1.アールストーン校外学習初日【魔法授業】
【時系列】第三章 アールストーン校外学習「19.校外学習初日」内の、魔法授業の一幕です。
本編に書いていない小話です。
考えていたけど、書くタイミング逃した~。
……的なものです。
「燃焼!」
フィーナが唱えた呪文は、数メートルの火柱を出現させた。
周囲にいた生徒の度肝を抜いたのは――言うまでもない。
校外学習時。
いつも室内の魔法鍛練場で行われる授業と異なり、外の開けた空間で行われる。
気兼ねなく魔法が使えるのが、アールストーン校外学習での醍醐味の一つと聞いていたフィーナは、噂を真に受けて、ドルジェでの鍛練場と同じく、久々の腕試しを兼ねて、腕まくりして強めに魔法を唱えたのだ。
「「「なっ!?」」」
それぞれが目標物に魔法を唱える中で、唐突に生じた火柱に、クラスの生徒が目を丸くして驚愕の声を上げる。
フィーナだけが数秒間、立ち上った炎を「お~。」と呑気に眺めていた。
これまでは室内の鍛練場だったので、威力を抑えていた。
魔法は鍛練を積めば積んだだけ、威力も魔力も高まる。
より修練を積みたければ、こうして時折、威力の強い魔法を使用する必要があった。
「まあまあかな?」
数秒後に消えた火柱に、フィーナはそう自己評価する。
以前より、少々高さを増したか。
セクルト貴院校に入学してから、以前ほど魔法鍛練に時間を割けないので、衰えを危惧していたが、大丈夫のようだ。
「なんだ、あれは!」
フィーナの二つ右隣にいるジェフが、叫んでくる。
フィーナとジェフの間にはカイルがいるが、カイルはフィーナの奇行に慣れたようで「またか」とどこか遠い眼差しで、火柱が立ち上ってた地点を眺めていた。
「何って――燃焼?」
「燃焼!? あれが燃焼の大きさか!?」
小首を傾げるフィーナに、くってかかるジェフの言葉は、その場にいる誰しもの想いを口にしたものだった。
通常、点火はランプの炎程度、燃焼は大きくとも焚火程度のものだ。どちらも日常生活に使用する魔法で、一学年生の初級編とするほどよくある部類の魔法だった。
「え?」
言われたフィーナはきょとんと目を瞬かせて、燃焼を発した方へと目を向けた。
火柱は消えたが、立ち上った高さまで見上げて――。
「ちょっと大きかった?」
「「「あれがちょっとぉっ!?」」」
小首を傾げるフィーナに、いくつものツッコミの声が重なったのだった。
「フィーナ・エルド……」
声を上げた一人である、担任のダードリアは、ため息交じりにフィーナに声をかけた。
生徒はそれぞれで鍛練を続けている。
フィーナは燃焼の鍛練は免除され、代わりにダードリアに滔々と諭されていた。
「以前から言っていますが、節度を持ちなさい」
校外学習時は、他のクラスは場所が違えど、同じく外で魔法の鍛練をしている。
フィーナが唱えた燃焼の火柱は、他のクラスからも見えたので「何事か」と人が群がる事態になってしまった。
フィーナの仕業と言うわけにもいかず、困ったダードリアは「カイル殿下」と、カイルに答えを丸投げした。
カイルもそうなるとわかっていたようで、ため息交じりに口を開いた。
「手本を頼んだんだ。なあ、レオロード?」
「え゛!?」
思わぬスケープゴードにされたレオロードは、主に逆らえるわけもなく、否定も出来ず、ひきつった笑みを浮かべていた。
そうして「さすが騎士様」と、自分のしたことではないもので、羨望の眼差しを受けることとなったのだった。
「ちょっと無茶をしただけなのに……」
フィーナは一人、見学を申しつけられ、椅子に腰をおろして、膝の上に白い伴魂を抱いていた。
膝の上で背筋を伸ばして座る白い伴魂の頭に、顎をのせて、フィーナは「む~」と、口をとがらせている。
こういう軽~い話が好きなんですが。
最近、シリアス展開が多いので、ちょっとうっぷん晴らし。(苦笑)
数話続きます。