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家族ってね  作者: 宮原叶映
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エピローグ

 京介の心は、紘季に真実を話したことで楽になった。

 でも、まだ京介の口から藍李と海李には話していない。小さい子供に話すのは難しいことだったと思ったから。

 そんな京介たちが、予期せぬことを藍李と海李が言ってきた。

 

「きょうちゃん」

 

「海李、どうした? 」


「おとうさんとおかあさんって、ひとをまもってね」

 

「あいちゃんたちとバイバイしたの」

 

「海李、藍李、それって誰から聞いたの? 」

 

「ひろにいとねひみつ!! 」

 

「そうなの? 」

 

「うん! 」

 

 紘季は、たかが家に遊びに来ているのでその場にいなかった。昨日、受け止めるのに時間がかかると言っていたのに、藍李たちに話したようだ。

 京介は、(なぜ話をする気になったのだろうか?そして、秘密とはなんだ?)と考えた。

 

「そうだよ。お父さんとお母さんは、人を守ったすごい人なんだよ」

 

「藍、秘密ってなに? 」

 

 透が話しに乱入してきた。

 

「ひみつ!! 」

 

「ゆめでね。おかあさんとおとうさんにあったの」

 

 ひみつと言う藍李の横で、海李は自白をする。

 

「そうなんだ。良かったな」

 

「うん!にろにいもいてね。たくさんはなしたの」

 

 海李が言っているのが正しければ、本当に三人の夢に時雨とめぐみがやって来たんだ。そして、紘季と一緒にいなくなったことを伝えたんだなと京介たちは思った。

 

 少し離れたダイニングテーブルで、幸雅は椅子に座り、空が入れたアイスココアを優雅に飲んでいた。空は、その横でれんかと次回作と今書いているところを話し合っていた。

 

「幸雅、お前はいつまでいる気だ? 」

 

 と、眉毛を眉間に寄せて透が聞く。

 

「そうですね。お昼ご飯とおやつの時間が終われば帰ります」

 

「ちゃっかり、飯をたかるのやめろ。しかも、おやつもな。昨日の晩飯と今日の朝御飯を食べただろう」

 

「空さんの作る料理が美味しいのが悪いんですよ」

 

「ちょっと、幸ちゃん!! 」


「クククッ」


「何で笑ってるの? 」


「何ででしょうね」


「もう! 」


 恥ずかしがる空を可愛いと笑う幸雅は、誰が見ても仲がいいといえる。

 

「二人ともいちゃつくな。空とれんかは、もう向こうで仕事しろ」

 

「透くん、私にまで当たらないでよ」

 

「ごめんな」


「いいよ」

 

「人のこと言えませんね」


「そうだよね」

 

「はぁ? 」

 

「お前ら静かにするか、どっかに行ってくれないか?藍李たちの邪魔になるから」

 

 と、京介は小声で睨み付けながら話した。いつの間にか、カーペットの上で座っている京介の膝を枕にして双子が寝ていた。その寝顔は、天使だ。

 

「「「ごめんなさい」」」

 

「すみません」

 

 透らは、大人しくなった。これ以上、騒がしくすると京介による説教タイムになるからだ。

 

「空、次回作はどんなの書く予定ですか? 」

 

「家族をテーマにしようと思ってるの。京兄たちの恋愛模様を書いたのが、想像よりも反響があったから、それに関連したのを書こうかなって思うの」

 

プルプルプルプル

 

「ん? 」

 

 突然、西原家の固定電話から呼び出し音が聞こえた。全員に、お前が出ろと言わんばかりに透を見る。透は黙って頷いき、椅子から立ち上がって電話に出た。

 

「もしもし、西原です。どちら様ですか?……はい、今近くいないので、要件を伝えるので……」

 

 透は、電話でやり取りをしながらメモ帳に要件を書いた。

 

「すみません。兄の京介は、双子の天使に癒されているため手が離せないので、後程こちらからかけ直します。はい、失礼します」

 

「おい、透、待って切るな。誰か……」

 

 小声で京介の制止を一切無視して、ガチャンと受話器を置いて電話を終えた。

 

「はい、京介」


「ありが……じゃないわ!透! 」

 

 爆弾発言をした透は、京介にメモを京介に渡したかと思えば、足早にリビングをその場を後にした。

 

「逃げましたね」

 

「そうだね」

 

「透くん、なかなかやるね」

 

 と、言う彼らは必死に笑いを堪えている。その三人を背中にして、京介は透から受け取った紙を見る。その内容は、驚くものだった。

 

『相棒の安堂さんから

 

・鍵原匠と一颯の父親を逮捕した。

 

・彼らの安全が確保されたため、紘季に会いたいとのこと。


・紘の声が戻ったことと、事故の真実を話したことの報告について。


・折り返し、電話をするように』

 

 

 と、内容を分かりやすいように箇条書きにしていた。それには、まだ続きがあるようだ。

 

『PS 〇〇✕〇署で捜査会議が、今日の十三時に始まるので電話を折り返しした後に間に合うように来ること。何度か、携帯にかけたが繋がらなかったため、固定電話にかけたとのこと。いつ何があってもいいように、携帯電話を携帯するように』

 

 

 それを読んだ京介は、慌てて時計を見た。時刻は、十二時十五分だ。捜査会議のあるところまでは、少し遠いが急げば間に合う。自分のスマホにかけたのかと、ポッケットやテーブルをみるがなかった。自室に置いてると思い出した。

