62 彼女が買ったものとは?
いつも有難うございます。
あれから数日後。
現在の時刻は、七時ちょうど。
平日はともかく、休日や大型の休みの場合は、九時くらいまで寝ているのが俺だった。
だが、日向と出会ってからは違う。
日向の作る料理により体に健康がもたらされ、この健康的な状態を維持しようと思うようになった。
その結果、なんとなく早起きを始めたのだが、今回は理由がある。
理由とは、皆さんならお分かりだと思うけど、海へデートしに行く日だからだ。
どうせ海へ入るというのに、朝から何度もお風呂に入り頭や体を洗った。
ここで勘違いして貰いたくないのが、俺は日向とデートする時以外も、日向に格好良いと思ってもらえるよう、日々自分で作れる最大限の格好良さで日向に臨んでいるということだ。
日向は初めて会った日より、目に見えて可愛く、そして綺麗になっている。
手入れバッチリの髪や、瑞々しい肌、完璧なプロポーション、日向に似合った可愛らしい服。
どれも維持するのは大変だろうに、俺のために頑張ってくれているのだ。
そんな状態で、好意を向けてくれるのだから彼氏冥利に尽きる。
という訳で、彼女が頑張ってくれているのに、俺が怠けるわけにはいかないのです。
夏らしく、海へ行くのに相応しい格好に着替えて、忘れ物が無いか何度も確認した鞄を持ち、家を出る。
海がある場所まで行くには、電車を経由しなければならないので、まずは駅に集合…というのが普通なのかもしれないけれど。
以前、日向とお出かけをした時のことを覚えているだろうか。
彼女は駅で男達に絡まれていた。
運が良く、絡まれるだけで済んだというものの、最悪な可能性だってあったのだ。
そんな可能性は、最初から潰しておかなければならない。
ということで、俺が日向のマンションまで迎えに行く事にしたのだ。
ちゃんと、格好良い状態で居られているだろうか。
そんなドキドキした感情を抱えながら、歩きなれた道を歩いていく。
歩くことだけに集中していたら、いつの間にか日向のマンションの近くまで来ていた。
意識を日向のマンションまで向けると、マンションの玄関前に、日向がいた。
可愛らしい白いワンピースに身を包み、ベージュ系の鞄を肩にかけ、レディースのサンダルを履いている。
何だか神秘的で、漫画や小説などに出てくる、人の少ない島に行ったら気さくに話しかけてくる儚げな少女みたいだ。何週間後くらいに急に居なくなるやつね。
そんな事は置いといて、日向がこちらに気付いて、嬉しそうに駆け寄ってきた。
本心かつ、言わねばならぬ言葉があるだろう?俺。
「おはよう、日向。服とってもお洒落で、可愛いよ」
「お、おは、ようございます…あ、葵くん。服も、葵くんも格好良いです…」
「あ、ありがとう。…よし、駅まで行こっか」
「…はい」
顔を赤くして、差し出した手を取る日向。
うんうん、可愛い。
手を繋ぎながら、駅まで他愛ない会話でもしようと口を開きかけると、日向が不思議な行動を取りだした。
俺の左腕に、彼女の右腕を絡ませて、空いている左手で四角い物体を持っている。
「葵くん、笑って笑って?」
「う、うん。こんな感じ?」
ぱち、と何かを押した音がして、持っているものがわかった。
こ、これは。
名前しか聞いた事なかったけど、所謂「写ルンだよ」じゃないか。
写ルンだよ、とはインスタントカメラのことである。
何か買っていると思ったら、これを買っていたのかな?
その場でどんな写真かは確認出来ないけど、カメラ屋さんとかに行くと、印刷して貰えるんだっけ。
味のある写真が撮れることで有名だけど、日向が写ったら一個の芸術になるんじゃないの?
「ふふ、驚きました?これを使って、思い出を残しましょう?」
笑顔でそう語りかけてくる日向。
肩にかけている鞄から、もう一個の写ルンだよを取り出し、「葵くんの分ですっ」と渡してきた。
なんて可愛いんだろ。
お礼を言ってそのカメラを受け取り、輝かしい笑顔を向けている日向を、ぱちり。
「な、なんで今撮るんですかっ」
「可愛かったからだよ」
「…うぅぅ」
可愛らしい日向を写真に収められた。さぞ盛れているに違いない。
楽しい会話をしながら、俺達は駅まで歩いて行った。
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