25.イベント開始
いよいよイベント開始時刻が迫る。
イベント会場には、まるで人がゴミのよ……ゲフンゲフン。
凄い人の数で賑わっていた。
「姉貴、これクロスオンラインに登録してた人のほとんどが居るんじゃ……」
土曜日という休日の今日、皆イベント開始時間前だと言うのに、凄い集まっていた。
色々と開始地点がばらけているみたいだ。
時計のように円を囲い、遠い位置に配置されているようで、その中心地に俺が行った街がある。
そして、イベントに参加しない人も、各サーバーの最初の街の泉で映像が見れるようになっている。
「ええ、多少は強化しているから、これくらいならまだ大丈夫。それに全員が全員、参加してるわけじゃないからね。このイベントも、午前の部と午後の部があるし、どちらかにしか参加できないから、午前の部は様子見の人も多いんじゃないかしら?」
あー、それは確かに賢い選択だと思う。
午前の部は、我慢できない人が参加って形だろう。
より効率よくポイントを集めたい人は、午後の部で稼ごうとするだろう。
公式サイトのお知らせには出ていなかった、姉貴が俺に言った言葉。
洗脳。
はぁ、洗脳っても、俺の意思はそのままあるわけで。
ただ、カラーコンタクトで目を赤くしている。
洗脳されてるって演出だ。
俺の普段の瞳の色は青色だし、公式サイトで俺の姿は公開されている。
翼も黒色に付け替え、まるで堕天使のような見た目になっていて、一目で『何か違う』と分かるようにされた。
「さ、それじゃそろそろ時間ね。始めるわよミリア。最初は私が扇動するけど、後は自由に暴れて良いからね」
「はぁ、こうなったら役になりきってやるよ。皆殺しにしてやるから覚悟しろっ……!」
「あはははっ!その意気よミリア!」
多くの人を見て若干興奮している俺は、少しハイテンションになりつつあった。
そんな俺を見て、アスモデウス(IN姉貴)は笑う。
さぁ、やりますか!
元クロスワールドの大陸。
今では魔王の大陸である。
その中心地にある廃墟の空に、二人の姿が現れる。
一人は悪魔の姿をしたアスモデウス。
そしてもう一人は腰に抱きかかえられ、意識の無いように見える少女。
ぐったりとしており、その白かった翼は、黒く塗り替えられていた。
その身を赤く染め上げた真紅の悪魔が、その透き通った声で全員に呼びかける。
「よくぞ集まった。お前達の挑戦、嬉しく思うぞ?我が直接貴様達を葬っても良いのだが、我に挑むに足る者であるかどうか、まずは見極めさせてもらう」
アスモデウスが指を鳴らした後、地響きと共にモンスターが廃墟の周りを埋め尽くす。
「な、なんだあの数っ……!?」
「うっそだろ……!?」
大地を埋め尽くさんとするモンスター。
プレイヤーの数も多いのだが、モンスターの数はそれを上回る。
「そうそう、単純に我が手下と戦うだけでは、お前達も興醒めという物だろう?こちらから素晴らしい催しを用意しておいた。受け取ってくれ」
アスモデウスが手を翳した瞬間、廃墟が爆発を上げる。
燃え盛るその地に、アスモデウスは手にしていた少女を放り投げる。
少女が空から落下していく姿を見て、悲鳴を上げるプレイヤー達。
しかし、半分くらい落下した瞬間、くるりと一回転をし、優雅に地面へと降り立つ。
その姿はまごう事なき天使。
その翼が黒く、瞳も赤く染まっていなければ、皆そう感じた事だろう。
両手には、マシンガンと爆弾を持っていた。
「くく、その女はこちらで洗脳させてもらった。攻撃をしても構わんぞ?我はそれも面白いからな!ははははっ!楽しんでくれ、我が宴を!」
そう言って、アスモデウス(IN姉貴)は姿を消す。
そして、アナウンスが流れる。
"皆さんは、ミリア(洗脳状態)の攻撃を避けつつ、モンスターを撃破してください。ただし、ミリア(洗脳状態)に攻撃を仕掛けたプレイヤーは、討伐ポイントにマイナス補正を受けますので、ご注意ください。それでは、イベントを開始致します"
そんな滅茶苦茶な内容が公表された。
「「「えええええぇぇぇっ!?」」」
プレイヤーの皆が驚いた声をあげるが、そりゃそうだろう。
モンスターを、味方(敵)の攻撃を受ける、もしくは避けながら倒せと言うのだから。
俺はその場から空へ滑空する。
当然、皆の視線が俺を追う。
そこへ俺は空から、グレネードランチャーを取り出して、一時の方向へ構えた。
「「「!!」」」
「ファイアー!!」
ドゴオオオオオオン!!
