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家族ってね  作者: 宮原叶映
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散歩

 紘季は、一週間と一日ぶりに家の外を出た。いきなり一人では、不安だ。


 なので、藍季と海李と透と一緒に、公園まで散歩がてら歩いて行った。その理由を説明するには、時を遡る必要がある。なので、少し時を遡ろう。


 たかが、紘季の様子を見に来た夜のこと。晩御飯も食べ終え、子供は寝たであろう時間。京介、透、空は、おつまみと酒をダイニングテーブルに並べて今日のことを報告しあっていた。

 

「今日の紘季くんのこと、なんだけどね……」

 

 と、空は、紘季のことを詳しく話した。

 

「テレビには、気を付けていたんだけどな。今日は、遅刻しかたけたんが悪かったんだな。な、京介」

 

 京介は、なにか考え込んでいて透の話を聞いていなかった。


「あ、あぁ。そうだな」


 京介は、学校で流れた噂や問題についてのことを考えていた。

 

「京兄、もう一つ聞きたいの」

 

 空が、わざと京介に低い声で話しかける。ビクッと彼の肩が上がる。

 

「な、なんだ? 」

 

「空が、言わなくても分かるよね? 」

 

 空の表情は、鬼とまでとはいかないが、とても怖い。関係ない透までも、怖がっている。

 

「はい。すみませんでした。空に、たかくんのことを伝えていませんでした。大変申し訳ないです」

 

 空の表情を見て、思わず敬語で謝る京介。


「よろしい。許しましょう」

 

 と、空はかなりの上から目線で言う。西原きょうだいでは、なんだか恒例になっている言い方だ。

 

「あと、二人にご報告。明日から、締め切りに追われるので紘季くんたちのことは、ろしくね! 」

 

「はぁ?! 」

 

「担当さんに、急遽スケジュールをズラしてもらったの。それが……一週間が限界だから。早く書いてと、念押しの電話がこんなに」

 

 と、空は、スマホの画面を見せる。通話歴には、担当の晴山の名前がズラリと載っている。


 だか、最初の一回以外は電話に出た様子はない。つまり、無視をしている。担当の晴山には、いつも申し訳ないと思っている京介だった。

 

「大丈夫なのか?こんなに、無視して」

 

「大丈夫じゃないかな。なので、家事全般よろしくね! 」

 

「「よろしくね! 」じゃないから。空も、俺が言えたことではないが、そういう大事なことは連絡しろ」

 

「はい。すみませんでした」

 

「うん」

 

 さっきと違って、空が謝った。

 

「空のことだ。家事の合間や寝る前に、書きためているんだろ? 」

 

「うん。かなりたまっているけど。連載を二本書いてるから。片方が出来ても、もう片方がなかなかできてなくて……」

 

「なるほどな」

 

ガタッ

 

 いきなり、京介は椅子から立ち上がる。そのまま、廊下につながるリビングのドアを開く。

 

「紘季、おいで」

 

 と、ドアの向こう側にいる優しく話す。京介は警察官になってから、より気配を感じれるようになった。紘季は、申し訳なさそうな表情をする。

 

「大丈夫だよ。とりあえず、こっちに座ろう」

 

 紘季は、空の隣に、座る。向かい側に京介。斜め左に、透。

 

「寝れなかったのか? 」

 

 紘季は、頷く。そして、一枚の紙を京介に渡す。

 

『そろそろ、学校に行かないといけないと思う。たかと、もう少し一緒にいたい』

 

 その二文だけが、紙に書かれていた。


「分かった。いいよ」

 

 と、京介は言う。

 

「でもな、いきなり学校は難しいかもしれないから。土日は、外に出よう」

 

 紘季は頷くが、内心驚いていた。ダメだと言われるんじゃないのかと思っていたからだ。声のこともあるから余計にそう思うのだ。

 

「学校には、声のことも伝えるから安心してね」


 紘季の口からは声が出ていないが、「ありがとうございます」と口は動かしていた。三人は、紘季の声が聞こえないのに、まるで声が聞こえたように感じた。

 

「いいんだよ! 」

 

 空は、紘季の頭をおもいっきり撫でる。俺も俺もと京介たちが、紘季の頭をおもいっきり撫でる。紘季は恥ずかしいが、嬉しいと感じていた。

 

 

 そして、冒頭に戻る。空は締め切りに終われ、京介は応援を頼まれ現場に向かった。


 藍李と海李は、久しぶりに紘季と遊べることを楽しみにしていたので、テンションが高い。公園までの道のりも二人は、紘季の手を握り、ブンブンと振る。その様子を後ろで、仲いいなと眺める透。それと、三人に気づかれないように、キョロキョロと周りを見渡す。


 ある人物に、会わないように気を配る。この道は、歩道と車道が分かれていて、ガートレルがある。信号もある道だ。あの事故のようには、ならないような道を選んで歩く。


 紘季が引きこもっている間、空と透が公園に藍季と海李を連れて行った。なので二人は道を覚えているので、こっちだよとふたりで紘季に公園までの行き方を教えている。

 公園に着いた。日陰のベンチに荷物を置いた。

 

「俺は、オッサンだからここで休憩するよ」

 

 と、早々に遊ぶことを拒否して、荷物番に()っした。その最中も、周りを見渡す。

 いや、違う。警戒している。あの兄弟に出会わないように。あの人物とは、住んでいる地域は違うが。

 もしもこの公園に来たら、さりげなくかつ急いで三人を連れて公園を出る。そのために、体力を温存しようと、透は考えていた。

 

「ひろにい!砂場で遊ぼう!! 」

 

 藍季は、とても元気だ。藍季は、紘季の手を引っ張り砂場にいく。海李は、砂場遊びの道具を持って二人に続く。

 

「ひろにい。いっしょにトンネルつくる! 」

 

 と、海李。

 

「ひろにいは、あいとおしろつくるの! 」

 

 と、藍季。双子は紘季を取り合おうとする。透は、どうしたもんかと悩んだ。


 だが、紘季は慣れている。砂場に読みやすいように、ひらがなで何かを書いた。それを見て、二人は分かったと頷く。まず、しっかりとしたトンネルを作る。


 そして、その上に水で固めた砂をのせる。見た目は、トンネルとお城とは言いがたいが、藍季と海李は満足している。さすが、兄だと思った。

 

「おぉ!すごいね!これは、お城?トンネル? 」

 

「「どっちも!! 」」

 

 と、双子ならではのシンクロして言う。


「そうか!記念に写真撮る? 」

 

「「うん!! 」」

 

 砂で作ったものの後ろに、紘季、藍季と海李は、それを挟むような位置。

 

「撮るぞ!はい!チーズ! 」 


 カシャッと、透はスマホで写真を撮った。そこに、写る三人は少し砂で服や顔などを汚している。

 だが、とてもいい笑顔だった。その後、おもいっきり遊んだ一行(いっこう)は、家に帰ることにした。


 透は、久しぶりに紘季が外に出て最初は心配した。でも、双子のおかげで何もなくてよかったと安堵(あんど)したのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!


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