14.初ボス戦
それから俺達は、死の砂漠と呼ばれるダンジョンを進んでいった。
俺はタンクと呼ばれる役割をする事にした。
敵の攻撃を、全て引き受ける役割だ。
この役割をする人は、攻撃力を捨て、防御力に特化するのが一般的だ。
目の前に敵が居るので、それに引かないクソ度胸が必要だったりする。
ほら、目の前にゾンビが居たら悲鳴を上げちゃう子には無理というか。
「『挑発』っと」
目に映る全ての敵に、アーツ『挑発』を掛ける。
敵は俺の方に集中して攻撃を仕掛けてくるようになった。
俺はその場から動かず、なすがままだ。
「ミリアちゃんが、骸骨達に囲まれてタコ殴りにされてるよプリハドール……」
「え、ええ。それも異様ですが、そんな中で微動だにせず、こちらに攻撃しろって合図をしてくるミリアちゃんもまた、異様ですわね……」
俺が攻撃しなくなったのにはもちろん訳があって。
通常なら、パーティ全員誰が敵を倒しても経験値が入る。
だが、俺のレベルが高すぎる為、途中から俺が倒すと経験値が入らなくなったのだ。
こうなると、俺が倒してしまうと、二人にも入らなくなる。
なので、倒すのは二人に任せる事にして、敵の引付のみ行う事にした。
「おーい、リーズにプリハドール。流石にずっと骸骨を目の前で見続けるのは気持ち悪いんだけど……」
「「!!」」
その言葉にハッとした二人が、武器を構えて急いで殲滅に入る。
道中で多少レベルアップをしたからか、敵を倒すスピードは速くなっていた。
それに、二人とも戦い慣れている。
自動補正に頼らず、自分の腕で戦っているのが良く見ると分かるのだ。
そうして、ついにボスの居る部屋の前にたどり着いた。
「いよいよ、だね。ミリアちゃんのおかげで、全然苦戦しなかったけど」
「ですわね。こんなに頼りがいのあるタンク、初めてですわ。それを行っているのが、頼れるガタイの良い殿方ではなくて、こんなに可愛らしい女の子なのが衝撃ですけれど……」
もはや俺は男だと突っ込む気も起きない。
まぁ、自業自得だからね……。
「プリハドール、準備は良い?ミリアちゃんは、言うまでもないか」
リーズが俺達に笑いかける。
適度な緊張感を感じて、今からボスに挑むというワクワク感が、全身を震わせる。
「それじゃ、行こう」
重苦しい扉を開け、中に入る。
そこには、鎧を纏った騎士のようで、馬に乗っていた。
けれど、本来あるべきところに頭が無く、腕に頭を持っていた。
「デュラハン!?こんな最初に出てくるボスじゃないよ!?」
そう、デュラハンと言えば、前作のクロスオンラインでも、かなり後半のボスだったはず。
それに、こいつは俺が見ても赤いネームプレート。
これはヤバイかもしれない。
「一定確率で起こる、レアボスにあたったっぽいね。こいつ、俺が見ても赤い。本気で行かないと負けるよ二人とも」
俺の言葉に、リーズとプリハドールは真剣な表情に変わる。
そこへ、デュラハンは馬を走らせ突撃してきた!
「速いっ!二人は距離をとって!遠距離からダメージを稼いで!俺がヘイトを稼ぐ!」
「「了解!!」」
「デュラハン、お前の相手は俺だ!『挑発』!」
アーツを発動させ、ターゲットを俺に固定させる。
するとデュラハンは、手に持った頭を投げて俺にぶつけてきた。
「いったぁ!?そんなんありか!?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
デュラハンの攻撃により、ミリアの『挑発』の効果が切れました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こいつ、デバフ解除まで!?
なら、避けタンクするしかないかっ!?
「皆!次の『挑発』まで後40秒かかる!それまでなんとか避けてくれ!」
そう大声で叫び、伝える。
デュラハンはそんな俺達をあざ笑うかのように、後ろで攻撃を仕掛けようとしていた二人に突進していく。
「このっ!『影縫い』!」
リーズが敵を拘束するアーツである『影縫い』を発動させる。
あれは3秒間、敵を動けなくするアーツなのだが……
『オオオオオオッ――!!』
デュラハンには効果が無いようで、止まらずにリーズ目掛けて突進している。
リーズも走りながら弓で攻撃を仕掛けるが、デュラハンを止めるには至らない。
「この!止まりなさい!『レイ』!」
プリハドールが放つスキルに合わせ、俺もスキルを発動させる。
先程の『影縫い』に合わせなかったのは、恐らく効かないと思ったからだ。
「『ヒール』」
「「『ヒール』!?」」
二人が驚いているが、何もおかしい事じゃない。
デュラハンの属性は不死。
『レイ』は光属性のスキル、そして『ヒール』も回復という違いはあれど、光属性のスキルだ。
これらは、チェインするのさ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
プリハドールはスキル『レイ』を発動しました。
ミリアのスキル『ヒール』の敵対象への発動を確認。
チェイン『スターライト』を発動しました。
デュラハンに154,900のダメージを与えました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ダメージは与えたが、全然堪えていないように見える。
馬が前足で土を蹴っている。
これは、また突撃してくるな。
それも多分、俺の方向へ。
なら、その力、利用してやるよ。
「二人とも、俺が『スラッシュ』を放ったら、重ねて!」
そう言って、デュラハンの方へと駆ける。
「『分身』!!」
パーティ人数の足りない3人を、『分身』を使いサポートさせる事にする。
両端に生まれた分身体には目もくれず、デュラハンは俺の方へと駆けてきた。
右手に持ったランスで、俺を突き刺すつもりなんだろう。
良いぜ、こいよ!