凄まじい爆音がする。
突然の俺からの攻撃だが、巻き込まれた人はそこまで多くない。
やるな、咄嗟に移動するなんて。
続いて、4時の方向へ向く。
「に、逃げろ皆!固まっていたらやられるぞっ!!」
誰かがそう声を上げたら、皆散開した。
うんうん、そうでなくちゃ。
俺はそれを見てグレネードランチャーをしまう。
取り出したるは、爆弾である。
今この位置、中心だから。
全方位へ向かって、乱れ撃ちならぬ、乱れ投げである。
ドゴーン!ドゴーン!ドゴーン!
と爆発が上がる。
「ぎゃぁぁぁぁー!!」
「滅茶苦茶だろ、あれー!?」
進めばモンスターが居て、更には俺の攻撃が飛んでくるのである。
正に阿鼻叫喚。
そんな中で、こんな声が上がる。
「ミリアちゃんには可哀想だけど、倒してしまう方が良いんじゃないか!?こんな状態だと、被害が尋常じゃなくなるぞ!?」
「テメェ、我らが天使を倒すとか良い度胸だな!?」
などと、仲間割れまで始まる始末。
うん、俺を倒せば被害は確かにかなり抑えられるだろう。
けど、知られていない、というかこの状況を想定してあえて言わなかったんだろうけど、死なないように姉貴から保護されている。
だからそれは、悪手なんだよな~。
ま、俺はこの殺戮パーティを楽しむとしよう。
遠慮なく、ポイポイと爆弾を投げていく。
「さ、殺戮の堕天使だ……!」
一人がそう呼ぶと、呼応するように皆が俺を不名誉なあだ名で呼び始める。
「撲〇天使……!」
おい、それ言っちゃダメな奴……!
ぴぴるなんとか言わないからな!
ある程度爆弾で間引きした後、走りまわって色んな人をつけ狙う事にした。
片手にナイフ(投合用)持って、もう片方にマシンガンを持って戦場を駆ける黒メイドならぬ、黒ロリである。
ちなみに、今回は危ないのでクロはアイテムボックスへ戻ってもらった。
「ぎゃぁぁぁ!!ミリアちゃんが来たぞーー!!」
「ぐはぁっ!!ミリアちゃんに殺されるなら本望ー!!」
等々、中にはアホな事を言って消えていく奴も居たけれど。
モンスターに集中したくても、俺が横やりを入れるせいで、まともに狩れないのだ。
とはいえ、俺に狙われていない場所はモンスターに集中できる。
俺を防ぐグループと、モンスターに集中するグループに分かれて交代するといった、その場でのコンビネーションがプレイヤー側にできつつある。
いいね、こういう即興のコンビネーション、嫌いじゃない!
指揮を執っている人物を早々に当たりを付け、その場まで駆ける。
俺に攻撃を仕掛けたらポイントがマイナスになるのだが、それを気にせずに攻撃を仕掛けてくるプレイヤーも中にはいる。
今回はポイントを諦めたのか、他の仲間の貢献に力を尽くす事にしたのか。
どれにしたって、色んな人が色んな考えをもって、ゲームを楽しんでいる。
それが俺は嬉しかった。
辿り着いた先には、俺も良く知っている人達が居た。
リーズ、プリハドール……それに、バリアにガンツ、モンドと……そして、『剣聖』ユリウスも。
「ミリアちゃん……!」
リーズが話しかけてくるが、今の俺は話すわけにはいかない。
だから、俺は武器をそちらへ向けるのを、答えとする。
「っ!!戦うしか、ないんだね……!」
そう辛そうな顔をして、こちらを見るリーズ。
いや、そんな事ないんだけど。
むしろ逃げてくれないかな。
そんな悲壮な顔されたら、こっちも辛くなるんですけど。
「リーズ、少し辺りを見ていたんだが、恐らくミリアくんを洗脳している敵はこの場に居ない。いるとしたら、アスモデウスだろう……なら、俺達にできる事は少ない」
「くっそー!ミリアちゃんを洗脳してるモンスターさえ分かれば、そいつを倒してミリアちゃんを味方につけれるかもしれねぇのにっ……!」
バリアが叫ぶ。
成程、そういった展開も面白いな。
姉貴、どうだろう?
そう思って姉貴に言おうとしたら、爆破された廃墟後に突如巨大なモンスターが降ってきた。
そして、アナウンスが流れる。
"今降臨したモンスターは、ミリアを洗脳しているモンスターです。そのモンスターを倒せれば、ミリアの洗脳は解け、プレイヤーの心強い味方となってくれるでしょう。しかし、そのモンスターの強さは他とは桁が違います。挑む場合、それ相応の覚悟をしてください。それでは、ご武運を"
運営のテコ入れである。
やってくれたな姉貴!
「「「おおおおおおっ!!」」」
否が応にも、プレイヤー達の士気が高まる。
目の前の皆も、笑った。
「ったく、この運営はやってくれるな!大好きだぜ!」
「ふふ、そうだね。皆!俺達が少しでも長く、ミリアくんを抑えておく!モンスターを頼む!!」
「「「任せろー!!!」」」
多くの人達が集う戦場で、大陸を越えて皆の意思が繋がる。
良いね、こういうの。




