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48 彼女と仮装二人三脚

おまたせしました。いつも有難うございます!

お題の件で騒々しかったものの、何とか質問攻めに合う前にお昼を迎えることが出来た。


立花に連れられて屋上までやって来たが、誰もいない。


「なんで誰もいないんだ?限定公開だってのに」


「なんででしょうか。でも良いじゃないですか。二人きりですよっ」


そう言って立花は俺の腕に抱き着いてくる。


立花が好意を俺に伝えてくれてから、彼女はとても積極的になった。


先程も、人前だってのに堂々と手を繋いで来た。


全く。めちゃめちゃ嬉しいけれど、まだ(・・)付き合ってもないのにそんなことしたらダメでしょ。



「へくしゅんっ」


「どうしたんですか?結城さん。体調でも悪いんですか?」


「いや、なんでも…」


「ない」と、その続きを言おうとしたけれど、彼女の端正な顔が目の前にあって固まってしまった。


おでこを通して彼女の熱が伝わってくる。


わざわざ熱を測ってくれてるみたいだけど、間違いなく俺より君の方が熱いよ。


「…熱は、無いみたいですね?大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫」


「なら良かったです。準備も出来ましたし、お昼にしましょうっ」


心なしか機嫌が一段階くらい上がった立花は、いつの間に準備したのかレジャーシートを敷いていて、お弁当を開けて待っている。


ここに座れといわんばかりに隣をぽんぽん叩いているので、素直に横に腰掛けておく。


心が持たないから拳二個分くらい離れて座ったんだけど、彼女は何事もなかったかのように距離を詰めてきた。


意味無くなったやん。


「今日は結城さんの好きな鳥の唐揚げを入れましたよ。喜んでくれたら嬉しいですけど」


そう言ってお弁当を渡してくる立花は、控えめに言って女神です。


喜ばない訳無いのに、そんなことを言ってくるから食い気味に返事をしておく。


「めちゃめちゃ嬉しいよ。ありがとう。それじゃ頂きます」


立花の作った物は真剣に全て美味しい。


その中でも鳥の唐揚げは凄い。


俺の好物というのもあるけど、もう止められない止まらない。


上機嫌で食べ進めている俺を、立花は微笑みながら見ている。


「野菜も食べなきゃだめですよ?はい、あーん」


別に嫌いって訳じゃないんだけど、好きな物を優先して食べていたから野菜が取り残されていただけです。


彼女は注意をするという体で、立花が使っていた箸で野菜を食べさせようとして来た。


「いや、自分で食べれます…」


「あーん?」


立花は俺にだけしか見せてくれない、とても美しい笑顔をして箸を口元に寄せてくる。


決定事項なんですね…。


ええいっままよ!


「あーん…」


ぱくり、自身の顔に血液が集まっていくのを感じながら咀嚼をする。


立花は嬉しそうに頬を染めながら笑っている。


「美味しいですか?」


正直、味なんて分かったものじゃないけれど、こくりと頷いておく。



俺のお弁当は、立花の優しさが故に彼女より唐揚げが多い。



やり返したいという気持ちが強くて、楽しみに取っていた唐揚げを取り立花の口元へ持っていった。



この展開。どこかで見たことある気がするけれど。



「じゃあ、お礼に俺からも」


「えっ…。い、いえ、別に大丈夫ですよ?」


「大丈夫。めっちゃ美味しいから」


「そういう事ではなくて…」


さっきまでの余裕そうな笑みはどこへ行ったのか。


「はいはい。観念してあーんされよう」


「…んむぅ。あーん」


立花が顔を真っ赤にさせて食べてくれた。


なんだろう。親鳥が雛に餌を与えてる感じ?なんというか、非常に愛くるしい。


「美味しい?」


「…はい。もうっ、結城さんは、いじわるになりましたっ」


彼女は可愛らしい顔をむすっとさせて、抗議の声をあげる。


むすっとしても可愛いってなんなんだろう。


「立花が可愛いからじゃない?」


そんな事を言いつつ、彼女の頭を撫でる。


満更でもないようで、体をくっつけて自由にさせてくれている。



幸せな時間は、暫くの間続いていた。







☆☆☆☆☆





「お待たせ致しました。次は、体育祭最後の種目、仮装二人三脚です!」


仮装し終えた二人組が入場門から入ってくる。


執事服に着替えた俺と、お姫様の恰好した立花も例外無くその中にいた。


彼女のお姫様姿は、本当に様になっていた。


スタイルの良さと、その美貌から、何かの御伽噺から飛び出してきた姫様かのようだ。


俺が通っている鳴海高校は、楽しむことに抜かりはなく、どの衣装も非常に凝っている。


自分が着ている衣装も、格好良いのだと思う。


だけど、身に着けてるやつがなあ。


「結城さん、似合っていて、その。…格好良いですよ」


「何度も聞いてるけどな。ありがとう」



衣装に着替えてから何度も言われている言葉を聞いて、少し心が落ち着く。



俺らは最後の走者なので、足首を結び合わせて体操座りをしながら皆の走る様を眺めている。


「皆面白い仮装をしてるよなあ」


「そうですねっ。見てください結城さん。犬と猿の仮装をした二人が転びましたね。大丈夫でしょうか。」


「大丈夫そうだけど、転んだことについて喧嘩しながら走ってるな」



「水と魚の仮装をした二人は、仲良く順調に進んでますね」



「ことわざ通り過ぎる」




二人して仮装の内容で笑っていたら、あっという間に時間が過ぎた。



もう出番らしい。



立花と並んでスタートラインに立って、決めた通りに片方の足を出した。



「頑張って一位を取りましょう!」


「そうだな。頑張ろう」


お互いに微笑みかけて、スタートの合図を待った。





「それでは、位置について、よーい…どん!」





「「せーの」」


空砲の音と共に、練習通りリズム良く足を出していく。


誰よりも早くスタートダッシュが出来たから、敵は全員後ろだ。


これは、なかなか速いんじゃないか。


一位で走りきることも…!



