22.周回
戦いを終えて、ダンジョンから出たら、凄い数の人に囲まれた。
どうやらシステムログを見て、集まってきたようだ。
俺は皆がガードしてくれたので、楽だったけど。
今回はちゃんとした6人でのパーティでクリアだ。
それに、あの戦いも少し経てば公式サイトに載るだろう。
……そうか載るのか。
あんなハイテンションな俺が、全ユーザーに知られちゃうのか。
いやぁぁぁぁぁっ!恥ずかしすぎるぅぅぅぅっ!!
いっそ俺にはモザイク掛けて姉貴ぃぃっ!!
今になって急に恥ずかしくなった俺は、顔を両手で覆って座り込んだ。
それがタイミングが良かったのか悪かったのか、そんな俺を見て皆質問を抑えて、離れていってくれた。
あれ、もしかして俺、やっちゃった?
皆に質問攻めを受けて、泣いた少女とか思われちゃった?
「ミリアちゃん、もう大丈夫だから。ほら、お姉さんと一緒に落ち着けるとこ行こう?」
「ああ、街まで俺達も護衛するからな!」
「当然っス!戦いの時は勇ましくてカッコイイミリアちゃんも、普段はこんなにか弱くて……くぅ~!庇護欲をそそるっスー!!」
ち、違う、違うんだ!別に質問攻めにされてるのが嫌とかじゃなくて!
いや嫌なんだけど!シャレでもなくて!
慌ててる俺がおかしかったのが、プリハドールが笑いだした。
「あははは!分かっていますわミリアちゃん。どうせ他の事を考えていたんでしょう?」
「だろうねー!ミリアちゃんって、目の前の事を放置して、色々考えてるし」
なんと、この短い付き合いで俺の事を理解している、だと!?
この二人の洞察力、侮りがたし……。
「提案なんだが、このダンジョンを少し周回しないか?」
周りに人が少なくなったタイミングで、バリアがそう言ってきた。
「レッドドラゴンは流石にレアボスだから、そう何度も会う事はないだろうし、通常のボス泥も、ここのダンジョンのはかなり強いんだ。装備をここで整えてから、次のダンジョンに行くのが良いと思うんだよ」
「う、うーん……私はそれ賛成なんだけど……」
リーズが困ったように返事をする。
多分というか、間違いなく俺の事を気にしているのだろう。
俺は、攻略を重視しているわけじゃないから。
適当に楽しむのは好きだけど、ガチ勢というわけでもない。
が、この人達はいわゆるガチ勢なのだろう。
「別に良いよ?さっきのレッドドラゴンでドロップアイテム貰っちゃったし、そのお返しもかねて付き合うよ」
その俺の言葉に、5人が笑顔になった。
そんなに嬉しいんかい。
ちなみに、レッドドラゴンのドロップは正しく宝物だった。
ダイヤモンドやオパールと言った、輝く宝石の数々。
おまえは鳥かと突っ込みたくなったが。
売れば数百万リルになるような宝石の数々を、もちろん皆で分けようとした。
したんだけど……。
「それはミリアちゃんが受け取ってくれ。もしかしたら、ギルドを建てるかもしれないんだろ?なら、リルが大量に必要になるし、足しにしてくれ」
と言われ、皆もうんうんと頷いたのだ。
というか今回は受け取ってから、こっそり皆にプレゼントした。
そしたら、同じものにリルのおまけつきで返ってきたので、諦めた。
それも示し合わせたように全員である。
こいつら……。
という経緯もあったので、皆の装備集めに付き合うかと思ったのだ。
どうせ、道中も楽だし。
……しかし、俺はガチ勢を舐めていた。
まさか、ここまで何回、いや何十……何百回も周るとは。
ま、俺もそういうの苦じゃないけどね。
ちなみに、レアボスはそれから一度も出会えなかった。
やっぱり、遭遇率は凄まじく低いようだ。
皆の装備も整い、ホクホクで今日も別れた。
俺はというと、その後お店に寄って食材をありあまる資金で買い集め、その日の夜は料理を色々と作る事で費やした。
現実世界では作れなかった色々な料理が、俺の手で作れる感動。
時間があったらアプリゲームに没頭、そうでない場合は仕事してるような俺は、そういう時間が全然取れなかった。
だけど今は違う。
仕事しながらゲームして時間があるのだ。
仕事しながら、は違うかな?
こんなに自由な時間、今まで無かった。
だから俺は、この時を楽しんでいた。
そんな折、姉貴からフレンドチャットが届いた。
レイ"ミリア、今どこ?"
