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私の伴魂は異世界転生者?  作者: 高月 すい
1.アールストーン校外学習初日
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3.アールストーン校外学習初日【魔法授業 3】


 生徒の指導を一通り終えたところで、いったん、フィーナ達の元へ足を運んだようだった。


 ダードリアはカイルに最上級の謝罪を送った。


 最上級の挨拶は、謝罪の場だと、最上級の侘びとなる。


「事前にお伺いを立てることなく、矢面に立ててしまい、申し訳ございません。

 あの場はとにかく、すみやかに騒動を静めて、それぞれの場所に戻すことが最善だと思いましたので……。

 カイル殿下が成したことだとすれば、納得されるでしょうし、賛辞にもなり、殿下の評価にも繋がり、深く追求されることはないかと判断いたしました」


「俺に嘘をつけと?」


 頭を下げるダードリアを、カイルは鼻で笑う。


 ひやりと、冷気を含んだ苦言に、その場の雰囲気が一気に氷ついた。


 鈍いと言われるフィーナがおろおろするほどに。


 ダードリアも頭を下げたまま、口をつぐんで続く言葉を探っている。


 下手なことを言って、これ以上、機嫌を損ねることもできない。


 カイルは曲がりなりにも王族だ。


 先ほどの発言は、王族であるカイルに嘘をつけと言うのかとの含みを持っていた。


 カイルに、それを指示するのかと――命じるのかと。


 それはダードリアがカイルを軽んじていると思われても仕方ない行為であった。


 その場をおさめるためとはいえ、一教師が王族に虚偽を言えと言うのかと。


 カイルはそう含んだ物言いをしているのだ。


 どう返事をすればいいのかと、思案を巡らすダードリアが言葉を発するより前に、その場の雰囲気に耐えられず、いたたまれなくなったフィーナが「はいっ!」と手を上げて白い伴魂を腕に抱いたまま、立ちあがった。


「悪いのは私ですっ!

 先生は悪くないです、ごめんなさい!

 以後、気をつけるから、カイル、怒んないでっ!

 ちょっと怖いから――ううん、ちょっとじゃない、かなり怖いからっ!」


 泣きそうな顔で、フィーナはカイルに訴えた。


 訴えながら「ごめんなさい、ごめんなさい!」と何度も頭を下げていた。


 呆気にとられたのは、フィーナを除く面々だ。


 ダードリアは、フィーナの突然の発言に、思わず顔を上げて、唖然と彼女を見た。


 アレックスもレオロードも、呆気にとられてフィーナを見ている。


 同じく、カイルも虚を突かれた顔で、隣の席のフィーナを見て――。


 呆れを含んだ吐息を漏らして「……もういい」とつぶやいた。


 そう呟いたカイルは、先ほどの冷たい怒気の気配は失せていた。


 そのことに、ダードリア、アレックス、レオロードは口にしないものの驚いている。


「……ほんとに?」


 フィーナは頭を下げた姿勢のまま、顔だけを上げて、覗き上げるようにカイルを見上げる。


 泣きそうなフィーナの顔を見て、カイルも苛立ちの気が殺がれていた。


「今後、気をつけるならな」


 言って、カイルはレオロードに顔を向けた。


「さっきのフィーナの燃焼レンショウ。もし実演しろと言われたら、俺に禁止されていると答えれば、それ以上、強要する輩はいないだろ」


 レオロードはカイルの護衛騎士だ。


 国王を除いて、カイルの言葉を一番に従う立場でもある。


 カイルから禁止されていると言えば、無理強いする輩もいないだろう。


「なるほど」とつぶやくレオロードと同じく、フィーナも「そっか」と納得していた。


「カイルすごい。それなら、誰も何も言えないね」


 先ほどまでの泣きそうな顔はどこへやら。


「へへ」と笑うフィーナに、カイルは眉をひそめた。


「「すごい」とか、そう言うものじゃないだろ。

 それより。突拍子もない行動は控えてくれ。頼むから」


「は~~い……。気をつけます……」


 しゅん、とフィーナは肩を落としてうなだれた。


 そうした後、ふと何かに気付いたように顔を上げて、レオロードに視線を向ける。


 カイルを介した場では会話をしたことがあるが、レオロードもアレックスも、フィーナとカイルを交えない会話をしたことがない。


 そうしたフィーナからの視線を受けて、レオロードもわずかながら身構えていた。


「レオロード様。迷惑をおかけして申し訳ございません」


 フィーナはそう告げると、簡易ながら謝罪の礼をとった。


 正直、レオロードの胸の内は焦りに満ちていた。


 なぜ、王族であるカイルに謝罪の礼をとらず、自分には公式な謝罪を述べるのか。


 逆だろうと思いつつ、視線だけをカイルに向けて、主の様子を伺い見たのだが――。


 予想に反して、カイルは気にしていないようだった。


 先ほどと同じく、呆れた様子でフィーナを見ている。




「カイルの取説」的内容が出てます。

こういうところって、勝手に動いてくれてるところなんですよね。

「あれ、そこで不機嫌になって、そうこと言う?」……的な。

書き手の醍醐味です。

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