「結城さん…ペース上げれますか?」



立花が遠慮がちに聞いてくる。


自分の足元しか見てなかったから気づかなかったが、すぐ後ろに野球部と思われる坊主の二人が迫っていた。



このままじゃ、追いつかれる。


練習でも、こんな速度は出してないくらい全力なのに、これ以上やったら…。




でも、勝ちたい。




「わかった。やってみよう」



「はい!」



いちに、いちにと足の回転を早くしていく。


相手も相当速い。


ペースをあげて差が開いたけど、少しでもペースを落としたらすぐ追い抜かれそうだ。



ゴールまであと百メートルくらいだろうか。


最後の最後で、後ろの二人が全力を出てきた。


ぐんぐん差が縮まって、真後ろまで迫っている。



立花は焦ったような顔をして、更にペースを上げようとした。


それが原因だろうか。



急に足の回転が速くなったことで、お互いのリズムが崩れた。



俺が地面を踏んだタイミングで、立花の足が引っ張られ、彼女が転けそうになる。



「危ない!立花!!」


すかさず俺は立花の腰に手を回して、転倒するのを防ぐ。


立花主体で転けることは防ぐことが出来た。


だけど、先程まで走っていたのにそんな行動をすれば、バランスが崩れるわけで。



ばたり、とその場に俺が下敷きで立花と倒れる。



転けた勢いで体のどこかを擦ってしまったが、そんなことはどうでもいい。



「た、立花!だ、大丈夫!?」


「ゆ、結城さん!ごめんなさいっ!私のせいでこんなっ…!」


「大丈夫、気にしなくて良い。走れそう?」


「は、はい。速く行き…痛っ」


立ち上がって再び走り出そうとした立花は、どこか痛いのか、急に顔をしかめた。




「もしかして、足首を?」


「大丈夫ですっ!これくらい…んんっ」


とりあえず足首のひもをしゅるしゅると解いて、足首を見てみた。


するとそこは赤くなっていて、もうすぐ腫れることが伺えた。



「立花、残念だけど、止めといた方が」



「いやですっ!」



「でも、これ以上走ったらもっと悪くなる。今すぐ保健室に行こう」



「でも、でも。私は、結城さんと、大切な思い出が作りたいんですっ!」



「…」



「好きな人と、思い出を作りたいんですっ。ゴールはもうすぐです、これくらいなら大丈夫ですからっ!」



「だめだ」



「…っ」



「立花が走ることは、本当に駄目だ」



「ゆ、結城さん…」



目の端に涙を溜めて、立花がこちらを見つめて来る。





「だから、こうしよう」




「…えっ?」




俺は、立花の腰と膝の裏に手を回して、立ち上がった。



「落ちると危ないから、捕まれるところに捕まっておいて」


「ゆ、ゆ、結城さん!?こ、これは、い、一体…!?わ、私、今、結城さんにお姫様だっこ、さ、されてる!?」


「そうだ。じゃあ行こう」


立花は俺の首に両手を回して、しっかりと捕まってくれた。


俺は力強く地面を蹴って、もうあと三十メートルくらいのゴールを目指した。


幸い彼女は、羽のように軽い。


もう四位なのは確定しているけど、それでもゴールすることに意味があるんだ。




ゴールテープが再び張られ、その近くに、ここぞとばかりにカメラマンがカメラを向ける。



羽のように軽いけど、俺は非力なんだ。



注目も集まっているし、何より腕が限界かも。



早く着かねば!



俺は全力で走って、ゴールテープを




切った。





「紅組、最後の走者!結城君、立花さんペアが、異例のお姫様だっこという形で、今ゴールしました!!」





グラウンドに歓声が沸き上がる。


女子の騒ぐ声や、男子のぴゅーぴゅーと口笛を吹く音。


レースの音楽や、腕の中の愛おしい少女の心臓の音。



立花へ目を向けてみると、彼女は頬を染めて、こちらをぽーっと見つめていた。






「ゴールで出来たし、立花、保健室に行こうか」



「…は、はい」




冷静を保っているようで、お互いの心臓がうるさい。



立花は俺の胸に耳を当てているし、確実にどきどきしているのがばれてる筈だ。



走ったせいにしとこうか。



ふにゃふにゃした、幸せそうな顔をしている立花を見ながら、俺はそう思うのだった。










自分でくしゃみをしていくスタイル笑


ブクマ、感想、評価等よろしくお願いします!!


下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂ければ、今後の励みになります!是非ともお願いします( ´ ` )


次はなるべく早く投稿するようにしますので、お待ちください〜(´・ω・`)


ではまた!

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