ミリア"姉貴か、宿の個室だよ"
レイ"コルグルスの民宿満腹邸ね?少し待ってて"
流石姉貴、俺の短縮した言葉を全部一瞬でひも解くとは。
少ししたら、紫色のゲートが目の前に現れる。
そうして、見目麗しい女性が出てきた。
「これで普通に話せるわねミリア」
「も、もしかして姉貴か!?」
赤髪の燃えるような瞳の色をした、出るところは出て、引き締まる所は引き締まっている、ボンッキュッボンの女性が!?
「そうよ、魔王の四天王の一人だけどねこれ」
ってうぉい!?
……ああ、今度のイベント用か。
「今度のイベントの敵って、姉貴が動かすの?」
「そんなわけないでしょ。それに、このキャラクターはまだ顔見せだけ。イベントで戦うのはこのキャラクターが操るモンスターよ。というか、このキャラクターをサービス開始からすぐに倒せるユーザーは居ないわよ。例え最初からデュラハンやらレッドドラゴンまで倒してくれてる、どこかの酔狂な天使の見た目をした悪魔さんでもねぇ」
ぐふぅ、俺の精神に凄まじいダメージを与えてくる姉貴。
orzという形にうなだれる俺を、笑う姉貴。
くそぅ、俺も本意じゃないというのに!
「申し訳ございませんでしたぁっ!!」
そういって土下座で謝る俺。
せっかく姉貴が俺を庇ってくれたのに、動画第二弾を更に俺が提供してしまったのだから。
「ふふ、謝らなくて良いわよ。それに今回の戦いは、ミリアだけの力で勝てたわけじゃない。それを誰が見ても分かる戦いだったわ。でもその中でも、やはりミリアの腕前は評価されているけれどね。ステータスに頼った回避じゃないのが誰の目からも明らかだったし」
そう、ステータスが高い回避なら、そもそも動かなくても良い。
システム上で回避となるからだ。
だが、俺は油断した時に尻尾に当たっている。
ステータスでの回避ではないと、皆がそこで気付くだろう。
「色々な戦闘スタイルに合わせるミリアの戦い方、皆の目指すスタイルの一つになったはずよ。まぁ、言う程簡単じゃないけれどね」
「そうか?覚えるだけだし、誰でもできるよ」
「はぁ、まぁ良いわ。それでミリア、明日なんだけど、他の大陸にも顔を出してもらうわよ。まだアウストロン大陸以外、顔見せしてないでしょ?」
そういえば、そうだ。
ずっとアウストロン大陸に居たな。
「イベントの前に、皆に手でも降ってあげなさい、空から」
それなんの意味があるの!?
「さて、それじゃ今日ここに来た本当の理由をしましょうか」
そう言って、テーブルに座る姉貴こと、名前見るとアスモデウスとなっている。
おい、七つの大罪の大悪魔じゃねぇか。
そんなもん四天王にするな姉貴!!
それだと七天王になっちまうぞ!?
「ほらミリア、料理早くー」
「姉貴が食べんの!?というかそのキャラでログインしてるの!?」
「ええ、そうよ?肌の色とか髪の色とか長さとかは変えたけど、基本の体格とかそのままよ?」
……恐るべし、姉貴のグラマラスボディ。
美人だとは知ってたけど、ここまで違和感がないとは。
コスプレした外人さんで、すっげぇレベル高い人を画像で見かけた事があるけど、それ以上だよ。
「というか姉貴、アスモデウスにするなら、もう四天王じゃなくて七天王にしたら?」
なんとなくそう言ったのだが。
「あら、それも良いわね。ちょっと命令してくるわ」
そう言って、アスモデウスの姿をした姉貴が消えた。
……ごめん皆、俺の不用意な一言で、仕事増やした。
そうして、姉貴が良い笑顔で戻ってきた。
「皆凄いやる気出してたわよ。本当はそうしたかったけど、私が四天王って言ったから、言い出せなかったんだって。やぁねぇ」
……もう何も言うまい。
その後、俺は姉貴と一緒に久しぶりの家族の食事を楽しんでから、寝た。
姉貴は流石にログアウトすると思ったんだけど……
「今日はこのままここで寝るわ。どうせ現実世界の体も寝てるのと変わらないし。私の部屋は誰も入れないからね」
セキュリティ万全で来たのね。
というか仕事場じゃなく、別室でログインしてきたのか……仕事用のキャラクターで。
常識の通用しない姉貴に驚かされながら、今日は暖かい夜を迎えられた気がする。
おやすみ、姉貴。




