械が感知しないなら、現実の体をミリアに合わせるしかないじゃない?"
ミリア"それで、手術か……事情は分かったけど、せめてやる前に本人の了承とかさ……"
レイ"何よ、ずっとその世界に居るつもりなの?私は大切な弟を、そのままになんてしないからね。必ず戻して、仕事に参加させるんだから"
今良い話!良い話だったの!最後でそんなオチつけなくて良いの!!
レイ"言っておくけど、これからの仕事はバグの検証だけじゃないわよ?もう貴方は我が社のイメージキャラクターなの。ワールドクロスオンラインじゃなくて、我が社の。分かる?"
ちょ、ちょっと待って。
それってもしかして……!
レイ"色々提携会社にも私と付き合って行ってもらうわよ?社長にも許可貰ってるし、目が覚めたら忙しいわよ。写真もいっぱい撮る事になるし、一躍アイドルね孝弘"
ミリア"だから俺は男だと言ってるだるぉぉぉぉ!?"
レイ"弟だってちゃんと言ってるじゃない"
そうなんだけど、俺が言いたいのはそう言う事じゃなーい!!
レイ"で、その手術が丁度終わったから、連絡を入れたの。ちゃんと生きてて安心したわ"
なにしたの、ねぇなにしたの!?
俺の体、大丈夫なの、ねぇ!?
レイ"体もちっちゃくなったし、肌質も変えたし、顔はメイクでなんとでもできるし……あ、もちろんこれから美容にも気を付けてもらうし、お化粧もある程度はできるように覚えてもらうわよ?まぁ写真や表に出る時はその道のプロに頼んであるから安心しなさい。私の友達に居てね、言ったら是非やらせてって言ってくれたわ"
恐るべし姉貴の行動力。
普通、思ってもやらないよ。やれないよ。
というか弟を改造する姉とか言葉にしたら怖い。
ミリア"はぁ……もはや、なんも言えない……それで、いつ頃俺は戻れそうなの?"
レイ"え?もう戻れるんじゃない?今戻っても、麻酔受けてるから動けないだろうけど"
その言葉に、急いでログアウトのボタンを探す。
すると、灰色になっていたそのボタンが、通常の色になっているじゃないか……!!
帰れ、る……!
帰れるんだ……!!
俺はその事が嬉しくて、ついログアウトボタンを押しそうになって……
レイ"押したら、今は全身痛いかもしれないわよ?"
その言葉で我に返った。
ミリア"えっと、どれくらいで帰れるの?"
レイ"そうね、一週間は体に馴染ませる為に必要でしょう。それから少しリハビリね、筋肉をつけないとだから"
これは、現実世界に戻った後も、大変そうだ。
それから一週間、いつも通りワールドクロスオンラインの世界を楽しんだ後、姉貴から再度連絡が来た。
いよいよ、かな。
レイ"お待たせミリア、いえ孝弘。準備は万端だから……帰ってらっしゃい、現実へ"
ミリア"うん、ありがとう姉貴"
そう言って、俺はログアウトボタンをタップする。
この世界に入ってから、初めてのログアウト。
そういえば、皆にお別れ言えなかったな……なんて思いながら、俺は現実世界へと帰った。




