16.初イベントについて
レイ"というわけでね、ミリア達の戦い、公式サイトでアップさせて貰うからね"
そう姉貴に言われた。
理由は分かる。
俺の為を想っての行動だという事も。
レイ"周りに居た子達が、前作のトッププレイヤー集団の仲間で良かったわ。これで、ミリアが特別に攻撃力が高いとは思われないはずよ"
俺は、成長値が他の人よりも凄く高い。
その上、取得経験値上昇効果で、レベルが上がるのも凄く速い。
今回それも相まって、なんとか倒す事が出来たのだが……全体に知られるシステムが、仇となった形だ。
ミリア"うん、それは分かったよ。俺の為を想ってしてくれたんだろ?分かってるよ姉貴"
レイ"ミリア……"
そう、あのお知らせだけでは、俺がインチキをしているんじゃないかって言うユーザーが出る可能性がある。
何せ、俺はこのゲームの責任者の弟って公表されたんだ。
運営から特別なプレイ方法を許されてると思う人も出るだろう。
まぁ、結果的にあながち間違ってはいないんだけどね……能力値が他の人よりもかなり高くなるし、アーツ、スキル、アビリティ全て初期値とはいえ覚えているのだから。
それを意図的に行ったわけじゃないとしても、こんな事を説明するわけにもいかないし……。
レイ"でもねミリア。貴女の腕を、分かる人は分かるわよ"
ミリア"俺の、腕?"
どういう事だろう?特別な事は何もしていないけど。
レイ"あのね、クロスアーツは確かに超強力なアーツだけど、その発動条件の厳しさ故の威力なの。狙って放つには、それはもう余程練習をした人達の集まりでないと、まず無理な程よ"
そう、か?敵の動きを把握して、アーツの発動タイミングを合わせるだけだろ?
そんな難しい事じゃないと思うけど……。
レイ"ふふ、まぁミリアに言っても理解してもらえないだろうから、この話はもう良いわ。それより、3日後の全世界を巻き込んだイベントの話よ"
少し納得が行かないまま、話を進められてしまった。
まぁ、姉貴が取るに足らない事って断定したなら、気にしなくて良いだろう。
というか、今聞き逃せない単語が出たような。全世界?
ミリア"ちょっと待って。サーバー1つに全ユーザー集めたら負荷が凄い事になるから、クロスオンラインでは1つのサーバーにしてたのを、分けたんだろ?"
そう、増え続けるユーザーに、サーバーがついに限界を迎えたのだ。
負荷により通信ラグが時々発生し、ダメージや挙動におかしな部分が出始める事になった。
サーバーを増強しても増強しても、それが追いつかなくなった。
だから、今作のワールドクロスオンラインでは、同程度のサーバーを最初から複数契約を結んだのだ。
レイ"その点は問題ないわ。そのクロスオンラインの世界への引継ぎの締め切りが2日後なのは知ってるわよね?その世界に繋げるのよ"
ミリア"なっ!?あのサーバー、解約しないのか!?"
サーバー契約には、維持費が凄く掛かるのだ。
遊ばせておくサーバーなんて、勿体ないだけだ。
レイ"ええ、後々の事だけれど、全サーバーのユーザーが集まれる大陸に設定するつもりよ。サーバー増強には時間が掛かるけれど、その為の期間は、ワールドクロスオンラインの他のサーバーが稼いでくれるもの"
ミリア"は、はは……"
姉貴の考えに度肝を抜かれた。
まさか、前作の世界すら、そのままワールドクロスオンラインに利用するなんて。
そんな使い方、普通考えもつかないよ。
流石姉貴だ。
そんな話を聞いたら俺もワクワクせざるを得ない。
レイ"今回のイベントは、その大陸を使っての魔王の部下である、四天王の一人の襲撃によって洗脳された、ミリアを救えというイベントよ"
ふむふむ、魔王とはどの大陸にも属していない、浮遊大陸の一つを治める者だ。
クロスオンラインの大陸を、その魔王の大陸として利用するのか。
って、ちょっと待って?なんか今、俺が洗脳されたとか言わなかった?
ミリア"姉貴、そのミリアって、もしかしなくても……"
レイ"貴女に決まってるじゃない"
ですよねぇっ!知ってた!!
このゲームは、同じ名前の使用が不可なのだ。
それは、例えこの世界に元から存在するNPCキャラクターの名前であっても。
だから、ミリアというキャラクターネームを俺が作った為、ミリアという名前で他の人は作れなくなる。
まぁ、ミリア1とかミリア2とかは可能だけど。
俺はそういうの苦手なので、数字を付けたりはあんまりしないけど。
登録が遅れて、使いたい名前がすでに使われていた時なんかは、ローマ字でつけたりはするけどね。
話が逸れた。
ミリア"イベントに参加するのは、分かった。だけど、洗脳ってどういう事だよ"
レイ"要は、ミリアは全ユーザーをボコボコにしたら良いのよ"
ミリア"したら良いのよ、じゃねぇよ!?弟に全ユーザーのヘイトを受けろとか正気の沙汰じゃねぇよ!?"
