11.フレンドと友達
レイ"ミリア、今大丈夫?"
店から離れ、リーズとプリハドールと一緒に外へ向かっている最中に、姉貴からフレンドチャットが届いた。
ミリア"あー、今知り合いと一緒に行動してるんだけど……"
友達、と言っても良いのか分からないので、知り合いと伝える事にした。
なんせ、俺は嘘の塊だからな。
リアルは24の男だし、そもそもログアウトも出来ないから、仮に仲良くなって会おうってなっても、俺は絶対に会えないわけで。
まぁ会おうとかそういうのはマナー違反ではあるんだけど、男同士だったり女同士だったら、割と黙認される。
レイ"そうなの?ちょっとこれからの事に関わる大事な話だから、どうしようかしらね"
姉貴が俺の交友を考えて悩んでくれてるけど、そんな事で悩まなくたって良いんだ。
俺には友達は居ない。
全部、単なる知り合いだよ。
皆、俺を見てくれはしない、もう慣れた。
俺の後ろに姉貴を見たり、今回だって俺じゃなく、ミリアを見ているに過ぎない。
このログインがいつまで続くのか分からないが、元に戻れたら、俺はこのアカウントは消すつもりだ。
嘘で固まったこのアカウントで知り合えた人達との繋がりなんて、空しいだけだ。
リーズやプリハドールが良い人なんだって事は、この短い間でも分かる。
でもきっと、現実世界の俺を見たら引くだろうしな。
ミリア"大丈夫、俺に姉貴以上に優先するものなんてないよ。ちょっと待ってて"
レイ"あ、ちょっとミリア!?"
フレンドチャットを一時的に切り、リーズとプリハドールに話しかける。
「二人ともごめん。俺ちょっと用事ができた」
「えー、そうなんだ……残念。そうだミリアちゃん、もし良かったらなんだけど、フレンドになってくれないかなぁ……?そしたら、ログインした時にまたパーティ組めるし……」
「それなら、私もお願いしたいですわ!こんないたいけな女の子を、放っておけませんもの!」
二人が俺を心配して言ってくれるのは分かる。
だけど、俺とフレンドになるという事は、俺のログイン状況がずっと分かるという事。
俺は、ログアウトできない。
だから、ログインした時に俺はずっとオンライン状態という事が分かってしまう。
それは、マズイ。
いやこの見た目的な年齢なら、おかしくはないかもしれないけど……学校行ってないの?とか聞かれたら、答えられなくなる。
だから、葛藤の末、断る事にした。
「その、ごめん……。二人の事が嫌いなわけじゃないんだけど……フレンドは作れないんだ。本当にごめん……」
申し訳ない気持ちで一杯になりながらも、そう伝える。
でも二人は顔を見合わせて、笑って言ってくれた。
「ミリアちゃん、何か事情があるんだよね?分かってるから。あ、もちろん何があったとかは分からないけどね!でも、その辛そうな表情を見て、何も想わないなら友達失格だよ」
「ええ。このプリハドール、システム上のフレンドにはなれなくても、ミリアちゃんとはもう友達ですわ。見かけたら、パーティに誘うくらいは良いのでしょう?」
そう笑顔で言ってくれる二人に、目頭が熱くなるのを感じる。
現実世界で、こんな事を言ってくれる奴が居ただろうか。
願わくば、本当の俺として、出会いたかった。
まぁ、本当の俺なら出会えなかっただろうけど。
「ありがとう。もちろんだよ。リーズ、プリハドール、またね」
そう言って、俺は転送の巻物を使う。
ログアウトしたフリだ。
そうしてアークスの復活ポイントに転送され、色んな人の好奇の視線を感じながらも、街を出て誰も居ない場所を見つける。
木を背もたれにして、座りこみ、姉貴にフレンドチャットを送る。
ミリア"お待たせ姉貴。もう良いよ"
レイ"良かったの?折角良い人達と出会えたんでしょ?"
恐らく、姉貴は見ていたんだろうけど。
でも、これ以上姉貴に心配を掛けたくはない。
ミリア"良いんだよ。それより、大事な話って何?"
姉貴がこういう事を言う場合、本当にとんでもない事である場合が多い。
他の人が言う大事な事、の数倍は大事な話なのだから。
レイ"3日後のイベントの話に繋がるんだけどね。ミリア、貴女の容姿がすでに話題になってて、アウストロンのユーザー増加数が凄い事になってるのよ"
なん、だと……!?
もしかして、リーズやプリハドールが言ってた掲示板の事か!?
レイ"それでね、ミリアという存在を、アウストロンだけに固定させると、このままだとアウストロンのサーバーがパンクしちゃう事が懸念されるの。だって、今日は水曜日の平日なの。夕方から夜になれば、仕事終わりの人達とか、更にユーザーが増える。そうなれば、掲示板を見て情報を集めたユーザーが、どこを選ぶか……分かるでしょ?"
俺の見た目を気に入って、俺が居る場所を選ぶって事か。
なんてこったい……。
レイ"ミリアの見た目は、孝弘の妄想全開なだけあって、凄い可愛いわ。現実感のない美しさと言っても良い。今でもアイドルの誰かだろうとか憶測が飛び交ってる"
ミリア"いや、だってこんな事になるとか思わなかったし……ホントごめん姉貴……"
申し訳ない気持ちで一杯だ。
レイ"ふふ、謝ることは無いわ。むしろ、それで良い集客効果が生まれてるもの!むしろGJよミリア!"
姉貴、ポジティヴすぎだろ……!
レイ"それでね、最初に戻るけれど、それだとアウストロンに人が集中しすぎてしまうの。だからね、ミリアをワールドクロスオンラインの、イメージキャラクターにする事にしたの"
……はい?
今、なんて?
レイ"我が社公認のキャラクターとする事で、ミリアは全サーバーを移動する事ができるようにするの!日替わりで行われるサーバー毎のイベントも、ミリアはログアウトできないんだし、参加できるでしょ?"
ミリア"ちょ、まっ!姉貴は俺を過労死させる気か!?"
レイ"ギャラも弾むから!"
ミリア"そういう問題じゃねぇ!!っていうか、全部のイベントに参加とか嫌だよ!!"
レイ"その点も大丈夫。イメージキャラクターと言っても、NPCではなく、現実の人ですってちゃんと伝えるから"
そっか、それなら安心……って安心できるかぁ!!
ミリア"ちょ、待って姉貴!それだと、現実世界でこの見た目の子が居るって全世界に嘘をつくのか!?"
レイ"その点は安心して?ちゃんと居るように孝弘を改造……おっと、これはトップシークレットだったわ。それじゃ、また後で連絡するわ"
そう言ってフレンドチャットを切る姉貴。
ちょっと待てぇ!トップシークレットを思わず漏らしたよね!?
絶対計画的に漏らしたよね!姉貴がそんなヘマするわけないの知ってんだからな!!
現実世界の俺の体に、何をする気なのぉぉおおおおおお!?
ちょ、今すぐログアウトさせてぇええええええ!!
俺の心の叫びは、誰にも届くことは無かった。




