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01 彼女の心配

「大丈夫ですか」


無機質に、どこか冷たいように。心配の声を掛けてくれる彼女。


その彼女の名前は立花日向たちばなひなた


俺と学校が一緒だが、話したことはない。


容姿端麗で成績優秀の学校随一の才女らしい。


特に接点もなく、ただ近くに住んでいて、帰り道が一緒なだけ。下校のタイミングもばらばらだ。


そんな彼女が俺に心配の声を掛けている。


「あ…ああ…はい。大丈夫です…」


声を出そうにも、元気が出なくて細い声しか出せなかった。


「そうですか」


少し不満がありそうだが、淡々とした返事が返ってきた。


「それでは失礼します」


「は…はい」


俺と彼女の家は近い。


俺はアパートに住んでいるのだが、その近くにマンションがあって、そこに彼女が暮らしている。らしい。


元気が出ない体を引きずって、なんとか家に帰った。


中に入って鍵を閉め、靴を脱いでソファーにダイブ。


時間は午後四時。


学校が今日は六時限目までしかないので、さっさと帰ってきた。


もし母がいたなら、着替えろとか何とか言っていたかもしれないが、一人暮らしなので何も言われない。


俺は電池が切れたように眠った。



カチカチと時計が秒針を刻んでいる音が聞こえてきた。


二時間くらい寝ていたらしい。


そして異様に腹が減っている。


「でもなんも食べれないんだよなあ…」


近くに人がいても気づかれないような小さな声。


そう今俺は絶賛、断食という節約術を行使している。


理由は単純に金がない。


一カ月に一回、仕送りがあるのだが、果物や野菜と一緒に一万円が送られてくる。


俺はその一万円で日々暮らしているのだ。


だが計画的に使えば、一万円なら多少苦しいが生活できる。


なぜ今金が無いのかと言えば二日前、帰る途中に病気の子に対する募金活動があり、なけなしの二百円を入れてしまったからだ。


病気の苦しさは知っている。だからこそ支援はしたい。


二百円なら最寄りの閉店間際のスーパーならおにぎり四つは買える。


だが後悔はしていない。


少しでも命が助かるなら、それでいいのだ。


「だけど空腹はどうしようもないよなあ…」


幸福では腹は満たされない。


だから水をたっぷり胃に入れて、もう一度睡眠をとろうとする。


だけどどうしようもなく腹が空いて、ぐるぐる思考がループする。


どうにか腹を満たす方法……あっ!


「公園にたんぽぽ生えてたよな…?」


季節は春。


最近入学したばかりだが、桜は三月の後半にだいぶ散ってしまったらしく、入学の際には綺麗な桜は見れなかった。


だが公園のたんぽぽだけはきれいに咲いていた。その記憶は鮮明に覚えている。


たんぽぽの葉は食べられる。


「よし…取りに行くか!」


少しでも胃に物を納められると思うと、めちゃくちゃ元気が出てきた。



「たしかここら辺に…おっあったあった。」


あまり大きくはない公園だが、木の下にはたくさんのたんぽぽが自生していた。


あまりに茹でて塩をかけて食べるのが楽しみすぎて、公園中のたんぽぽを取っていた。


十分くらいだろうか。


前屈みになりたんぽぽを取っていた。その時。


「何してるんですか」


またもや鈴のような彼女の声が掛かった。






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[一言] 主人公君人が良すぎ
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