50 彼女とお泊まりについて
いつも有難うございます。
立花と温もりを共有していたら、いつの間にか時間が経っていて、普段ならもう彼女を送り届ける時間。
抱きしめるという行為は辞めたものの、ピタリと肩と肩がくっつく位置にいる彼女に、その旨の目線を送ってみた。
なんで口で言わないかって?
そりゃ、こんな幸せな時間はいつまでも続いて欲しいと思うわけですよ。自ら終止符を打つというのは、あまりにも難しい。
だからこんな目線を送ることすら、断腸の思いでやっている。
彼女は俺の意図に気づいたのか、悲しそうな顔をして答えてくれた。
「…もう、こんな時間なんですね。普通なら、帰らないといけないですね」
なんだなんだ。その含みのある言い方は。
「普通ならって…帰らなきゃダメだろう」
「そうですね。でもそれは、普通なら、です」
「と、言いますと?」
「質問に質問で返すことになってしまいますが、私達二人此処に居てはいけない理由は、なんです?」
立花が可愛いらしく首を傾げて、そう俺に尋ねてくる。
はて、ダメな理由とな。
そりゃ、いっぱいあるだろうが…。
「え、えーっと。親が心配するとか…」
「親は心配しません。どうせ今日も帰ってきませんよ」
「あ、ご、ごめん。わざと言ったわけじゃないんだ」
「ふふっ。分かってますよ。少しからかってみただけです。他にはありますか?」
「そのからかいは勘弁してくれ…。うーんと…周りの目とか?」
「ここには二人しか居ないんですよ。周りの目なんてありませんし、明日だって出る時間をずらせば大丈夫です」
あれ、そう言われて見れば、あまり帰らないと行けない理由なんてない…?
でもなあ。帰らなかったら必然とお泊まりになるわけで。
俺は一人暮らしだから親に許可求めることもいらないだろうけど…。
「私は今、足が痛いです」
普通にしていれば、あまり痛くなさそうだった彼女の足は、何やら急に痛くなったらしい。
立花は辛そうな顔はせず、どうですかと言わんばかりの顔だ。
もとを考えれば、立花の家に送らず、俺の家に送った先生が悪い。
そう思えば、わざわざ離れなくても…って、あ。
「一番重要な理由があった。…俺が立花を襲ったらどうするんだ」
「あら、結城さんは私を襲うんですか?」
「襲いませんよ!?」
「なら大丈夫ですね。…まあ、私は結城さんの、その…彼女、ですしっ。結城さんがしたいなら、私は…」
「立花」
「は、はい」
「俺は、立花のことを大切にしたい。いや、したいじゃないな。する。だから、そういうことはお互いの愛をより深く育んだ上で、だ」
「…!結城さんっ」
立花は大きく目を見開いて、俺に勢いよく抱きついてきた。
俺の鎖骨辺りに顔をすりすりと押し付けている。くすぐったい。
「結城さんの、優しいところ!大好きですっ」
「俺も、立花のことが大好きだよ。…ほら、お泊まりすると決まったら、お風呂入っておいで」
「はいっ。えっと、お風呂場まで…いいですか?」
立花は足を気にした素振りをしながら、そう俺に尋ねてくる。
「当たり前だよ」
「有難うございます。で、でしたら!その…お姫様抱っこを、お願いしても良いですか?…」
ぐはっ…。彼女が上目遣いで甘えてくるなんて、破壊力が凄すぎる。
断れるわけがないだろう。
「じゃあ、行きましょうかお姫様」
俺はそう言って、優しく立花をお姫様抱っこをした。
彼女は自分で言ったくせに、恥ずかしいのか顔を赤くして目を伏せている。
俺は顔が緩むのを堪えながら、お風呂場まで向かった。
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