『シ――ネ――!!』
そう言葉を発して、俺にランスが突き刺さる。
いっつぅ……!だけど、俺のHPを削り切るには、足らなかったみたいだな!
「この威力、お返しだ!『カウンタースラッシュ』!!」
『カウンタースラッシュ』は待ち『アーツ』だ。
『スラッシュ』と同じ『アーツ』として扱われるが、攻撃を受けた1秒以内であれば、受けたダメージを上乗せして『スラッシュ』が放てる。
俺のアーツに分身体である3人と、リーズにプリハドールも合わせてくれた!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミリアはアーツ『カウンタースラッシュ』を発動しました。
分身体A~C、リーズ、プリハドールの同『アーツ』の発動を確認。
『カウンタースラッシュ』は昇華し『サウザンドカウンタースラッシュ』を発動しました。
デュラハンに13,849,512のダメージを与えました。
デュラハンを倒しました。
6,459,000の経験値を得ました。
ミリアのLvが15上がりました。
おめでとうございます!
ミリア・リーズ・プリハドールのパーティが
ダンジョン:死の砂漠 (レアボス)を最初にクリアしました!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ぶっは!!
すんごいレベル上がったよ。
流石経験値100倍。
リーズとプリハドールも、結構レベル上がったんじゃないかな。
そう思って二人を見たら、信じられないって表情をしていた。
「す、凄い……まさかデュラハンを倒せちゃうなんて……」
「『分身』による、クロスアーツ昇華での圧倒的なまでの火力の増強、更に敵の攻撃力をカウンターで上乗せするなんて……言葉で言うのは簡単ですが、それを行うのは至難の業ですわ……ミリアちゃん、貴女は本当に凄いプレイヤーなのですね……」
二人が驚きと同時に、なんか憧れを含んだ視線というか……を向けてくるので、耐えられなくなった俺は、宝箱を見つけたので話題を振る事にする。
「ほら二人とも、宝箱あるよ。開けてきたら?」
その言葉に、二人は顔を見合わせた。
「ふふ、私達はこの経験値だけでお腹一杯だよ。これ以上を望んだら、バチがあたっちゃう」
「ですわね。その宝箱は、ミリアちゃんが貰ってくださいませ」
そう二人が言ってくれる。
ホントに良い人と出会えたなって思う。
ここで俺が遠慮しても、二人は受け取らないだろう。
だから、宝箱を開ける事にした。
ちょっとドキドキしながら、大きな宝箱を開ける。
三人で中を覗き込んでみると、そこには弓が入っていた。
手には取らず、詳しく見て見る。
破滅の弓(ユニーク武器)
攻撃力 +55,000
器用 +5,000
攻撃時MPを100消費する。
アビリティ
貫通Lv8
つっよ!未強化状態でこれとか、恐ろしく強い。
んー、これは受け取れないな。
「リーズ、俺と握手しよ?」
「え?ど、どどどどうしたの急に、ミリアちゃん!?」
「良いから良いから」
「わ、わわ!?」
無理やりリーズと握手をして、その手首を掴む。
そして、弓に触れさせる。
「あっ!?ちょっと、ミリアちゃん!?」
ユニーク武器は、トレードやプレゼントが出来ない。
最初に所持した人の専用武器となる。
だから、無理やりリーズに触れさせた。
「こ、こんな凄い武器っ……!?ど、どうしてミリアちゃん……」
「最初に言ったけど、俺は攻略を楽しもうってつもりはなくて。だから、リーズにそれはあげるよ。その、俺が男だと知っても、変わらずに接してくれた二人へのお礼というか……まぁ受け取ってよ」
そう横を向いて話す俺に、感極まったのか、目に涙を浮かべてリーズが言った。
「もう、ユニーク武器じゃ渡せもしないじゃない……!本当に、ありがとうミリアちゃん!私、この武器大切にするね!」
「ふふ、名前は物騒ですけれどね?」
「それは言わないでプリハドール!」
「あはは!」
二人が仲良く話しているのを見ていると、俺も心が和んだ。
そうして、俺達はダンジョンから出た。
出たタイミングで姉貴からチャットが届いたので、二人に伝える。
「お姉さんから?そっか、それじゃ私達は一旦ログアウトするね。そろそろ洗濯物取り込んじゃわないと……」
「私もそろそろ一旦戻りますわ。またですわリーズ、ミリアちゃん」
二人に別れを告げて、俺はゆっくり会話できる宿へと足を運んだ。
そこでまた衝撃的な話を受けるとは、思ってなかったよ。




