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63 彼女と喫茶店

何時も有難うございます。投稿遅れてすみませんでした。

駅に着いた俺たちは、丁度よく現れた電車に駆け足気味で乗り込んだ。


今日のメインの目的地である海は、ここから五駅ほど離れた場所の近くにある。


現在の時刻は九時少し前で、一般的なデートの時間なんて知ったこっちゃないが、恐らく早い方だと思う。


学生は夏休みという学校から解放される大型連休のおかげで、朝早くから電車を利用する人は見た感じ少ない。


席が空いていたので、日向と並んで座る。


ピトッと肩がくっつく距離に日向は居て、左の方から彼女の良い匂いがする。


夏だからくっついたら暑いだろうに、そんなのお構いなしといった感じ。


降りる駅までは何十分か時間がかかるので、日向と話したり、触れ合いながら電車に揺られていく。


彼女は俺の左手を取って、ふにふにと触ったり、指と指を絡めて所謂恋人つなぎをしてみたりと、公衆の前で堂々とイチャついてくれる。


可愛らしくて愛いらしい彼女とデートをしている上に、自分から甘えてくれるという、この世の幸せを収束したかのような状況についつい顔が綻んでしまう。


ここで少し問題なのが、日向という存在は息をしているだけでも、偉大な芸術家が丹精込めて描いた名画の切り取りのようなので、写ルンだよを使うタイミングがイマイチわからない。


写ルンだよに回数制限が無ければ、俺は常にシャッターを切っているだろう。


まあ、電車の中なので写真は撮らないけど、目にしっかりと焼き付けておくことにする。


ところで、朝早くからデートをするなんて、そんなに泳ぐのかと疑問に思う人もいると思います。


安心してください、海に行く前に寄る場所があります。


その場所とは、今向かっている海の近くにあるワッフルで有名な喫茶店だ。


数量限定で、一日百食しか販売されないらしい。


日向はこういうお店の情報をどこから仕入れてくるのだろうか。


噂に寄ると、最近日向は佐藤とよくお話をしているらしい。


というか朝の授業前にも、俺に会いに来てくれるついでに佐藤と笑いあってるのを見るから、噂でも無く事実だろう。


何について話をしているのかを聞いても、顔を赤らめて「内緒です」と教えてくれない。


まあ、俺は余裕のある人間なので。


日向の笑顔は、俺の専売特許だったのに、とか思いませんよ。


でも佐藤のおかげで、日向との恋愛が楽しいものになっているという事実は否めないから、少しくらいは妥協してあげてもいいかな。


「葵くん、もうすぐ着きそうですね。降りる準備をしましょうか」


「うん、そうだね」


ささっと荷物を持って、忘れ物が無いか確認。


無さそうなので、ぷしゅーという音が鳴ってから、二人手を繋いで降りる。


喫茶店まで歩いていくのだが、普段の生活からは感じられない海の匂いが、歩けば歩くほど強くなっていくので、日向と海へデートしに来ているんだと感じさせられて、非常に高揚する。


そんな俺の感想は置いといて、数分くらいしか歩いていないのに、もう喫茶店まで着いてしまった。


外から見た感じ、ある程度のお客さんはいるみたいだけど、まだワッフルは売り切れていなさそうだ。


まだ数ヶ月しか働いていないけど、これでも喫茶店でアルバイトをしている身だ。


なかなかに鍛えられた喫茶店スカウターが俺の中にはある。と思っている。


お店の外見と内装と、店員さんの接客、提供されるワッフルまで、よくわからない謎の視点で評価していく。


今のところ店員さんの接客までで、オール満点だ。


喫茶店で接客することはあれど、接客される機会はあまりなかったので、対応が色々と参考になった。


日向とメニューを一緒に見て、ワッフルにバニラアイスが乗ったものを注文する。


彼女と談笑しながら待っていると、すぐに例の物はやって来た。


「お待たせしました、ワッフルバニラアイス添えです」


「わあ…!」


「おお…!」


綺麗に盛り付けられたお皿には、程よい焼き加減のワッフルと、バニラアイスに生クリーム、チョコソースが掛けてあって、アイスの上には可愛くミントが乗っている。


甘くて良い香りが目の前から漂ってきて、今すぐに食べたい。


だけど、やっておかなければならないことがある。


「日向、写真撮ろうよ」


「良いですね、葵くん、こっち向いてください」


「うん、こんな感じ?」


「うんうん、格好良いです…」


日向が嬉しそうに頷いていたので、ワッフルさんとうまく写れたのかな?


今度は俺のに写ってもらおうか。


「日向もこっち向いて?」


「は、恥ずかしいですね」


ぱちっとボタンを押して、日向を写真に収める。


ああ、早く印刷されたものを見たいな。


「では、食べましょう!」


「そうだね、いただきます」


「いただきますっ」


ナイフとフォークを駆使して、ワッフルを切り分け口に運ぶ。


「うんうん、美味しいね」


「うん、美味しいですっ」


ワッフルが美味しいことに微笑む日向は、俺のスカウターが余裕で壊れるくらいに可愛かった。





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