04 彼女に迫る影
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勢いで飛び出して帰る途中は、ずーっと頭の中で彼女の笑顔がぐるぐるしていた。
あの笑顔は反則だろ。
学校でよく見かける、誰にでも見せる仮面を被ったような笑顔ではなかった。
「笑顔を見ただけで頭がまともに機能しないじゃんか…」
今日の夜にやろうとしていた事も、笑顔を見る前にしたことも忘れてしまった。
自分でもなぜこうなっているのかわからない。
彼女とお近づきになりたいわけじゃない。
俺はクラスの中では静かな方なので、輪の中心になるような奴とは関わりたくはなかった。
学校の彼女は、誰とでも話すことができるし、人当たりの良い奴だ。
だが、関わるのは表面だけで、彼女は絶対に誰にも心を許していない。
なんて芯食ったこと言ってみたいなぁ。あはは
あとなんか忘れてる気がする。
「あっ…今日買ったおにぎりどこいったっけ」
やってしまった。
ぬいぐるみを渡すため、一度学校のバックと買った袋を机のような所に置いたんだった。
俺は手ぶらで帰って気づかなかったのか?
学校のバックくらいは気づくだろ普通…。
まあいい、取りに行かなければ。
☆
ここからスーパーまで、近いといっても十五分かかる。
十五分でスーパーに着くには、近道を通る必要がある。
一度繁華街を通ってから角を曲がるとめちゃくちゃ早い。
だから俺は現在繁華街を走っている。
何事もなくスーパーに着いて、買ったものを取って帰る。それが一番だ。
頼む…なにも起きないでくれ…!
無慈悲にも俺の願いは届かす。
建物の影の様な所で、金髪のチャラそうな男三人が女子に声を掛けている。
なんか女子が煩わしそうな顔してるな。
ってあれ…なんか立花っぽい…?
腰のところまであるきらきらとした黒髪。
男女共々魅了してしまう容姿。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる体。
あれは絶対立花だ。間違いない。
「まーまー、つれない事言ってないで向こうで俺達と楽しいことしようぜ」
一番チャラそうな男が指す先は、人が来なさそうな路地裏。
そして別の男がガシッと彼女の腕をつかんだ。
「やめてください。あと私は用事があるので」
彼女は無理やり腕を振りほどいて用事があると伝えた。
「めんどくせーなー。良いから来いよ」
三人係で詰め寄っている。危ないなこれは。
俺はとんとん、と一番チャラそうな奴の肩を叩く。
「ああ?なんだよ」
「俺の友達に何してんの?」
はい勇気ある一言。鶴の一声を体現している者です。
「は?こいつがお前の連れ?なわけねえだろ調子乗んな」
こ、こえ〜。いや、確かに容姿とかそういうのじゃつり合いませんけども…。
「いや事実なんだからしょうがねえだろ。俺達は用事があるんだ」
「誰がこいつの連れかどうかなんて関係ねーわ。今俺はこいつと用事があんの」
常識がない人には話が通じないな全く。
急にめんどくさくなってきた。走って逃げるしかないなあ。
「立花、走るぞ」
立花の手を即座に取って、全速力で走る。
こけてもらっちゃ困るけど、いざという時は俺が情けなく男の足にしがみつく予定です。その間に逃げてもらおう。
「あっ!おい待てや!」
相手の言葉を無視して、それでも走り続ける。
相手は追いかけて来る気はあまりないらしく、ちょっとしたら姿は見えなくなった。
そして走っていた方向は、意図せずスーパーの方向だったみたいだ。
「ここまでくれば大丈夫かな」
立花の手を離す。
立花は少し息切れをしているが、そこまで疲れた様子ではない。
「助けてくれてありがとうございます。助かりました」
感謝されてしまった。しかも少し笑顔だ。破壊力やばい。
「い、いや。困ってた時はお互い様でしょ?」
「そうですね」
「そのー…スーパーに荷物忘れてしまったんで取りに来たんだけど…よかったら途中まで一緒にいかがでしょうか」
「まあ、またあの人たちに絡まれたら嫌ですし。お願いします」
一緒に帰ることになってしまった。頼む。誰も見ないでくれ。