13.パーティ戦
「これで終わりっ!『スネークショット』」
リーズが弓のアーツである、追尾する矢『スネークショット』を発動させる。
それを見て、コンマ1秒遅れて俺も『スネークショット』を発動させる。
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リーズはアーツ『スネークショット』を発動しました。
ミリアの同『アーツ』の発動を確認。
『スネークショット』は昇華し『スネークツイスターショット』を発動しました。
マッスルキャットに34,600のダメージを与えました。
マッスルキャットを倒しました。
15,000の経験値を得ました。
ミリアのLvが1上がりました。
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名前通りのイカツイ姿をした巨大な猫?を倒した。
経験値も少し多いな。
またレベルが上がったし、後でSPの振り方考えないと。
「それにしても、ミリアちゃんは凄いね。私やプリハドールにアーツを絶対に合わせてくれるし」
そう言いながら、近寄ってくるリーズ。
プリハドールもそれに倣い、近寄ってきた。
「本当に。こんなに確実に合わせてくれる方なんて、そうそう居ませんわよ?」
「だよねだよね。ずっと組んでるパーティだって、発動が遅くて単発が重なっちゃったりするし、難しいもん」
そういうものか。
俺はバグの検証で、人よりずっと戦闘回数が多いと自負している。
なんせ、朝から晩までずっと戦ってたんだから。
人の動きで、どのアーツを発動するのかも、大体分かるし。
ま、この動きならこれらのアーツを発動させるはず、という消去法という奴だ。
「まぁ、姉貴に付き合わされてずっとゲームしてたから……」
という事にしている。
嘘は言っていない。
「お姉さん、このゲームの運営・開発の責任者なんだよね。それに、私このゲームじゃなくて、テレビで見た事あるよ」
「ええ、私もですわ。まぁでも、それとは関係なく、ミリアちゃんのその熟練度は大したものですわね」
「ホントホント。そんなに上手に動ける人、前作でもほとんど居なかったよ?」
二人が俺を手放しで褒めてくれる。
二人は、姉貴を知っても、俺に姉貴の影を見ない。
それが少し、心地よかった。
俺が男だと知っても、変わらずに接してくれる。
パーティも組んでくれた。
俺はその事が嬉しかった。
「それに、ミリアちゃんはアーツだけでなく、スキルも使えますのね。私の魔法にまでチェインしてくれるものだから、私ワクワクしてしまいましてよ?」
「それそれ!プリハドールのスキル、『レイ』にミリアちゃんが『レイ』をチェインさせて、『サンシャイン』になってたよね!」
そう、このゲームではアーツの昇華、クロスアーツの他に、スキルの合成、チェインが存在する。
これは同じスキルでタイミングが合えば発動というわけではなく、特定のスキルの組み合わせで発動する。
だから、チェインと称される。
これは、スキル同士だけでなく、スキルとアーツでもチェインを行える。
簡単な物なら、『スラッシュ』と『ファイア』でチェインして『フレイムブレイド』になるとかだ。
「私達の動きを常に見て、それに合わせて戦ってくれる。ミリアちゃんはオールラウンダーですのね。それも、超上級プレイヤーと言っても過言ではない動き方ですわ」
それは褒めすぎだ。
確かに俺は人より戦ってるとはいえ、実際のパーティ戦を経験してきたわけじゃない。
まぁ、お世辞だろうから、ありがたく受け取っておこう。
「ありがと。ついでだし、どこかのダンジョンクリアしておく?俺は攻略そこまで重視してないけど、ダンジョン攻略したら装備とか手に入るよね?」
ダンジョンのボスドロップには、強力な物も多い。
このゲームでは鍛冶で装備のレベルを強化する事もできるので、強化段階次第では、レア装備より強くできたりなんかもするが。
ただ、鍛冶スキルを持っていないと、成功率が低すぎるし、ある程度まで強化段階が進むと、失敗したらレベルが下がるおまけつきだ。
なので、生産職の方にリルを支払って、お任せするやり方が一般的だ。
そういう店を構えている人が居るからね。
