表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/63

03 彼女の笑顔

「はぁ…」


俺こと結城葵(ゆうきあおい)はとても悩んでいた。


理由は単純。


くまのぬいぐるみを渡すタイミングが無いからだ。


昨日帰りに渡そうかななんて言っていたが、彼女の下校のタイミング分からないので、俺は待つしかない。


学校で渡すと、いろいろとまずい。


だから学校で待ち伏せというのもできない。


そして家で待つのも、ちょっとしか面識がない男が家の近くで待ってるなんて、正直言って気持ち悪いことこの上ない。


どうしようどうしようと考えていると、下校時間になった。


帰宅部の俺は何もすることがないし、さっさと帰る。


よし、帰りにスーパーに寄ろう。


あのスーパーの店長と仲が良く、俺にだけおにぎりや惣菜を格安で売ってくれる。


閉店間際の時間と、あの店長の優しさで、なんとおにぎり一個十円になることだってある。


まあ俺が日々手伝いをしてるっていうのもあるのだが。


さっさとスーパーに行こう。作戦はそこからだ。


おにぎり何個買えるかなあ。



スーパーに着くと、真っ先に惣菜とおにぎりのコーナーに迷惑にならないように小走りで行く。


げげ、おにぎり一個百円。


テンチョーサーン、エクスキューズミー!


「おお、葵君か!いつも片付けとか手伝ってくれてありがとうね。おにぎり一個五十円でいいよ」


やったー!ありがとう店長さん。


「ありがとうございます!明日手伝いに来ますね!」


店長さんは、ありがとう、と言って奥に消えてしまった。


そうして俺は、おにぎり二つを手に入れ、スーパーを去ろうとした。


スーパーに彼女が入ってくるまでは。



「あっ」


思わず声が出てしまった。


彼女はこちらに気付いた様子はない。


ここは一回偶然を装ってもう一度入店し直すか?


だが俺の手にはスーパーのロゴが入った袋がある。


なんで持ってるのって思われたらやばいしなぁ。


幸いくまのぬいぐるみは持ってる。


もう勇気を出して突入だ。


「こっこんばんは」


時間帯的に こんにちは ではないはず。


「こんばんは」


相手はこちらに目線を合わして、ぺこりと頭を下げる。


「あ、あの。昨日はクッキーをくれてありがとうございました」


「いえ。別に大したことはないので」


さっさと話しを終わらせたい、というような返事が来た。


学校終わった後のこの人機嫌悪くないか。


「あ、あの。昨日もらったクッキーのおまけにくまのぬいぐるみが付いてまして」


「ああ、確かにそうでしたね」


「その…俺はクッキーで十分だから、くまのぬいぐるみをお返ししたいと思っていて」


彼女はくまのぬいぐるみの話題を持ち掛けられると、さっきまで凍っていた顔が、少し解凍された。


「はい。どうぞ」


包装してあるくまのぬいぐるみは、開けていないので綺麗なままだ。


そのぬいぐるみを大事そうに彼女は抱えた。


「ありがとうございます」


昨日ぶりに見た、見惚れるような笑顔。


学校では見ない、自然な笑顔を見た。


「い、いえ。どういたしまして」


それでは、とまた逃げるようにスーパーを出て行った。






感想、ブクマ、評価等よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