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私の伴魂は異世界転生者?  作者: 高月 すい
2.密談後
8/9

1.密談後 1

時系列的には、本編の第四章「人語を介する伴魂」の「16.密談【カイルの懸念 5】」の後の話になります。



 ――そっか……。


 ――カイルはカイルで、どうにかしてくれようとしてたんだね。ありがとう。


 そう言って、彼女は力ない笑みを浮かべた。



 ――カイルっっ!


 振り降ろされた剣筋の先に、割って入った姿を見て。


 恐怖と絶望と――奪われた怒りを。


 それらの感情を、カイルは身の内に抱いていた。



       ◇◇          ◇◇



 オリビアが招集をかけて、校外学習での顛末を話したその日。


 同日、カイルはオリビアの話の後、フィーナと彼女の伴魂を別室に呼んで、彼女に関する話を聞こうとした。


 カイルが知る限りの、これまでの話と。


 ――カイルと知り合う前の……セクルト貴院校に来る前の話を聞こうと。


 結果としては、核心に迫る話までは引き出せなかったものの、後日、話すとの約束は取り付けた。


 本心としては、フィーナの伴魂、マサトが望んだ同席者達に、強制召集をかけて、すぐにでも話を聞きたかったのだが――。


 それはマサトとフィーナが望んでいなかったので無理強いもできず、結局、休日をはさんだ次の日となったのである。


 それまで、平日は三日ほどあった。


 これまでと変わらない様相で過ごすフィーナを、カイルはそれとなく伺っていた。


 注視しなければ気付かないが――どことなく、フィーナにいつもの元気がないことに、カイルは気付いていた。


 そうした様子を見かねて、放課後、声をかけたのが、休日前日のことだった。


「魔法の鍛練をするから、ついていてほしい」


 そう告げたカイルに、フィーナは「え」と驚いていた。


 そうして自身の周囲を見渡して「マサト――いないけど」と小声で告げる。


 カイルはマサトの指導を望んでいると、フィーナは思っていたのだ。


「いや」


 フィーナの返事を聞いて、カイルは小さく首を横に振る。


「フィーナが居てくれればいい」


「けど、私――」


「居てくれるだけでいいんだ」


 指導などできない。


 そう告げようとするフィーナを遮って、カイルは告げる。


 懇願に近いカイルの言葉に、フィーナは戸惑いつつ「いいけど……」と応じたのだった。


 そうしてカイルとフィーナ、連れだって魔法の鍛練場へと足を運ぶ。


 アレックスとレオロードも、護衛としてついてきた。


 今日はダードリアは付き添っていない。


 本来、魔法の鍛練時には付添人として教師が同行する決まりになっているのだが、カイルには護衛騎士が常に控えている。


 彼らが付添人の条件をクリアしているとの考えで、今日はダードリアは随行しなかった。


 鍛練場で、カイルはいくつかの魔法を試していた。


 その様子を、フィーナはぼんやりと眺めていた。


 点火ランカだけでなく、いくつかの魔法は、前詞アンセル無しでも唱えられるようになっている。


(はやいなぁ……)


 カイルの魔法の鍛練を見て、ぼんやりとフィーナは思っていた。


 フィーナがドルジェで鍛練を受けていた時は、マサトに叱咤されながら、一つの魔法を前詞アンセルを唱えずに成せるまでに、時間がかかっていた。


 一つ出来れば、コツもわかるので、次の魔法は初めほど、前詞アンセルを唱えずに呪文ルキで成せるようになるのにも時間がかからなかったが、カイルほどはなかった。


(『さすが王族』――)


 カイルの魔力に関して、マサトが舌を巻いていたのを思い出す。


 フィーナの能力や成績に関して、周囲は一目置いているようだが、本人はそれを自分の能力だとは思っていなかった。


 置かれた環境でこうなったのだと思っている。


 フィーナでない他の人間が同じ状況下に置かれても、同等の結果は出せたはずだとも。


 ――同時に。


 自分でなく、カイルのように、生まれつき魔力の多い者や何かしらの能力に秀でた者が、マサトの、伴魂の主となっていれば、いろいろと違ったのではないか。もっと有能な能力を発揮できたのではないか――とも考えていた。


 これまでは脳裏をよぎっても、目を逸らしていた。


 考えないようにしていた。





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