 

「藍李、海李、起きろ」

 

「な~に? 」

 

 藍李が眠気眼で、京介を見る。

 

「ごめんな。京ちゃん、これから仕事だから行かないといけないんだ。だから、膝の上から退いてくれるか? 」

 

「うん」

 

 藍李は、目を擦りながら京介の膝からのいた。海李は、寝たらなかなか起きないので空の協力のもとソファところに連れていった。

 

「京兄、サンドイッチかおにぎりのどっちか持っていて食べて。水筒も、袋に入れてるから」

 

「京介、あとのことは透に任せるので安心して行ってきてください」

 

「お前は、本当にのらりくらり野郎だな」

 

 と、行って京介は自室に戻り、安堂に電話をした。それから、バタバタと玄関に行った。

 

「京介さん、お仕事頑張ってください」

 

 と、紘季とたかが玄関に京介をお見送りしにやって来た。

 

「ありがとうな」

 

「えっ? 」

 

「生きてくれてな」

 

「えっ? 」

 

 戸惑う紘季をよそに、じゃあ行ってくるわと京介は出て行った。

 

「たか、どういうことか分かる? 」

 

「生きてくれてありがとう」

 

「えっ?たかまでどうしたの? 」

 

 ますます驚く紘季だった。たかは、京介の意図が分かっていた。

 一度だけ何もかも嫌になって死を選び失敗した紘季が、今回の事故の真実を知ってどなるかが周りの人間にとってはかなり心配だった。 

 でも、今を元気に生きていて、藍李たちに両親の事故のことを話すまで心が回復してくれた。それが、何よりも嬉しいのだ。


 

 二人がリビングに戻ると、透もちょうど戻ってきたようだった。

 

「京介、行ったか? 」

 

 と、ビクビクしながら透はリビングに戻ってきた。

 

「はい、京介は仕事に行きましたよ。先程、紘季くんたちがお見送りをしてくれました」

 

「あぁ〜良かった」

 

 ほっとしている透を見つめる幸雅の目は笑っていなかった。

 

「何が良かったんですか? 」

 

「い、いえ、何もありません」

 

 同い年なのに、透は幸雅にビビっている。

 

「透兄には、お昼ご飯抜きはかわいそうだから、おやつ抜きね」

 

「何で? 」

 

「透くん、自分の心に手を当てて考えて」

 

「はい」

 

 と、その通りした。

 

「透、伝言をあずかっています。京介が帰ってから説教するそうなので逃げないでくださいとのことです」

 

「はい、分かりました」

 

 今の透には、味方がいない。しかし、空からの罰がお昼ご飯抜きじゃなくて、おやつ抜きというかわいらしいものだった。

 そのあとに待ち受ける、罰の説教が恐ろしく考えただけ震えてしまう。

 空が京介に渡した食べ物は、小腹が空いたとき用に大量に作っていた。それと別に空とれんかは大人数(おおにんずう)のお昼ご飯を手早く作った。

 

 

「空さん、お昼ご飯ですか? 」

 

「うん。でも、ちょっと待ってて。さっき作ったけど、冷めてると思うから温め直すね」

 

「はい、分かりました」

 

「ヒロロ、敬語じゃなくていいよ」

 

「うん、分かった」

 

「よろしい」

 

「矢野先生、教えて欲しいところがあるんですが」

 

 と、たかが幸雅に聞く。

 

「はい、いいですよ」

 

「ありがとうございます 」

 

 たかと幸雅は、紘季の部屋に行った。


「先生、すみません。お手洗い借りますね」

 

「はい、どうぞ」

 

 れんかもリビングを出ていった。藍李と海李は、ソファで仲良く寝ていた。現在、リビングで起きているのは空と紘季だ。

 

「ヒロロにとって家族って、どうなの? 」

 

「えっ?どういうこと? 」

 

「ヒロロは、お父さんとお母さんが亡くなって、今は空たちと暮らしているでしょ? 」

 

「うん」

 

「知り合いだからって言っても血の繋がってない人、家族じゃない人と暮らす気持ちってどうなのかな? 」

 

「……う~ん」

 

 紘季はしばらく考えたけど、いい答えが出なかった。

 

「空さん、ごめん。どう答えていいのか分からなくて」

 

「そうだよね。シンプルに考えて、いい答えを聞いているんじゃないからね」

 

「シンプルに……」

 

 紘季は、また考えた。

 

「僕には、お父さんとお母さんはもういなくて。でも、藍ちゃんと海くんがいる。そして、僕たちを支えてくれる人たちがいる。だから……」

 

「なるほどね。ありがとう」

 

 空は、涙を流しながら答えた。

 その後、お昼ご飯を食べにやって来たみんなに何で泣いているのか問い詰められた。

 でも、すぐに笑ってご飯を食べたのだった。

 

 

 


 あれから数年たったある日の金曜日のことだ。

 空が書いた家族をテーマにした本が発売され、映画化したのはまた別の話である。

 

『家族ってね。血が繋がっても繋がってなくても、支えあって一緒に生きる人たちのことをいうんだよ』

 

 と、それらに締め括られていたのだった。

このお話で、完結です。ここまで、読んでくださりありがとうございます。

絋季たちの今後は、皆様のご想像にお任せです。

これからも、読んで読んでいただけると嬉しいです。

では、またどこかで会いましょう!

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