鍛冶も強化段階が進むと凄いリルとるけどね……。
錬金術でステータスアップアイテムを偶々作れた人が、オークションに掛けたりするのだが、それがまたべらぼうに高くなるので、リルはいくらあっても困らない。(ステータスアップアイテムにレシピは存在せず、運だと言われている)
錬金術って、そう言う意味では凄く一攫千金できたりするから面白い。
こういう強化アイテムを集めて、レベル低いのに滅茶苦茶強いキャラクターを創る事もできるのだ。
ステータスアップアイテムを使っての転生は、そのアップ分はそのまま引き継ぐし、無駄にならない。
やり込み要素が多すぎるのも、このゲームの特徴だ。
「そうね、多少狩りもしてレベル上がったし、どうせなら死の砂漠に行ってみる?まだ誰もクリアしてないわよね?」
「そうですわね、無理でも構いませんし、挑戦してみましょうか!」
二人がヤル気なので、俺も頷いて死の砂漠のダンジョン入口までついていく事にした。
そして、入口にたどり着いて二人が言った。
「これは逃げましょ」
「逃げるしかありませんわね」
なんでやねん。
さっきまでのやる気はどうしたんだ二人とも。
じとーっとした目で二人を見る。
「そ、そんな目で見ないでよぅミリアちゃん。だって、敵のネームプレートが全部真っ赤なの!私達よりはるかに強いのよぅ……」
「え、ええ。それに私達はパーティ人数が半分ですわ。敵はこちらの人数が少ないからと弱くはなりませんし……」
まぁそれはそうなんだけど……俺から見たこいつらは全員青色だし、時折こっちを見てびくついてる気さえする。
多分楽勝で行けると思うけど……俺がそれをしたら、パワーレベリング(強い人がレベルの低い人を一気に強くする事)になってしまうしな。
もちろんそういうのが楽で良いって人もいるけど……この二人は、違うだろう。
「それじゃ、引き返そっか」
なので、そう言う事にした。
だけどその言葉に、二人は微笑んで言った。
「ミリアちゃん、多分ミリアちゃんは、このダンジョンの敵、余裕なんだよね?」
「え?」
その言葉に驚いていると、プリハドールが続けた。
「私達は敵の強さを感じて、少し震えがきていますの。けれど、ミリアちゃんはそんな感じが全くしない。どころか、今も余裕そうに見えますの。だから、きっとミリアちゃんにとって、このダンジョンの敵は、敵ではないのでしょうと思ったのですわ」
そういう、事か。
VRMMOの世界とは言え、実際に強さによって威圧感や、恐怖だって味わうんだ。
現実世界の五感を、全て味わえる。
それがこの世界だったんだ。
俺はその事を失念していた。
「……うん。多分レベル差があるせいかな。俺取得経験値増加のアビリティがあるから」
「凄い!ミリアちゃんランダムアビリティでそれが貰えたんだ!良いなぁ、それ結構後ろの方にある派生アビリティだもんなぁ」
そうリーズが羨ましそうに言うが、俺は実は全部覚えているとか口が裂けても言えないなこれは。
「そっかぁ……なら私達もミリアちゃんに離されないように、レベル上げしないとだねプリハドール!」
「ええ、そうですわね。全滅時の心配はないのですから、やりますかリーズ!」
「うん!」
あれ?帰るんじゃないの?
「ミリアちゃん、もし私達が死んじゃったら、後お願いして良い?」
「全滅時の経験値ダウンとステータス一時ダウンが痛いですので、私達がもし死んでしまったら、撤退して欲しいですの」
そう二人が笑って言うので、俺も笑って言った。
「了解。でも俺が居るから、二人をみすみす死なせたりしないよ」
そう笑顔で伝えた。
「やだっ、ミリアちゃん男前っ!」
「惚れてしまいますわよミリアちゃん!」
と言ってダブルで抱きしめられた。
「ぐぇっ!だ、だから、俺は男なんだぞ!?」
そう必死で抗議したのだが。
「今は女の子だもーん」
「ええ、それにこんなに可愛らしいのなら、男でもオーケーですわ!むしろそっちの方がポイント高いですわ!」
二人の抱きしめる力が強化される。
ポイントって何!?
それ集めたら何か貰えるんですか!?
俺の頭の上のクロが、眠そうににゃ~と鳴いているのが、やけに耳に残った。
クロ、見てないで助けて欲しいんだけど……無理ですよね、猫だもの。