全ユーザーからタコ殴りとか、いかに俺のステータスが高くても耐えられるわけがない。
そんなん死ぬわ。
レイ"大丈夫よ。貴女は操られているだけ。だから、このイベントの趣旨は、暴れまわるミリアの攻撃を防ぎながら、四天王の一人が送り込んできた魔物をどれだけ倒せるか、を競うイベントなの。ポイント加算形式で、ランキングもあるわよ。で、ミリアに攻撃を仕掛けてダメージを与えたら、そのポイントがマイナスされるの。ね、楽しそうでしょ?"
悪魔かこの姉は。
俺の最初に浮かんだ心情はそれだった。
ミリア"面白いかどうかはともかく、俺が相手どれる数なんて高が知れてるぞ"
そう、いかに強くても、凄まじい数のユーザーを全て相手どるなんて事、俺には出来ない。
レイ"もちろん、ミリアには専用のアイテムを使ってもらうわ。例えば、投げつけたら爆発して体力の50%を固定で奪うあたったらヤヴァイボールとか"
そのネーミングセンス!!
姉貴が無茶振りで急遽作らせた感が満載ですね!!
レイ"ほら、ミリアは見た目天使だから、空を飛んでても不思議じゃないでしょ?これを空中から投げまくるとか楽しそうじゃない?クロちゃんにも手伝ってもらってさ"
悪魔かこの姉は(再
空の上から2発受けたら死ぬ爆弾を投げまくってくる天使とか、天使の見た目をした魔王じゃねぇか。
頭の上に黒猫乗っけてるおまけつきだけど。
レイ"ミリアにはお守りとして、このイベント期間中だけ、致死ダメージを受けてもHPが1残る、これで安心のお守りと、HPが1%以下になったら全回復する、みなぎーるXを999個、減ったら自動的に補充するように持たせるから安心してね"
だからネーミングセンスぅっ!!(再
確かアイテム類の管理は橘さんだったな。
ごめんよ橘さん……姉貴、頭は良いのにこういうセンスは致命的だから……!
泣きながら作らされた橘さんの後ろ姿を浮かべ、心の中で手を合わせる。
戻れたら、橘さんの大好きなとんこつラーメン奢りますね……。
レイ"何か質問はあるミリア?"
姉貴が聞いてくるけど、まぁイベントの概要は大体わかった。
俺が敵対するってこういう事かとも。
ミリア"特にないけど、当日はどうしたら良いの姉貴"
レイ"ワープポイントを出現させるから、それをくぐってくれたら良いわ"
ミリア"了解。今日は俺寝る事にするから、もう良い?色々あって疲れた"
レイ"ええ、分かったわ。ゆっくり休んでミリア、いえ孝弘。貴方の現実世界の体は、ちゃんと管理するから安心して"
その言葉で思い出した!
ミリア"そうだ姉貴!その事だけど……"
レイ"それじゃーねー!"
そう言ってフレンドチャットを切る姉貴。
こらぁ!!言いたい事はこれからだぞー!!
はぁ、仕方ない……初心者用お料理セットなるものを購入しておいたので、それを取り出す。
満腹度なるものがこの世界にもあって、空腹になると与えるダメージが半減してしまうのだ。
それを満たすために、料理は必ず食べる必要がある。
安いパンでも一応膨れるのだが、良い料理は攻撃力上昇などのバフ効果があったりと、侮れない。
またこの世界では、料理も覚える事ができる。
それも、現実世界のような料理がたくさんだ。
ただ、時間は同じようにはかからない。
現実世界でなら、〇分煮込んで、というのを数秒に短縮されるようになっている。
だから待ち時間なしで料理できるのだ。
レシピ用紙を一つ取り出して確認する。
なになに……食材は卵と米と醤油を消費します?
ふむ、あったかいご飯の上を、スプーンで少しだけ押して穴を作ると。
で、別の容器に卵を割って、醤油を加えてかき混ぜる。
よくかき混ぜたら、ご飯の穴をあけた部分にかけて、ご飯全体を満遍なく混ぜる。
米全体が黄色くなったら出来上がり……ってこれ卵掛けご飯じゃねぇーか!!
こんなん料理と言わねぇよ!!
……醤油の味が、卵掛けご飯専用の味がして、とても美味しかった。
でも、いくら初心者用料理セットだからって卵掛けご飯はないだろ!!
ああ、よく見たら何枚か、レシピと言って良いのか分からないけど、種類があった。
目玉焼きや卵焼き等だ。
そんなん普段栄養補助食品生活の俺でもレシピ見ずに作れるわ!!
そう思ったのだが、意外と卵焼きは難易度が高かった。
とくに、ふっくらとした卵焼きには中々ならず……俺は初心者用料理セットを見直す事になった。
何度か調理と呼んで良いのか分からないが、作っていたら、料理のレベルが1上がった。
これから、美味しい料理を食べる為にも、少しづつ練習しておこうかなって思った。




