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59 彼女と夏休み初日

いつも有難うございます。

「えー、要はですね、夏休みも勉強を怠らず、鳴海高校の生徒としての自覚を持って、十分に青春をしてください、ということです。以上で、私の話を終わります」


「気を付け、礼」


校長先生の持論や偉人の名言を語られ、五時間くらいに思える二十分の話が終わった。


正直、話を真面目に聞いている人間は数少ないだろう。


この全校集会を終えれば学校という縛りから解放されるのだから、皆浮かれているはずだ。当然、俺もだけど。


進路指導や生徒指導の先生方の話も終わった後、皆いそいそと教室へ移動する。


最後に、担任の先生の話を聞いて荷物を持って校門を出る。




よし。




待望の、夏休みだ!





☆☆☆☆☆






「頂点から対辺へ垂線を引き、三平方の定理を用いれば余弦定理が証明できますね」


「なるほど」


「…少し休憩しましょうか」


「うん、そうしようか。…ってもうこんな時間か」


近くの時計に視線を向けると、今は五時三十六分らしい。


学校が終わり、日向と一緒に下校して俺の家までやって来た。


夏休みの初日なのだから、制服を脱いで家でごろごろしたいというのが普通なのだと思う。


というか、俺はずっとそうしてきた。


だが、うちの日向さんは一味違う。


俺の家に入ってゆっくりするのかと思えば、おもむろに鞄から宿題を取り出したのだ。


何事も無いかのように宿題を消化しだしたので、俺も焦った。


なにも初日から頑張らなくても良いじゃないかと言ったら「最初にこういうのを終わらせてしまえば、残りの休みは楽しく葵くんと過ごせるんですよ?私は葵くんと楽しい夏休みを送りたいのです」なんて言いよる。


語彙力が欠如するくらいに可愛い。


俺が日向の発言に悶えていると「葵くんも一緒にやりませんか?」と言ってくれたので、五時間ほど宿題をしていたのだ。


最初は一緒に宿題をしていたはずなのに、いつの間にやら日向先生に教えて頂いていた。


なんだろう、彼氏としての威厳的な物がない。


問題が分からなくて困っている彼女に、優しく教えてあげるというのは男の夢の一つだと思う。


それを実践する機会が現れる気がしない。


逆に教えてもらう立場になると、分かりやすくて助かるのだけど情けない気持ちでいっぱいになる。


俺の気持ちが顔に出ていたのだろうか、日向は俺の顔を見ると優しく後ろから抱きしめてくれた。


「どうしたんですか?葵くん。お勉強疲れちゃいましたか?」


「疲れたわけじゃないよ。ただ、日向に勉強を教えてもらってばっかりで、彼氏として情けないなって思ってさ」


「…そんなことを思っていたんですか?私としては、大好きな葵くんに勉強を教えてあげることが出来て、とても嬉しいですよ」


「でも、なんか申し訳なくて」


そんな事を言っていると、日向は俺の正面の方へ回って来て、彼女の綺麗な手で俺の両頬を包んだ。


そして鼻と鼻が当たるくらいまで近づいてきて、俺に言い聞かせるように、優しく話し出した。


「良いですか?葵くん。勉強が出来る、家事が出来る、お金がある、容姿が良い、どれもその人を表す一部でしかありません。これらのことで、その人の真価が決まるわけでもありません。私は、表面的なもので葵くんを好きになった訳じゃないんですよ?ちゃんと、優しくて勇敢な貴方を知って好きになったんです」


「…ありがとう」


「私は、表面的な物が人より優れているだけで、中身は空っぽ()()()んです。でも、葵くんは違います。葵くんは大きな夢があって、それを叶えるために頑張っているんです。こんな私より、葵くんの方がすごいんですよ」


「日向は、空っぽなんかじゃないよ!」


「そう言ってくださって、有難うございます。だから、言ったじゃないですか。空っぽ()()()って。葵くんと出会って、夢なんか無かった私に、夢が出来ました。なんだと思いますか?」


「…なんだろう。ごめん、分からない」


「正解は、葵くんと幸せになることです。意味を持って無かった私に、葵くんは意味を持たせてくれたんです。私にとって葵くんは、ヒーローなんですよ。だから、葵くんが愛想を尽かしても、私が尽かすことは絶対にありません。安心して教えられてください。ね?」


「俺こそ、日向に愛想が尽きることはありえないよ」


「なら、私の夢が叶わないことは有り得なさそうですね。…困った時は肩を貸しあえる関係なのが、カップルだと思うんです。私の肩、頼りないですか?」


「華奢な見た目に反して、頼もしい」


「ふふ、葵くんも頼もしいですよ。頼りになる彼氏です」


そう言って、彼女は優しく口付けをしてきた。


日向の愛情や好意が伝わってくる口付けに、体温が上がる。


長いようにも短いようにも思えるキスを終えると、日向はそっと宿題達のもとへ戻った。


「キリのいい所まで、もうちょっとだけ頑張りましょう?」


「…うん。頑張ろうか」


先程宿題をしていた時でさえ近かった距離は、密着と言っていいほど近くなっている。


こんなんじゃ宿題に集中しきれないだろうけど、それでいい。


そんなこんなで、初日はイチャイチャと勉強で終わった。






















私事ではありますが、五月四日は私の誕生日でございます!

祝ってくれたら、凄く嬉しいなーなんてね(/ω\)

ブックマーク、感想、評価等、私への誕生日プレゼントだと思って宜しくお願い致します!

どうかお願いしますーm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 夏休みに海に行って水着イベントはないの? おい、葵!海にさそえぇぇぇ!!!日向ちゃんの水着は見たくないのか!?それとももう見てるのか!?うらやましい!俺たちにも見せろおぉ!!! 今回も面白か…
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